フリーランス保護に関するガイドラインの運用開始で、フリーランス保護の方向へ。どう変わるのかかみ砕いて解説

現在、キャリアの多様化や雇用形態の変化、被雇用者と異なりいざという時のセーフティネットがないことから、政府はこの春に「フリーランス保護のガイドライン」の策定を目指し、2021年3月には運用が始まる方向です。

 

フリーランス(もしくは、実質一人法人)に仕事を依頼する経営者の側としても、フリーランスの側としても、このフリーランス保護のガイドラインが具体的にどのような形になるかというのは、注意すべきポイントです。

 

また、ベンチャーなどの法人で、社員雇用ではなくフリーランスという形で契約を行っている会社も増えています。法人側としても、直接雇用に比べ、相手を過剰に拘束せずに済む、成果に応じた報酬を出しやすくなるなどメリットがある一方、実態が「労働者と変わりがない」と見なされた場合、問題となる可能性があります。

 

そこで今回は「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(案)(一人社長)(PDF)、日本経済新聞2月22日朝刊の記事などを参考に、経営者・フリーランス(一人社長)がフリーランス保護のガイドラインをどのような形で見ていくべきかについて、具体的に41ページにわたる案を読み、また新聞記事の内容を受け、今後のフリーランス保護、そして経営者とフリーランスの関わりについて解説します。

 

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政府の考えるフリーランスの定義とは?

フリーランスといっても、様々な見方が存在します。政府の定義は、

実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者

以上がフリーランスとして定義されます。実店舗がない、人を雇っていない、自身の知識などを活かして収入を得るという場合は、一人会社の社長(肩書き上は会社役員)であっても、フリーランスとして見なされます。フリーランスでも、ある程度規模が拡大すると、社会的信用や節税その他の理由で、法人を設立するケースがあるからと推測できます。

 

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フリーランス保護のガイドラインで何が変わるか

フリーランス保護のガイドラインで何が変わるかを整理します。(参考:ガイドライン・2月22日日経朝刊)

  • 取引条件の書面交付
  • 今回のガイドラインには、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が連名で策定
  • 公正取引委員会がバックにつき、報酬の支払い遅延・減額など規制対象となる行為が明示されている
  • 発注者が自身が注文を出す側だからと、立場に基づいてフリーランスに不利益を与える場合、優越的地位の濫用として規制
  • その他12のケースを独占禁止法で規制対象に
  • 実際の労働時間・場所・各種拘束などを鑑み、「労働者性」、つまり、「この人契約上はフリーランスみたいになっているけど、実質的に雇っている人と同じ働かせ方をしていませんか?そうすると、従業員でなくても、労働時間の規制など労働基準法の規定を適用します、と示す
  • 発注者による勤務時間・場所の管理など「使用従属性」を労働者性の判断基準に位置づけ

 

以上のように、フリーランスを保護していこうという方向性を出しています。その中、様々な意見も出ています。

 

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フリーランス保護指針案に対する各所の反応は?

新聞等の意見を整理・列挙すると、

  • 不平等取引の抑止になるので良いのではないか
  • フリーランスは、翌月(翌日)仕事を失う立場にもなり得る以上、セーフティネットの議論がない
  • 働き方によって社会保障の手厚さが異なるのは不合理ではないか

など、肯定論・改善を求める論などがあります。

 

加えて、欧州の場合は、ウーバー(のドライバー・配達員)など、ギグワーカーを「準労働者」と社会保障の対象に含めるのが主流であるとされ、ガイドラインに定める労働者の定義も、現在の働き方が多様化する時代に合わないのではないかという意見も

 

また、今回のフリーランス保護のガイドラインでは、「これをしたらこういう罰則や指導がありますよ」という部分に関しての踏み込みはさほどありません(独占禁止法違反等の記述はあるが、違反したらどういうペナルティになるかまでは詳記されていない)。

 

あくまで「会社はフリーランスに対しこういうことをしないでくださいね」という方向付けという側面が強いと見受けられます。

 

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2020年12月現在のフリーランス保護のガイドラインを整理

それでは、41ページにわたるフリーランス保護のガイドラインから、経営者(管理者)・フリーランスのいずれかに関わる部分をピックアップ、整理していきます。

独占禁止法とフリーランス

・独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されるこ
とから、事業者とフリーランス全般との取引に適用

・下請法は、取引の発注者が資本金 1,000 万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用

・フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用

・取引・契約においては、対等であるべきという前提はある。ただ、フリーランスが受注事業者として行う取引については、通常、企業組織である事業者が発注事業者となることが多い。

それゆえ、発注事業者とフリーランスとの間には、役務等の提供に係る取引条件について情報量や交渉力の面で格差があるのが実情。
結果として、フリーランスが自由かつ自主的に判断し得ない場合も商事、発注事業者との取引において取引条件が一方的に不利になるケースもある。

・どのような場合に公正な競争を阻害するおそれがあると認められるのかについては、問題となる不利益の程度、行為の広がり等を考慮して、個別の事案ごとに判断

下請法と独占禁止法のいずれも適用可能な行為については、通常、下請法を適用

・発注時に取引条件を明確にすることが困難な事情があるなどの正当な理由がない限り、発注事業者が当該書面を交付しないことは独占禁止法上不適切とし、契約書の書面(電子書面含む)締結を原則とする

・下請法の規制の対象となる場合 で、発注事業者がフリーランスに対して、下請事業者の役務等の提供内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しない場合は、下請法第3条で定める親事業者の書面の交付義務違反となる

・親事業者は、下請法の書面の交付や書類の作成・保存について、自身の代理として、第三者に行わせることも認められる。ただし、フリーランスとの間で下請法上の問題が生じた場合は、当該第三者ではなく、親事業者がその責めを負う

 

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フリーランスに対し、独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請法上問題となる行為の12パターンは?」

法人側がフリーランスにやってはいけない行為12パターンを整理します。

(1)報酬の支払遅延

・正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に報酬を支払わない場合はNG。

・取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、一方的に報酬の支払期日を遅く設定する場合や、支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合も問題。

・下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者がフリーランスに対して、下請代金を支払期日の経過後なお支払わない場合には、下請法第4条第1項第2号で禁止されている下請代金の支払遅延として問題

として、やってはいけない具体例として、下記の行為を挙げています。

・ 社内の支払手続の遅延、役務の成果物の設計や仕様の変更などを理由として、自己の一方的な都合により、契約で定めた支払期日に報酬を支払わないこと。
役務の成果物の提供が終わっているにもかかわらず、その検収を恣意的に遅らせることなどにより、契約で定めた支払期日に報酬を支払わないこと。
・ 取引に係る役務の成果物を自己が実際に使用した後に報酬を支払うこととされている場合に、自己の一方的な都合によりその使用時期を当初の予定より大幅に遅らせ、これを理由として報酬の支払を遅らせること。
・ 長期間の役務等の提供を受け、非常に高額な報酬を支払うことが契約で定められている場合において、当初、契約で一括払いとしたにもかかわらず、支払の段階になって自己の一方的な都合により数年にわたる分割払いとし、一括払いに応じないこと。

以上の行為はNGとなります。

 

(2)報酬の減額

こちらも大きく問題視される行為です。

・正当な理由がないのに、契約で定めた報酬を減額する場合であって、当該フリーランスが、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題

・契約で定めた報酬を変更することなく、役務等の仕様を変更するなど報酬を実質的に減額する場合も、これと同様

・下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者がフリーランスに対して、フリーランスの責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減ずる場合には、下請法第4条第1項第3号で禁止されている下請代金の減額として問題

 

こちらも具体的なケースとして、下記のような行為が挙げられています。

・ 仕事をしっかり終えたにもかかわらず、業績悪化、予算不足、顧客からのキャンセル等自己の一方的な都合により、契約で定めた報酬の減額を会社側から行うこと。
自己の一方的な都合により取引の対象となる役務等の仕様等の変更、やり直し又は追加的な提供を要請した結果、フリーランスの作業量が大幅に増加することとなるため、当該作業量増加分に係る報酬の支払を約したにもかかわらず、当初の契約で定めた報酬しか支払わないこと。つまり、「これも追加でやっておいて、でも報酬は同じね!」が通用しないこと
・ 作業量や拘束期間が確定しないため、一定の額を報酬総額として取り決めた後、実際に必要となった作業量や拘束期間が自己の当初の見込みよりも少なかったことを理由として、フリーランスと交渉することなく契約時に定めた報酬総額を減額すること。「予想以上に手間が掛からなかったからまけてね」はNG!
・ フリーランスは当初取り決めた範囲の役務等の提供が全て終わっているにもかかわらず、フリーランスに発注した役務等の一部について、フリーランスに事前に連絡することなく並行して自己が実施し、重複が生じたことを理由として、自己が実施した役務等に相当する額を契約時に定めた報酬から減額すること。わかりにくい表現だが、フリーランスに任せた仕事を一部会社側が勝手に行い、「ここの部分、うちでもやったから報酬から差し引くね」というのはNG。

(3)著しく低い報酬の一方的な決定

・取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、当該フリーランスに対
し、一方的に、著しく低い報酬での取引を要請、つまり、「今度はいい仕事出すから、この仕事、安い額でやってくれる?」というのはダメ

 

これも、実際のNGパターン事例を抜き出してみましょう。

・ 短い納期を設定したため、当該役務等の提供に必要な費用等も大幅に増加し、フリーランスが報酬の引上げを求めたにもかかわらず、通常の納期で発注した場合と同一の報酬を一方的に定めること。
・ 自己の予算単価のみを基準として、一方的に通常の報酬より著しく低い報酬を定めること。
・ 自己が報酬の見積金額まで記載した見積書を用意し、フリーランスが当該報酬について協議を求めたにもかかわらず、当該見積書にサインさせ、当該見積書に記載した見積金額どおりに報酬を決定することにより、一方的に通常の報酬より著しく低い報酬を定めること。
・ 発注量等の取引条件に照らして合理的な理由がないにもかかわらず特定のフリーランスを差別して取り扱い、他のフリーランスより一方的に著しく低い報酬を定めること。(同じ仕事で、Aさんは50万円、Bさんは80万円というのはダメ)
・ 自己の要請に基づいて、フリーランスが、複数回に及ぶ打合せへの出席、人員の手配、他の発注事業者との取引で使用することが困難である新たな機材・ソフトウェアの調達や資格の取得を行うことになるなど、役務等の提供に必要な費用が増加するため、報酬の引上げを求めたにもかかわらず、かかる費用増を十分考慮することなく、一方的に従来の報酬と同一の報酬を定めること。

この点、フリーランスが各種かけた経費・費用増に関しては、フリーランスの側から言い出しにくいことですので、会社側が「こういう必要経費については報酬とは別に支払いをする、あげた成果に対して報酬を上乗せする」など、会社側からの配慮が必要になります。

 

(4)やり直しの要請

会社側から、成果物に対し「やり直してください」とお願いするパターンは当然あるでしょう。やり直しの要求に関して、正当な理由があれば問題はありません。

ただし、当該フリーランスから役務等の提供を受けた後に、当該フリーランスに対し、やり直しを要請する場合であって、当該フリーランスが、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合は、優越的地位の濫用として問題となるケースがあります。

これは非常にわかりにくく、「どこまでが問題ないケースなんだ?」と会社側としては考えると思います。

例示を示した上で、例えばこんなパターン、ということで示します。

・ 役務等の提供を受ける前に、自己の一方的な都合により、あらかじめ定めた役務等の仕様を変更したにもかかわらず、その旨をフリーランスに伝えないまま、継続して作業を行わせ、提供時に仕様に合致していないとして、フリーランスにやり直しをさせること。

仕事をしてもらう前に、最初に決めた「やってもらうこと」を事業者側がフリーランスに話したり相談せず、自社だけで変更、そのことを知らせず、フリーランス側が「できました!」と成果物を出してきたら、「うちの仕様に合わないので、やり直して、今回の報酬内でね」ということ

・ 委託内容についてフリーランスに確認を求められて了承したため、フリーランスがその委託内容に基づき役務等を提供したにもかかわらず、役務等の内容が委託内容と異なるとしてフリーランスにやり直しをさせること。

いったんやる業務についてフリーランスに確認を依頼され、会社側が「それでいいですよ」と言って、委託内容に沿ってやったが、やり直しをさせること

・ あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくして、発注内容と異なること又は瑕疵があることを理由に、やり直しをさせること。

成果物に対するハードルをわざと厳しくし、「内容に問題があるのでやり直してください」と相手に請求する行為

・ フリーランスが仕様の明確化を求めたにもかかわらず、正当な理由なく仕様を明確にしないまま、フリーランスに継続して作業を行わせ、その後、フリーランスが役務等を提供したところ、発注内容と異なることを理由に、やり直しをさせること。

フリーランスの側が、「具体的にどういうものを作ればいいのか、明確に定義してください」と言ったにもかかわらず、その点を曖昧にして作業させ、いざフリーランス側が成果物を出したときに会社が「これはうちの求めるものではない、やり直してください」と作り直しを要求する

明らかに成果物に問題がある場合は別として、基準を必要以上に高くしたり、具体的に求めるものを提示しないというのは問題になるおそれがあります。

 

(5)一方的な発注取消し

法人側とフリーランス側では、どうしても法人側の立場が強いものとして見られます。

そのため、正当な理由のない一方的な取り消しは、法人側にとって問題となるおそれがあります。

「正当な理由がないのに」、一方的に、当該フリーランスに通常生ずべき損失を支払うことなく発注を取り消す場合であって、当該フリーランスが、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題

以上のように扱われます。

具体例としては、下記の通りです。

・ 特定の仕様を指示した役務等の委託取引を契約し、これを受けてフリーランスが新たな機材・ソフトウェア等の調達をしているにもかかわらず、自己の一方的な都合により、当該フリーランスが当該調達に要した費用を支払うことなく、当該契約に基づく発注を取り消すこと。
・ フリーランスに対し、新たな資格の取得を指示し、当該資格取得後直ちに発注することを説明して発注を確約し、当該フリーランスが当該資格を取得し取引の実現に向けた行動を採っているのを黙認していたにもかかわらず、自己の一方的な都合により、発注を取り消すこと。
・ フリーランスに対し、契約時に定めていない役務等を無償で提供するよう要請し、当該要請をフリーランスが拒んだことを理由として、フリーランスが既に提供した役務等に相当する報酬を支払わないまま、一方的に発注を取り消すこと。

よりかみ砕いて言うと、

  • イラスト作成してもらうから、画像編集ソフトとタブレット買っておいてねと会社から依頼→フリーランスが機材購入→会社側から「イラスト作成の話立ち消えになったから、取り消しね、あと、画像編集ソフトとタブレット?そっちに仕事が発生しないから支払わないよ」というのはNG
  • 一人親方に、「クレーン・デリック運転士(限定なし)を取ってくださいね、取得できたらそっちの現場もお願いしますから」と言って、一人親方がクレーン・デリック運転士(限定なし)を取得したにもかかわらず、「クレーン・デリックを使う現場今はないから、ごめんけどちょっと現場依頼止めさせてねー」という行為
  • フリーランスに、契約時に決めていないことをさせる。例えば、「当初は相手へのインタビューだけ」という契約だったのに、インタビューだけでなく「写真撮影・書き起こし・編集・Webメディアへのアップロードまでまとめてやってね、報酬の中で」ということを会社側が依頼したり、それを相手が断ったら、会社側が「ついでにできることでしょ(どれもついでにできるというレベルの行為ではなく、手間とスキルが必要)、やってくれないんだったら依頼全部取り消す」と、一方的に取り消す行為

こういう、これまでなあなあで、「仕方ないけれども、仕事がなくなったからしょうがないじゃない」や、「これもついでにお願い」ということが、今後はできなくなるようになります。

 

その点、会社側からフリーランスに依頼する際は、フリーランスに対しこれまで以上に配慮する必要があります。

 

(6)役務の成果物に係る権利の一方的な取扱い(PUNI PUNIネコカーという仮の事例で解説)

文章が非常に堅いですが、見てみましょう。

フリーランスが発注事業者に提供する役務の成果物によっては、フリーランスに当該役務の成果物に係る著作権等の一定の権利が発生する場合がある。この場合において、取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、自己との取引の過程で発生したこと又は役務の成果物に対して報酬を支払ったこと等を理由に、当該役務の成果物に係る権利の取扱いを一方的に決定する場合に、当該フリーランスに正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるときは、優越的地位の濫用として問題となる

これだけ読むと、なかなかピンと来る人は限られるかもしれません。

具体例をお話にしてみましょう。

 

株式会社A社がフリーランスのBさんに、ネットゲーム「PUNI PUNIネコカー」で使う「ネコカー」のコンセプト考案・デザインを依頼しました。コンセプト考案・デザインなどの著作権の所属は特に定めていなかったと仮定します。

 

ネコカーのデザインは50種類。その中の「プチニャーコ」がマニアに大受け、プチニャーコ他人気上位5キャラを、ぬいぐるみや知育玩具、またその他のキャラクターもカード付きお菓子として売り出すことになりました。

 

そうすると、ネコカーのデザインを活用した商品は「役務の成果物の二次利用」にあたるため、会社はフリーランスに対し、利益の一部を配分しなかったり、利益の配分割合を一方的に定めたりする事はNGとなります。

 

また、A社が、「PUNI PUNIネコカーの著作権をイラストなども含めてうちに全部帰属するようにしておけば良かった」と気付き、PUNI PUNIネコカーの著作権は全面的にA社に帰属する、という契約書を

PUNI PUNIネコカーのデザインを作成したBさんが、「著作権等の権利の譲渡を伴う契約は嫌なんですけど・・」と言っているのに、A者側が、「そんな堅いこと言わないで。うちが仕事あげているのに、そんなめんどくさいこと言う人には今後仕事出さないよ」というのもNGです。

 

さらに、A社が「PUNIPUNIネコカーのデザインは、うちの会社とBさんでしっかりと打ち合わせで煮詰めて作ったものだよね、だから著作権もうちがもらっていいよね?」というふうに譲渡させることもNGです。

 

これが、「優越的地位の濫用として問題となり得る想定例」をかみ砕いた内容です。ちなみに、元の事例は下記の通り。

・ 役務の成果物の二次利用 について、フリーランスが著作権等を有するにもかかわらず、対価を配分しなかったり、その配分割合を一方的に定めたりして、利用を制限すること。
・ フリーランスが著作権等の権利の譲渡を伴う契約を拒んでいるにもかかわらず、今後の取引を行わないことを示唆するなどして、当該権利の譲渡を余儀なくさせること。
・ 取引に伴い、フリーランスに著作権等の権利が発生・帰属する場合に、これらの権利が自己との取引の過程で得られたことを理由に、一方的に、作成の目的たる使用の範囲を超えて当該権利を自己に譲渡させること

 

更に、役務の二次利用(砕けた言い方だと「作ったものの使い回し」)の事例としては、

・フリーランスが劇場映画用に制作したアニメーションを、インターネットにより配信する場合
・フリーランスが発注事業者の自己使用のために制作したコンピュータープログラムを、他の事業者のために使用する場合
・フリーランスが特定商品のために制作したキャラクターについて、他の商品に使用する場合

などが例示されています。

 

(7)役務の成果物の受領拒否

会社側がフリーランスから役務の提供を受けた後に、

  • ちょっとうち調子が悪くなって、やってもらってた仕事いらないわ、お金も払えないから我慢して
  • 基準を厳しくして、検収を拒否したり過度にやり直しをさせる
  • 「どういうものが必要なのか、具体的に定義してください」とフリーランス側が言っていたが、そのまま曖昧にし、できあがった際に受領拒否
  • 事前に合意した納期があるのに、「急ぎになったから2週間早く!」など、当初の予定より早め、フリーランスの事情を考慮せず変更、その後事前に合意した納期には間に合ったが、急ぎの納期には間に合わなかったということで、成果物の受領拒否

以上のようなパターンも、優越的地位の濫用の問題となりえます。

 

(8)役務の成果物の返品

できあがったものに瑕疵(かし、つまり不具合や傷)があるということは、人間がやっている以上時に起こりうることですが、

  • 納めた物を顧客から返品されたのを理由に、フリーランス側に成果物を返品、対価の支払いを拒否
  • すぐわかる瑕疵であったのに、後になって瑕疵があることを理由にフリーランスに
    返品

以上のような措置は問題となる恐れがあります。

 

(9)不要な商品又は役務の購入・利用強制

こちらはなんとなくイメージできるかと思いますが、「仕事出すからうちの商品・サービス使って」と言ったりするケースも問題になります。

・ 購入しなければフリーランスとの取引を打ち切る、取引の頻度を減少させるなど、今後の取引に影響すると受け取られるような要請をすることにより、自己の指定する商品を購入させること。
・ 発注担当者等のフリーランスとの取引関係に影響を及ぼし得る者が商品を指定し、当該商品の購入を要請することにより、購入させること。
・ フリーランスに対して、組織的又は計画的に自己の指定する商品の購入を要請することにより、購入させること。
・ 自己の指定する商品についてフリーランスから購入する意思がないとの表明があった場合、又はその表明がなくとも明らかに購入する意思がないと認められる場合に、重ねて購入を要請することにより、又は商品を一方的に送付することにより、購入させること。
・ フリーランスに対し、役務等の提供上必要としないにもかかわらず、自己の取引先が提供する役務を利用するよう一方的に要請し、利用させること。

このように、「うちのを使え!」ということは問題になります。

 

(10)不当な経済上の利益の提供要請

こちらも、仕事の実質的な上下関係(仕事を出す側と受ける側)の立場を利用して、会社側があれこれフリーランスに要求してはいけません、という内容です。

これも具体例をそのまま列挙しましょう。

・ 決算対策のための協賛金を要請し、フリーランスにこれを負担させること。
・ 契約内容に情報システムの改修・保守・点検を行うことが含まれていないにもかかわらず、フリーランスに対し、情報システムの改修・保守・点検を無償で提供させること。
・ 契約上、フリーランスが自己の倉庫まで運送することのみが契約内容とされている場合において、当該フリーランスに対して、あらかじめ契約で定められていない自己の倉庫内における荷役等の役務について、無償で従事させること。
・ 契約で定められた役務の内容ではなく、さらに、発注内容と関連がないにもかかわらず、フリーランスに対し、自己の顧客に対する営業活動に参加するよう要請し、無償で参加させること。
・ フリーランスの顧客リストについて、発注内容に含まれていないにもかかわらず、無償で提出させること。
・ 役務等の提供に付随して提供された資料について、使用範囲をあらかじめフリーランスとの間で取り決めているにもかかわらず、フリーランスに追加的な対価を支払わないまま取り決めた使用範囲を超えて使用すること。

このように、最初定めていないことをやれとか、営業をてつだえ、顧客リストを出せ、また資料を取り決めの範囲外で使うなど、の行為は問題になります。

 

(11)合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定

仕事上、多くの契約ではNDA(秘密保持契約)を締結するケースが一般的かと思いますが、度を超えた秘密保持義務を設定させることはNGとされています。

並んでいる具体例は下記の通りです。

・フリーランスにとって発注事業者に役務等を提供したという事実が、新たな発注事業者を獲得する上で重要な情報となっているにもかかわらず、合理的に必要な範囲を超えて一方的に当該事実の公表を制限する秘密保持義務を設定すること。
・ フリーランスへの育成投資や役務に対する報酬の額が著しく低いにもかかわらず、当該フリーランスに、合理的に必要な範囲を超えて長期間、一方的に当該役務等の提供に専念させること。
・ 既にフリーランスの育成に要する費用を回収し終わったにもかかわらず、当該費用の回収を理由として、当該フリーランスに対して、一方的に競業避止義務や専属義務を設定すること。

難しい言葉が並んでいますので、少しかみ砕いてみます。

 

フリーランスにとって、「こういう成果物を作りました、作品を作りました、文章を書きました、こういう仕事をしました」というポートフォリオが示せる事は、今後の仕事を得ていく上で、大きな材料になります。

 

例えば、デザイナーが、「一部上場企業のC社のロゴデザインを手がけました」ということは、ポートフォリオ上大きな強みになります。しかし、会社側が「C社のロゴデザインを手がけたことをポートフォリオにしてはダメ」という秘密保持義務を設定することは、問題になる可能性があります。

 

また、フリーランスに「勉強期間・インターンだから、学びのために月8万円で最低週5・8時間フルコミットしてな!仕事を通した学びも自己投資やで!」と1年なり2年、極端に低い報酬で仕事に専念させることも、”フリーランスへの育成投資や役務に対する報酬の額が著しく低いにもかかわらず、当該フリーランスに、合理的に必要な範囲を超えて長期間、一方的に当該役務等の提供に専念させること。”に引っかかるおそれがあります。

 

また、フリーランスの育成投資を会社がしたことを理由に「競合他社の仕事には就くなよ!」とか、「育成投資をしているから、5年間は止めずに働いてね」などという一方的な競業避止義務や専属義務の設定もNGになります。

 

(12)その他取引条件の一方的な設定・変更・実施

ここまでで挙げたもの以外でも、客観的に見て「これは常識で考えて不合理だよね」というケースは、「その他」として問題になるおそれがあります。

 

他にもこのガイドラインでは、

  • 「労働者性」(実態は指揮監督下にあり労働者扱いなのに、社保逃れや切りやすいという意味で業務委託にしていないか)の判定
  • 契約書で最低限定めるべきひな形(各業種向けの具体例もあり)
  • 知的財産権が発注内容に含まれ、これを譲渡し又は許諾する場合には、譲渡する権利の範囲、許諾する範囲の記載
  • 支払期日について (下請代金支払遅延等防止法が適用される取引の場合は、役務等を提供した日から 60 日を超えて支払期日を設定した場合違反になる)などを

などが定められています。

 

なお、当ガイドラインに関し、日本俳優連合から、

「一番大事なセーフティーネットの議論が一切ない」

ウーバーイーツユニオンからは、

「働き方によって社会保障の手厚さが異なるのは不合理」

などの意見も掲載されていました。

 

確かに、正社員とフリーランスでは様々な意味でセーフティネットが異なる(手厚い正社員と薄いフリーランス)という点がある一方、働き方の柔軟さではフリーランスが大きいという部分もあります。

 

今後どこまでフリーランスのセーフティネットを整備するかということは、今回のガイドライン、もしくはガイドラインとは別建てで検討されることになるのではないかと思われます。

 

ここまで「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を見てきましたが、実際にガイドラインが制定されることにより、実際の企業とフリーランスの取引がどのように変わるかは、まだ未知数と言えます。

 

今後様々な事例を踏まえて、具体的なOKとNGの線引きができていくと思われますが、下請けへの依頼と同様、フリーランスに対しても、独占禁止法・企業規模によっては下請法などを意識し、またガイドラインで示された指針も踏まえ行っていく必要がありそうです。

 

 

 

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