野口悠紀雄氏の「日本が低賃金から脱却するたった一つの方法」提言に見る、デジタル化徹底推進の必要性

ITMediaビジネス+ITに連載されている、野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質という連載の中で、「日本が「低賃金から脱却する」たった一つの方法」という記事が非常に興味深いです。

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「日本が「低賃金から脱却する」たった一つの方法」の記事要点

では、要点を要約します。

  • 岸田自民党新総裁は、格差是正により中間層を復活させる「令和版所得倍増」を掲げた
  • 日本国内では、大企業と零細企業の間で資本装備率に大差
  • 資本装備率を平準化するためには膨大な投資が必要であり、実質不可能

以上の日本の課題を踏まえた上で、野口悠紀雄氏は下記の提言をしています。

  • まず、目的が実現可能か否かかが検討されることが大前提
  • 実現可能な範囲内において何ができるかを探ることが必要
  • 明確で定量的な目標を示し、それに至る経路を提示
  • 日本の賃金が国際的に低い原因を知る必要
  • 国内で大きな所得格差が生じている理由を正確に把握

日本の賃金は先進国の6割から8割程度でしかないという現状

野口悠紀雄氏の問題提起として、

  • 国際比較で見て、日本の賃金が著しく低い
  • 日本の水準は先進国の6割から8割程度
  • 日本の実質成長率はせいぜい1%程度
  • 現状ではいまの3割増になるのに30年近くかかる
  • その間に、先進国の賃金水準はさらに高くなる
  • 賃金が高い先進国に追いつくには、成長率が先進国より高くなること必須

上記を踏まえて、企業間の賃金格差に言及しています。

生産性(従業員1人あたりの年間付加価値)は、企業規模によって大差

  • 従業員1人あたりの年間付加価値は、大企業(資本金10億円以上の企業)では1,232万円
  • 一方零細企業(資本金1,000万円未満の企業)では478万円
  • 大企業を100とすると、資本金1億円以上10億円未満ではほぼ60
  • 資本金1,000万円未満では42.8と、生産性に圧倒的格差がある
  • 生産性の格差が、従業員の給与・賞与にも当然反映
  • 大企業が年間575万円、零細企業は235万円
  • 従業員数では、資本金5,000万円未満の企業の従業員が2,018万人
  • 日本全体の3,972万人の50.8%と、半分以上を占める
  • 仮に日本のすべての企業が大企業並みの生産性になれば、上述したOECDのランキングで、日本は世界のトップクラスになる

なぜ企業ごとに生産性格差があるのか?

  • 生産性を決めるのは、資本装備率(労働者1人あたりの資本ストック)
  • 従業員1人あたりの固定資産を見ると、全産業平均では2,674万円
  • 企業規模別に大きな差、大企業では8,781万円、零細企業では1,051万円
  • 零細企業の生産性や賃金の低さは、1人あたり資本装備率が低いことが原因

以上を踏まえ、零細企業の賃金が引くのは、非正規労働が多いからだと言われるが、因果関係は逆で、資本装備率が低いために生産性が低く、賃金が安い非正規労働者に依存せざるを得ないとしています。

これは非常に的確な指摘であり、「賃金上昇ありき」ではなく、「まず日本を支える中小零細企業の生産性向上・利益率向上等」がなければ、賃金だけ上げても、企業側は元の原資がないため、「人を減らす、労働時間を減らす、外国人実習生を利用する」など、抜け道を探さざるを得ません。

そこで野口悠紀雄氏は、下記のような指摘をしています。

  • 零細企業では、資本装備率が低いために生産性が低いから、賃金が安い非正規労働者に依存せざるを得ない
  • 最低賃金を引上げれば賃金格差が是正されるといわれるが、それは違う
  • 低い資本装備率のままで最低賃金を引き上げれば、雇用が減少するだけ
  • 資本装備率を平等化するためには投資が必要
  • しかし現実的には、資本金5,000万円未満の企業の固定資産は312兆
  • 3倍にするだけで、年間GDPを超える額が必要で、とても無理

デジタル化投資の必要性と、デジタル化で貧困脱出した実例

以上を踏まえ、それではどうすればいいのかという部分に、野口氏は下記のように指摘しています。

  • 日本の現状を改善するのは不可能なのか? そんなことはない
  • 以上の議論は、技術進歩による生産性向上を考えに入れていないから
  • 日本でこれまでデジタル投資が十分に行われてこなかったことが問題
  • デジタル化によって貧困から脱出できた国がアイルランド
  • アイルランドは欧州で最も貧しい国だった
  • IT革命に対応することによって、ごく短期間のうちに情報化立国を実現し、ヨーロッパで最も豊かな国の1つになった
  • 米国も同様
  • IT革命を先導し、世界的水平分業化を利用することによって、1980年代の低迷から脱出

結論として、日本が現在の低迷から脱却する途は、技術開発

技術開発の重要性を説いた上で、

  • 大学における基礎研究と人材育成
  • 企業における実用化
  • そのための開発資金の調達
  • 組織間の人材流動性の拡大
  • 開かれた組織の実現
  • 世界的水平分業の促進
  • 以上を踏まえた社会全体のエコシステムの構築

が重要としています。

この論の更なる企業経営の現場への展開には、より踏み込んだトライ&エラーが必要となりますが、今後ぜひ考えて行く価値はあるでしょう。

 

 

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