経済産業省が提供する補助金申請システムとして、「J-Grants」というサービスが存在します。
J-Grants1.0は、主に補助金の検索システムとして利用されていました。
J-Grants2.0では、補助金検索から申請手続までを一貫して行えるようなシステムとなっているのが特徴です。
もともと、補助金や助成金は、情報を知って、紙ベースで申請するのが一般的でした。
これを、制度の検索から応募、事業完了後の報告などを、(最初のGBizID取得以外は)全てオンラインで完結できるようにしたのが、J-Grants2.0です。
J-Grants2.0は当然スマホにも対応しておりますが、入力のしやすさを考えるとパソコンからの方が負担が少ないでしょう。
J-Grants2.0をざっと見た感想
実際にJ-Grants2.0にアクセスしてみると、
- 補助金を探す
- 申請の流れ
- よくあるご質問
- 初めての方へ
- GビズIDプライムの取得
などの手続があります。
J-Grants2.0で申請できる補助金に関しては、1月7日時点では掲載されていませんが、今後順次掲載されていくと思われます。
注意点として、2021年1月以前の補助金に関しては、J-Grants2.0を利用することはできません。
つまり、持続化給付金や家賃支援給付金は、J-Grants2.0ではなく、従来の申請システムを利用して申請する必要があります。
J-Grants2.0利用に必須のGBizIDプライム取得には2~3週間!まずはGBizIDプライムを取得。法人は印鑑証明書・個人事業主は印鑑登録証明書が必須
J-Grants2.0を利用する上では、「GBizIDプライム」という、会社や個人事業主毎のアカウントを取得しておくことが必要になります。
GBizIDには3つの種類が存在します。
- GBizIDプライム:GBizIDを通した申請のおおもとになる、マスターアカウント。GBizIDを通した申請やアカウント内容の変更を行う際には、大半のケースで必要になる。経営者・総務・個人事業主自身など、責任者が管理するアカウント
- GBizIDメンバー:GBizIDを通した申請を行う上で、プライムID保有者に変わって多くの申請手続を行うことができる
- GBizIDエントリー:電子申請や補助金申請などは行えないケースが多いが、GBizIDエントリーに対応したe-Gov、DX推進ポータルなど各官庁が提供するサービスを利用することができる
「GBizIDプライム」に関しては、以前にGbizIDを取得している場合、J-Grants2.0になっても再度取得する必要はありません。
GBizIDは、様々なサービスで活用でき、今後より企業や個人事業主にとって、取得する事が必要なものとなってくるでしょう。
GBizIDで利用できる行政のサービスは、2021年1月現在下記のものが存在します。
- jGrants(1.0・2.0両対応)
- 社会保険手続きの電子申請
- 保安ネットの申請
- 農林水産省共通申請サービス
- ミラサポplus
- 省エネ法定期報告書情報提供システム
- 鉱業原簿登録更新サイト
- 令和元年度補正事業承継補助金
- 経営力向上計画申請プラットフォーム
- IT導入補助金2020
- 情報処理支援機関【スマートSMEサポーター】認定制度
- 認定経営革新等支援機関電子申請システム
- 食品衛生申請等システム
- DX推進ポータル
- TeCOT(海外渡航者検査センター)
- e-Gov
- G-Bizアプリ
上記の通り、G-BizID登録で、様々な手続を行うことができます。
最初に書いておくと、途中で法人の印鑑証明書(個人事業の場合、代表者の印鑑登録証明書)と同じ住所の記載、印鑑証明書(印鑑登録証明書)の同封や、印鑑証明と同じ実印の捺印が必要なので、予め印鑑証明・印鑑登録証明書を取得しておくことが必要です。
法人の印鑑証明・個人の印鑑登録証明書の「市区町村役場・法務局などの窓口に行かない」非対面取得方法は、GBizIDの公式解説をご確認下さい。
入力が必要な情報は下記の通り。
- 法人か、個人事業主か
- 法人の場合は、法人番号
- 法人名・個人事業主の場合は屋号
- 法人・個人事業の所在地(印鑑登録証の記載と同一のもの)
- 代表者名・フリガナ・生年月日
- アカウント利用者(代表者と同一でもOK)の氏名・フリガナ・生年月日・郵便番号・住所・部署・連絡先電話番号・アカウントID(メールアドレス)
- SMS認証のための携帯電話番号
この他、GBizIDプライムは、下記の特徴・注意点があります。
- 法人だけでなく個人事業主でも利用可能
- 法人の場合は、法人番号の入力が必要
- ショートメッセージで2段階認証を行うため、ショートメッセージが受信できる携帯電話(スマホ)が必要
- 個人事業主の場合は、氏名・住所を印鑑証明書と全く同じ記載方法で記載(例:印鑑証明に61番地6と書いてあれば、61-6と省略して入力してはだめ)
- 当然であるが、複数の不審申請を防ぐため、gBizIDプライムは、同一の利用者の名義により、複数のアカウントの発行を行うことは禁止
ということで、ID取得に2~3週間がかかることと、郵送手続が必要なこと、印鑑証明と実印の捺印が必要な事、ショートメッセージが受信できる携帯電話が必要な事は注意しておく必要があります。
多くの携帯電話会社の携帯では、基本設定でSMS(ショートメッセージ)の受信ができますが、データ通信専用SIM、格安SIMなど一部契約によっては、SMSの受信ができないケース・オプションとなっているケースもありますので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
GBizIDプライムの申請には書面の郵送提出と印鑑証明の同封が必要!
申請については、データ入力後出力されたPDFを印刷、「書面で申請を行うこと」が必要です。
書面提出の際には、下記の点に留意する必要があります。
- 法人の場合は印鑑証明書を同封(発行後3ヶ月以内のもの)
- 個人事業主の場合は印鑑登録証明書を同封(発行後3ヶ月以内のもの)
- GBizIDプライム登録申請書を同封し、申請書には印鑑証明と同一の印鑑を押印
- チェックシートを同封
- 申請書の手書き修正はNG(手書き修正で印鑑を押して出したとしても無効となり、Web上で再申請をする必要あり)
- 1名で複数の会社について申請する場合は、異なるアカウントIDで申請すること
- 通常郵便でもいいが急ぐ場合は速達・レターパックなど早く届く送り方を!
- GBizIDプライムの申請書は、必ずコピーを取っておくこと
- 当然だが、陰影が完全に書面に残るよう、慎重に押すこと。再提出で時間を取られるのを防ぐためにも、押す際にズレ・カケなど失敗したら、必ず再度申し込み書のPDFを印刷し、押印しなおす。
想定されるのが、「補助金を見つけたが申請の締め切り間近、そしてGBizIDプライムを取得していなかった、そして急いでGbizプライムIDを申請したが間に合わず申請できなかった・・・」という事態です。
せっかく補助金を見つけたのに活用できないという事態はもったいないですので、直近で補助金を申請する予定がなくても、GBizIDプライムの申請を行っておくことをお勧めします。
1月7日現在、補助金の表示や申請はまだだが・・・
J-Grants2.0は、まだ2020年12月24日に運用開始したばかりのサイトですので、補助金の検索や表示・申請は1月7日時点では始まっていません。
また、J-Grants2.0が、全ての補助金・助成金・給付金などをカバーしている訳ではなく、あくまで経済産業省で認知しているものが提供されるため、J-Grantsに掲載されていない補助金・助成金・給付金や、各種団体・財団の補助金など、従来通り当事者が探す必要がある補助金がある可能性は少なくありません。
今後、J-Grants2.0が補助金をどこまでカバーしていくかは未知数ですが、多くの補助金に対応し、申請者にとって使いやすいシステムになることを期待します。
JGrants2.0のフィッシングサイトに注意!!
J-Grants2.0は、まだスタートしたばかりのサイトですので、J-Grants2.0のフィッシングサイトは見当たりません。
しかし、今後J-Grants2.0を偽装した、フィッシングサイトが作られる可能性があります。
正式なJ-Grants2.0サイトと、情報を詐取するサイトでは、下記の点が異なることが想定されます。
検索やメール配信などでJ-Grants2.0のサイトがあってアクセスした場合、下記の点に注意して下さい。
- ドメインの最後が「go.jp」になっているか。また、アドレスが「https://www.jgrants-portal.go.jp」か。「go.jp」ドメインは、政府機関(組織機構図に含まれる機関)、独立行政法人・特殊法人でないと申請できません。政府機関の場合、官公庁が発行した登録担当者の写真つきの身分証明書の写しが必要、独立行政法人・特殊法人の場合、履歴(現在)事項全部証明書の写しが必要になるため、不正取得は極めて難しい仕組みになっています。
- URLが「https://」で始まっているか
- GBizID登録申請の段階で、「口座番号・クレジットカードの情報・パスワード、その他法人・個人事業主の業績情報など、本来のJ-Grants2.0サイトでは登録の必要がない情報登録を求めていないか(実際の補助金申請などでは、必要に応じ口座番号などの登録を求められる可能性もあるため、あくまでGBizID登録の段階で、不要な情報を求められないかに注意して下さい。
J-Grants2.0で今後できるようになること
J-Grants2.0の今後の発展を考える上で、ロードマップには様々な情報が盛り込まれています。
ロードマップには、
今後3年間で、国または自治体が運営するすべての補助金・助成金に係る手続の電子化に対応可能なシステムを目標に開発を行う
とあり、これまでは、持続化給付金・家賃支援給付金・雇用調整助成金など別々のシステムで動いていた補助金・助成金が、J-Grants2.0に一本化される方向で進むことが見込まれます。
当資料のロードマップを見ると、
- 令和2年度(つまり2021年3月31日まで)→約100種類の補助金で利用予定(経産省27・7省庁50補助金・26自治体)
- 令和3年度→約150種類のJ-Grants1.0を利用した補助金・公募情報を掲載した補助金
- 令和4年度→約500種類の補助金で利用予定、経産省は原則全ての補助金で利用、各省庁・自治体も取り込む
- 令和5年度→約1,000種類の補助金で利用予定、国または自治体が運営する全ての補助金・助成金への利用を推進するとともに、政府共通ネットワーク・総合行政ネットワークと接続
以上の通り、数年かけて、国・地方自治体の全ての補助金・助成金をJ-Grants2.0上で申し込めるようにしていく方向付けがされています。
また、全てをJ-Grants2.0上で完結させるものだけではなく、J-Grants2.0の一部の機能を利用し、公募申請不要な補助金・助成金、交付申請と実績報告を同時に行うという一部手続が不要な補助金申請を行うケースにも対応できるようなAPIの部分利用の仕組みも想定されています。
あくまでこれは、経済産業省の想定するロードマップ上の計画であり、実際の運用がどこまで進むかは不明確です。
しかし、今後あらゆる補助金・助成金の申請が、J-Grants2.0のシステム上で動く可能性は高く、同時にGBizIDの早急な取得が重要といえます。
今後、必要に応じてJ-Grants2.0、GBizID、その他J-Grantsを通した補助金などの情報を追加していきます。