日本NO1の100円ショップでおなじみのダイソーが、月額五万、4年間、返済なしの給付型奨学金を、2021年度は2020年10月31日までの締め切りとして奨学生を募集しています。
2021年度が初めての募集で、高校3年生の方に取っては、チャンスかもしれません。
今回は奨学金の話と、なぜこの奨学金制度が創設されたのか、創業者である矢野博丈氏の人生も踏まえて書いていきたいと思います。
創業者の矢野博丈氏は、波瀾万丈の人生を歩んできた人としても有名です。
- 北京に生まれ、お父様は医師、大学へ行くことが珍しかった時代に中央大学を卒業(ここまでは、一見エリートのような人生)
- 妻の実家でハマチの養殖事業を行うが失敗し夜逃げ(まず普通の人はここで人生詰む)
- 東京で百科事典のセールスマンやちり紙交換などをやるも長続きせず
- 広島に戻り、義理の兄のボウリング場を手伝う
- 複業としてリアカーを引きながら移動販売の「矢野商店」を始める
- 倉庫が火事になり自宅も半焼状態
- 保険もかけていなかった(が、これが後になって実は、あぶく銭が入らなくてよかったと述懐)
- 移動販売で、やけくそで100円で持ってけ、と思い、100円ショップの原型を作る
- 広島のスーパーに出店したことを皮切りに、全世界に拡大
- 現在も広島中心部から離れた工業地帯の、東広島市に拠点を構え、広島の雇用創出・納税・財団など様々な形で地域に貢献
など、まるで朝ドラに出てきそうな人生を送っています。
最初の頃は、リアカーを引きながら、「夜逃げするはめになるし、セールスもうまくいかんし、リアカーで物売り歩いて、中大まで出て、わし何やってんじゃ・・」という気持ちもあったかもしれません。
事業の成功の鼻緒を掴みつつも、「いや、またなんかおこるかもしれん・・・、」と、極めて慎重です。
経済誌 フォーブス日本版に掲載された記事では、矢野氏ならではのコメントが、異彩を放っています。
お金を稼がせていただき、ありがとう。お客さんが来てくれてありがとう。と思っている人も、それが当たり前になったら普通は天狗になっちゃうと思うんですよ。
うわ、これわかるわー、と思うのは、人間というと少し成功したり、メディアに出たりすると、周囲がすごいですね、と言ってくるものだというのをよく聞きます。
そして、「俺すごい」「アタシすごい」になり、謙虚さというのが無くなり、「オラオラ」になり、どこかでつまづいて、周囲から汐が引くように人がいなくなると言う・・・。
これだけもてはやされる立場になりながら、「ありがとう」という気持ちが出てくるのは、きれい事ではなく、様々な修羅場を乗り越えてきたからこそ言えるコメントと言えましょう。
また、この発言も、ワーク・ライフ・バランスがさけばれる中で異色です。
僕は大した経営者じゃないと思っているので、よく分かりません。ただ、ものすごく働きました。働くことが大好きです。朝5〜6時から夜中の1〜2時まで毎日働いていたので、昭和18年生まれでよく働く人のランキングを作ったら、10番以内には入っていると思います。
今はコンプライアンスの絡みもあり、社員に対しては、ものすごく働け、中国のように996(朝九時出勤、夜九時退勤、週6日労働)で行けということは当然労働基準法違反でいけませんが、経営者・役員に関しては別です。
加えて、現在は労働の内容が労働集約から知識集約産業に完全にシフトしているため、今の時代には、「結果を出す」という観点で「時間内で成果を出せるよう、集約して働く」、「成果に焦点を充てる」ことが重要な時代であるということは言えますが。
その後のエピソードでも、
おやじは、往診に行って「温めてやれ」と言っても薪を蓄えていない、「もっと滋養をつけろ」と言っても卵を買うお金もないような人たちを見てきたんですね。だから自分の子どもには同じような思いをさせたくなくて、「勉強しろ、手に職をつけろ、仕事しろ、悪い友だちと付き合うな」って毎日100回くらい言うわけです。それがトラウマみたいになって、結果的によく働くことができたんだと思います。
と。
悪い友達と付き合うな、というのは、今の時代だと「一見差別か!」と怒る人権派の人がいそうですが、悪い友達に限って、怪しい遊びやバイト、今ならマルチその他など、変な話ばかり持ってくる事も想定できます。
その後、
20世紀は欲望の強い人が強かったけれど、21世紀はそれがだんだん否定されてきたように思います。
と。
また、イトーヨーカドーの伊藤雅俊氏、セブンイレブンの鈴木敏文氏のエピソードも踏まえ、
鈴木会長は「今うまくいっているから、いいじゃないか」という理論ではない。美味しくないものは許せない
伊藤オーナーの「返せない金なら、株でいいぞ」
そして、
お二人ともよく僕を叱ってくださって、本当に有り難いですね。
と、叱って下さってありがとう、そういう境地なのですね。
大人になると、間違っていても叱ってくれる人は減り、そっと離れたり、遠いところで変な評判が立ったりするものです。
高校生だと、叱られて「いやだ!」となりそうですが(もちろん、大学生・若手社会人でも)、叱ることには、エネルギーと、相手を良い方向に導きたいという思いが不可欠です。
どうでもいいと思ったら、無言で立ち去られます。
そういう事を踏まえてこそ、叱って下さってありがとう、なのです。
そして、矢野氏の怒るポイントは、
「売上が上がらなくても全然怒らないけど、ベストを目指しているか、甘えた姿勢になっていないかと怒るんです」と。
人間、慣れと惰性というのはありがちなもので、意識しないと流れのままになってしまうこともあります。
ここで、ベストを目指す姿勢であるか、あるいは甘えがないかという観点、非常に説得力を感じました。
最後に、
商売は最前線にいて、一番困っているところで頑張るのが大事なんだと思います。
恵まれない幸せ、仕方がない・是非もない、ありがとう・感謝。「ありがとう」と言うと、本当に物事が良い方向に転がるんですよ。何か大きな問題が起きた時、3日間くらい1日中「ありがとう、ありがとう」と言ってみてください。そんなに難しくないはずです。不思議と良いことが起きますから。
と一見、人によっては「えっ?」と思うかもしれませんが、ある意味矢野氏が窮地で何度もギリギリまで追い込まれ、そこから諦めず這い上がり、今のダイソーを作り上げたからこそ、きれい事なく本心から言えることではないかと思います。
ダイソー財団の奨学金募集
ダイソー財団の奨学金募集に関しては、サイトに詳細がありますが、
ポイントは、
- 受験結果が出る前に結果が決まる
- 高校の推薦は不要で、応募者本人が当ホームページから直接応募(親には直接話を)
- 必要書類は成績表・世帯の課税証明書・大学で学びたいことの小論文
- 申込はWeb申請でのみ
- 申請書受付期間は、2021年度分は2020年9月15日(火)~2020年10月31日(土)まで
- 12月後半に採用内定が出る
- 日本学生支援機構の奨学金など他の奨学金と併用OK
という形で、大学重視というより、世帯収入や学びたいことを主体に審査される印象があります。
ぜひ、高校三年(もしくは20歳未満)で、進学を考えているという方は、ダイソー財団の奨学金募集に応募してみて下さい。