前回に続き、マイナンバーカードを用いた法人設立ワンストップサービスに関する記事です。
(令和2年1月20日現在の情報です)
マイナンバーポータルの、法人設立ワンストップサービスを実際に見ていると、たしかに「以前よりは簡単かもしれないけど、普通の人が考えるかんたん」とはかなり隔たりがあるなと感じました。
ただ、最初に書いておくと、
- 全くのゼロからやるよりは確かに利便性は高いので、今後の改良に期待
- 現状、法人設立に関して知識のある人でない限りは、専門家に依頼したほうが確実
ということは言えると思います。
例えば、最初の質問。
法人番号を取得していますか?
という段階で、いいえ・わからないを選択すると、
法人設立の手続を実施するには法人番号の取得が必要となります。
というメッセージが出てきます。
UX上、このメッセージには法人番号とはなにか、法人番号の取得方法に関するリンクが貼られているかなどがされているとわかりやすいのですが、「法人設立の手続を実施するには法人番号の取得が必要となります」というメッセージにはリンクや解説等はありません。
当然、ある程度感のいい人ならば、最初のページに戻って法人番号を取得する手続きをすれば・・・となりますが、この法人番号を取得する手続き、前回も紹介したとおり、概略のみで具体的な手続きが簡略化され、解説はほぼないに等しいです。
当然、会社設立の最初のハードルは、法人設立・法人番号の取得ですので、普通の人にとってはまず最初の部分で引っかかるでしょう。
次に、会社手続きも終わった、法人の印鑑証明も取得した、法人番号も取れた!という状況で、次へ進むと、こんな画面が出てきます。
大変長いです。
これだけで、前提知識を特に持たず、画面を見た人はフリーズすると思います。
さらにまだまだ質問は続きます。
画像だと読みにくいので、各質問をテキストにすると・・、
法定の帳簿または法定の書類を備付け、日々の取引を正確に記録し、それらを保存することを条件に、青色申告の承認を受けた場合は、以下のような課税特典が受けることができます。
(例)
・欠損金の繰越控除
・欠損金の繰り戻し還付
・特別償却と特別控除
・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入
・その他 課税の特例課税特典を受けるために青色申告の承認申請の届け出を行いますか?
棚卸資産の評価方法は6種類ありますが、届け出をしなかった場合は、自動的に「最終仕入原価法による原価法」という評価方法が適用されます。
届出をすることで、会社の業種や取扱い商品などに応じた適切な評価方法を選ぶことができます。
提出しますか?棚卸資産の評価方法を、「最終仕入原価法による原価法」以外での評価方法にするための届け出を行いますか?
減価償却の方法には、主に定額法と定率法があります。
「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出しない場合、機械装置、車両運搬具、器具備品等の減価償却は「定率法」となります。
「定額法」を選択する場合には「減価償却資産の償却方法の届出書」を提出する必要があります。機械装置、車両運搬具、器具備品等の資産の場合、減価償却資産の償却方法を「定額法」にするための届け出を行いますか?
有価証券の一単位当たりの帳簿価額は、移動平均法で計算する事になります。 ただし、有価証券の売買を頻繁に行う場合は、届出書を提出することにより総平均法等その他の計算方法を選択できます。
有価証券の一単位当たりの帳簿価額を、総平均法等その他の計算方法にするための届け出を行いますか?
法人税の申告期限は、その事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内です。
例えば3月末日決算の法人であれば、5月31日(土日祝日に当たる場合には、その次の平日)となります。
しかし、下記1~3のいずれかに該当する場合は、事前に申請手続を行うことで、申告期限を延長することが可能です。
1~3のいずれかに該当しますか?1 定款等又は特別の事情があることにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあるため、申告書の提出期限を1ヵ月間延長しようとする場合
2 会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から3ヵ月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあるため、4ヵ月を超えない範囲内で申告期限の延長月数の指定を受けようとする場合
3 特別の事情があることにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から3ヵ月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあること、その他やむを得ない事情があるため、申告期限の延長月数の指定を受けようとする場合
法人税の申告を、その事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以降に行うための届け出を行いますか?
本来、法人住民税(都道府県)・法人事業税・地方法人特別税の申告期限は、その事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内です。
しかし、下記1~4に該当する場合は、事前に申請手続を行うことで、申告期限を延長することが可能です。【法人住民税関係(都道府県)】
1 法人税で申告期限の延長が承認されている場合
【事業税・地方法人特別税関係】
2 定款等の定め、又は特別の事情があることにより、事業年度終了から2ヵ月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあるため、申告書の提出期限を1カ月延長しようとする場合3 会計監査人を置いている場合で、かつ定款等の定めにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から3カ月以内にその各事業年度の決算についての提示総会が招集されない常況にあるため、4カ月を超えない範囲内で申告期限の延長月数の指定を受けようとする場合
4 特別の事情があることにより、今後、各事業年度終了の日の翌日から3カ月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあること、その他やむを得ない事情があるため、申告期限の延長月数の指定を受けようとする場合
法人住民税(都道府県)・法人事業税・地方法人特別税の申告を、その事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以降に行うための届け出を行いますか?
設立時の資本金の額が1,000万円未満の場合、設立1期目の消費税の納税義務は免除されますが、設備投資が多額にある場合や、輸出業者のように売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が多く、経常的に還付が生じる事業者は、課税事業者を選択することで、消費税の還付を受けることができる可能性があります。
消費税の還付を受けるために課税事業者を選択する届け出を行いますか?
設立時の資本金の額が1,000万円以上の場合等で消費税の課税事業者となる場合に、設立1期目の消費税の計算にあたって、簡易課税制度の適用を受けることができます。
消費税の計算を簡易課税制度の適用を受けるための届け出を行いますか?
輸出業者のように、売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が多い場合など、届け出を行うことで課税期間の特例を選択し、消費税の還付を1年に1度ではなく3ヵ月に1度又は毎月受けることもできます。
ただし、消費税の納付も1年に1度ではなく3ヵ月に1度又は毎月となります。消費税の納付及び還付を3ヵ月に1度又は毎月受ける届け出を行いますか?
給与の支払を受ける者が常時10人未満であり、源泉所得税の納期の特例の承認を受けた場合、納付手続が半年に一度で済むため、月々の納付手続の負担が軽減されます。
納付手続を毎月実施から半年に一度で済むよう、源泉所得税の納期の特例の承認を得るための届け出を行いますか?
対象法人のe-Taxの利用者識別番号、及び暗証番号を保有していますか?
役員に事業年度の途中で賞与等の名目で一時金を出した場合には、原則として損金(税務上の費用)とすることはできません。
しかし、「事前確定届出給与」を使えば役員に対して支給する賞与等を一定の条件のもと損金(税務上の費用)とすることができます。
役員へ賞与等を支給する予定はありますか?(支給の決定については、株主総会、社員総会等で、支給対象者・支給日・支給額を決定する必要があります。)
まだまだ質問は続きます。
法人設立の所在地は東京都23区ですか?
下記の対象となる地方公共団体に事業所を新設しますか?
対象となる地方公共団体(平成30年4月1日時点)
【東京都(23区)】
【その他地方公共団体】
札幌市 旭川市 仙台市 秋田市 郡山市 いわき市 宇都宮市 前橋市 高崎市 さいたま市 川越市 川口市 所沢市 越谷市
千葉市 市川市 船橋市 松戸市 柏市 八王子市 武蔵野市 三鷹市 町田市
横浜市 川崎市 相模原市 横須賀市 藤沢市 新潟市 富山市 金沢市 長野市 岐阜市 静岡市 浜松市
名古屋市 豊橋市 岡崎市 一宮市 春日井市 豊田市 大津市 京都市
大阪市 堺市 豊中市 吹田市 高槻市 守口市 枚方市 東大阪市 四日市市
神戸市 姫路市 尼崎市 明石市 西宮市 芦屋市 奈良市 和歌山市 岡山市 倉敷市
広島市 福山市 高松市 松山市 高知市 北九州市 福岡市 久留米市 長崎市 熊本市 大分市 宮崎市 鹿児島市 那覇市
既に個人事業主として健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の認可を受けている事業所が法人成りされる場合は、「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出できません。
法人成りに該当しますか?
※法人成りの場合、「健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出して頂くことになります。
既に個人事業主として労働保険の適用事業所になっている事業所が法人成りされる場合は、法人設立OSSでの対象手続とは異なります。
法人成りに該当しますか?※法人成りの場合、「労働保険名称、所在地等変更届」を提出して頂くことになります。
既に個人事業主として雇用保険の適用事業所の認可を受けている事業所が法人成りされる場合は、法人設立OSSでの対象手続とは異なります。
法人成りに該当しますか?※法人成りの場合、「事業主事業所各種変更届」を提出して頂くことになります。
以上の質問に、一気に(保存機能はありますが)答えることになります。
よむだけでも相当エネルギーを使いますが、これから会社を設立しようという普通の人が、この質問に事前知識なしで答えるのは、相当ハードルが高いと思います。
一つ一つ入力していくと、必要な届出先・資料などを提示してくれるとともに、”対象となる地方公共団体(平成30年4月1日時点)【東京都(23区)】【その他地方公共団体】”に該当しなくても手続きはできます。
ただ、手続きの確認事項や必要資料、各種事項を見るに、専門的な部分が多く、今まで通り会社設立の専門家や支援サービス・ソフトウェアを利用しながらでないと、普通の人がマイナンバーポータルからの手続きを行うのはハードルが高いのではないかな・・、と感じました。
前回の記事はこちらです。
マイナンバーを活用した、ワンストップ法人設立サービスサイトの課題