「若年層を都市から地方へ」はできるのか?-地域維持の特別措置法案

(実例を特定地域づくり事業協同組合-雇用作りの新しい仕組みが島根県海士町で日本初のスタート!にて2021年1月18日に更新しました。)

地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律案(地域維持の特別措置法案)、意外とマスメディアなどでは話題となっていないトピックですが、法案は2019年11月21日、衆議院で可決し、その後参議院でも可決され成立する見込みとなっています。

 

この法案は人口急減地域対策議員連盟、特に議連の会長である細田博之衆院議員が中心となって提出されたものですが、これは中山間地域にとって大きな意味を持つ法案であると思います。

 

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地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律案(地域維持特措法案)とは?

一言で端的にいうと、若い世代を都市部から地方へ移住する受け皿をつくろうという法案です。

 

地方、特に人口減少に直面している中山間地域にとってメリット・課題など多々あり、非常に重要なトピックとは思いますが、このことを掲載しているメディアは少ないです。

 

山陰中央新報-地域維持の特措法案、衆院総務委員会で可決 成立見通し

 

事業協同組合 各地で設立の動きが進むか

 

衆議院に提出された法案

 

地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律案要綱

 

ポイントを要約すると、

  • 人口が減少している中山間地域での社会維持が急務で、若年層などの都市からの移住を促す
  • 人口減少が進む地域では、事業者単独で安定した生活をできる仕事が提供しきれていない
  • 人口急減地域で「特定地域づくり事業協同組合」を商工会・JA・観光協会などが連携して設ける
  • 都道府県知事が認定、国が条件に応じて助成
  • 移住者や地元組合の職員を「地域づくり人材」と位置づけ、地域内の各事業者の要請に応じ派遣(農林水産業・介護事業)

 

という形で、人(特に若年層)が都市から地方へ移住しやすい受け皿をつくろうという法案で、切り口によっては様々な考えがあるかもしれません。

 

人口一極集中の防止・都市から地方への移動の受け皿として、この試みはうまくいってほしいと思うと共に、ハード・ソフトの受け入れ体制作りや、制度の柔軟な運用も課題となってくるかと思います。

 

  • 都市から地方に移住した人に対し、様々な意味で柔軟に受け入れる体制をつくる
  • 一カ所の場所に固定させようとしない(同じ場所・同じ日々が続くと、様々な意味で行動、考え方が硬直してしまうので、共同組合間の人材交流など、「いつもと違う人、違う場所」でのコミュニケーションの機会をつくる
  • 地域づくり人材の派遣業種を限定しない(例えばIT業態・Web開発やニアショア開発受託などは、地方でも光回線さえ整備されていれば可能)
  • 東京から田舎の片道切符にしない(都市部や地方都市へのアクセスがしやすいようにする)
  • 世代を若者に限定せず(田舎での若者というのは、30~40代も含むのです・・・)、中堅層や就職氷河期に直面した世代も対象にする
  • 携帯がつながらない場所が多いだけで、若年層にはいろんな意味で「ありえない」とされるので、基地局の整備に助成を行う(5Gは厳しいでしょうが、せめて4Gは・・・)
  • 補助金・助成金ありきの運営になるのは望ましくない(何らかの独自採算が取れる形に自立させる事が重要)
  • 制度の運用を通し、一つでもいち早く成功事例を作り共有するとともに、運営には自主性を持たせる
  • 残す中山間地域・もう厳しい中山間地域を選別せざるを得ない局面も出てくる可能性はある

 

などなど、いろいろな考えが浮かびます。

 

制度の課題は、今後運用していく中で出てくるかと思います。

ただ、さまざまな意味で厳しい状態である中山間地域において、地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律案は、「最後の蜘蛛の糸」のようにも思えます。

 

また、若年層(18~30歳)が、あえてわざわざ中山間地域に行くだけのメリット・魅力を提示できるか?というのも課題です。また、キャリア形成上、それが本人のプラスになるのか?という観点でいくと、本人の将来のためにも、権限や実績を作る機会を提供し、育て、相応の給料を支払うことも必要になります。

そして、世代を広げ30~40代の層、特にリーマンショック・就職氷河期でポテンシャルはあったけれども、不遇の状況にある層を積極的に取り込むことも必要でしょう。

 

今の地方、特に中山間地域にとっては、「人が来てくれるだけでもありがたい」のです。

 

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地方行きなら、条件が良くならない限り、ほぼ半分が「嫌だ」という現実

「地方転勤になった場合会社を辞めますか?」というアンケート。

 

これはベースメントアップス株式会社の運営サイトでのアンケート調査の結果です。

 

なお、運営サイトが、「会社を辞める前に読むサイト」という転職系メディアサイトなので、バイアスがかかっている可能性はあるかもしれませんが・・・

 

「地方転勤するくらいなら退職してやる」という人が27%も!?給料を上げる、期限付きの転勤などの条件付きならば退職しない人は53%!多くの人は地方転勤についてネガティブに考えているのか?
べースメントアップス株式会社のプレスリリース(2019年10月22日 11時20分)「地方転勤するくらいなら退職してやる」という人が27%も!?給料を上げる、期限付きの転勤などの条件付きならば退職しない人は53%!多くの人は地方転勤についてネガティブに考えているのか?

 

「地方転勤になった場合会社を辞めますか?」

というアンケート(回答者208名)で、

必ず辞める→26%

収入が増えれば辞めない:→24%

つまり、48%、ほぼ半分が、「地方行きの場合、辞めるか、収入が増えないと辞める」と答えています。

 

言葉は悪いのですが、地方行きなら辞めるかよっぽど条件が良くないと嫌だ、というのが「一般的」だし、それも致し方ないと思います。

 

都市の人の交流、家族・友人など生活基盤が都市にできている、人材の多様性、娯楽、様々な意味で都市の方にアドバンテージがあるわけですから。

 

特に、以前と違い会社が終身雇用を約束できなくなった今、働く側もある種ドライに様々な労働要素を見ています。

 

また、辞めないとしている層でも、

期間限定なら辞めない→29%

辞めない→20%

となっています。

 

この地方転勤の場合、大体大阪支社とか福岡支社など、「中核都市」というパターンが想定されるので、辞めないと答えた20%に、「では、中山間地域なら?」とアンケートしたら、どれくらいの層がOKと答えるでしょうか。

 

このように、「中山間地域に行こう」と思ってくれるだけで、相当貴重な人材(とはいえ、都市は人口の母数そのものが多いのですが)と言えましょう。

 

このように、「行きたいと言ってくれる人材とのマッチング」「受け入れ体制作り」「様々なインフラの確保」など様々な課題はありますが、改めて、

 

この法案は意義があり、中山間地域にとって国がなし得る重要な施策である

ということは強調したいと思います。

 

事業協同組合 各地で設立の動きが進むか

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