労災保険の特別加入(個人事業主・フリーランスの加入)に関して、2022年4月1日からあはき師(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師)が追加、2021年9月1日からIT関係・自転車による配送業の業種が追加されます。これまで特別加入ができるのは、主に下記の業種に限られていました。
- 自動車、バイクを用いた配送業
- 土木、建築業
- 漁業
- 林業
- 医薬品の配置業
- 廃棄物の収集・運搬・再生
- 船員
- 特定の農作業従事者
- 介護作業・家事支援等従事者
- 芸能関係作業従事者
- アニメーション制作作業従事者
- 柔道整復師
- 創業支援等措置に基づき事業を行う人(60代など高年齢になり、従業員ではなくフリーランス・業務委託扱いで働く人)
このように、柔道整復師は元々対象でしたが、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師は対象外となっていました。
労災保険特別加入の基本的なメリット
労災保険に特別加入する事によるメリットは下記の通りです。
- 給付基礎日額にかかわらず業務や通勤途中での傷病についての治療が無料に
※自営業・フリーランスの場合は、業務内容が実態として労働者に近いケース(この場合は、使用者と見なされる側が労災保険で支払う必要あり)以外では、本来3割負担の健康保険での治療費がかかる。自営業に関しては、労働者と異なり国民健康保険の利用ができる。労災保険特別加入だと、治療費が労災保険から給付され無料に - 4日以上の休業は掛金に応じた休業保障給付がある
- 障がいが残ってしまった場合は障害年金・一時金がある
- 遺族保障給付・葬祭給付がある
- 傷病年金・一時金等がある
- 労働災害で障がいが残った場合介護給付がある
など、非常にメリットが多いです。保険料等各種費用は業種・保証内容や加入団体にもよりますが、概ね年間1・2万~数万程度(労災保険料+団体の加入費・組合費)と考えておくと良いでしょう。掛金の額は任意で変更できますので、一番掛金の少ない保証でも、業務傷病が無料のメリットは受けられます。
ITフリーランス、自転車による配達業が労災保険特別加入の対象に
2021年9月からは、ITフリーランス・自転車による配送業が労災保険特別加入の対象になります。
労災保険特別加入は、直接労働基準監督署に行うのではなく、労災保険特別加入をとりまとめる団体に加入し、団体を経由して労働基準監督署に申請する必要があります。
そのため、ITフリーランス向けの団体、自転車による配送業向けの団体を通す必要があります。
近年、2つの業種は従事者が増えています。
産業構造の変化から、ITに従事する人が正社員だけでなくフリーランスでも増加、加えて自転車による配送業は、外資系企業の参入やステイホームの流れにより、従事する人が急速に増えています。
それぞれの具体的な対象者を見ていきます。
ITフリーランスの労災保険特別加入
ITフリーランスの場合は、下記の業種が特別加入の対象になります。
- ITコンサルタント
- プロジェクトマネージャー
- プロジェクトリーダー
- システムエンジニア
- プログラマ
- サーバーエンジニア
- ネットワークエンジニア
- データベースエンジニア
- セキュリティエンジニア
- 運用保守エンジニア
- テストエンジニア
- 社内SE
- 製品開発/研究開発エンジニア
- データサイエンティスト
- アプリケーションエンジニア
- Webデザイナー
- Webディレクター
以上のような業種が、対象の業務として例示されています。
また、基本的なIT業の定義としては、
- 情報処理システムの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理
- 情報処理システムに関する業務の一体的な企画
- ソフトウェアやウェブページの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理、デザイン
- ソフトウェアやウェブページに関する業務の一体的な企画その他の情報処理
以上に当てはまる場合は、IT業の特別加入の対象となります。
労災保険特別加入の対象業務として例示されていない、IT周りの仕事、Youtuber・Eスポーツプレイヤー・Webライター・アフィリエイター・IT講師などはどうなる?
上記の定義から考えると、Youtuber・Eスポーツプレイヤー・Webライター・アフィリエイター・ITの講師業などはどうかな、となりますが、労働局に確認してみました。
すると、原則は、4つの基準、
- 情報処理システムの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理
- 情報処理システムに関する業務の一体的な企画
- ソフトウェアやウェブページの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理、デザイン
- ソフトウェアやウェブページに関する業務の一体的な企画その他の情報処理
上記に当てはまるかがベースになります。
あとは業務内容の実態を踏まえて判断することになりますが、Youtuber・Eスポーツプレイヤー・ITの講師業は当てはまりにくいかも、ただし個別事案により判断、Webライター・アフィリエイターも個別の事案により判断という形になります。
そのため、ITに関わる業種で特別加入できるかは、上記の4基準に当てはまるかどうかで判断、微妙な場合は労働局の判断を仰ぐ形となる可能性が高いです。
会社員に近い形で働いている場合は?
なお、会社員に近い形で働いている場合でも、労働契約でない請負等の契約で業務に従事している場合は特別加入することができます。契約形式に関わらず、実態として労働者と認められる場合は、特別加入をしていなくても労災保険が適用(この場合事業主は保険料を納める)、補償を受けることができます。
実態として労働者と認められるためには、指揮命令系統や、働く場所、業務時間などの高速性、依頼を断ることができるかなどの実態により判断されますので、逆に言うとよほど場所・時間・働き方が拘束されている場合でないと、労働者ではなく個人事業主(フリーランス)と見なされるため、基本的には個人が労災保険特別加入に自主的に入る方が確実です。
自転車による配送業も労災保険特別加入の対象に
近年社会的情勢により、自転車による配送業(飲食物だけでなく、その他の物も対象)を行う人も増えました。
この自転車による配送業も、労災保険特別加入の対象となります。
これまで、自動車及び原動機付自転車を使用して貨物運送事業を行う者は、一人親方等として特別加
入の対象範囲に入っていましたが、9月1日からは自転車も加入対象となります。
労災保険特別加入の加入は任意だが、入っておくことが望ましい
上記の労災保険特別加入については、一人親方・フリーランスが自主的に、自分の費用で加入することになっています。そのため、入っても、入らなくても、どちらの選択もできますが、万一の事を考えると入っておく方が良いと言えます。
対象になる業務に携わる方は、ぜひ労災保険特別加入の特別加入を検討してみてください。