RPAにより大きな時間を削減できている業態の一つが、金融機関。1,283時間を削減した事例を平成30年版情報通信白書の記載を元に説明。
金融機関の定型事務とRPAは相性が良い
金融機関の事務とRPAは非常に親和性が高いと言われています。
特に定型化され、作業量が多い事務に関して、絶大な効果を発揮していると言えましょう。
総務省の情報通信統計データベースページ 平成30年の情報通信白書の事例をピックアップします。
三重県の銀行では、働き方改革の「銀行全体としての労働生産性を高める取り組み」の一環として、最初は業務全体という形ではなく、2業務の特定作業に限定して、かつ特定作業に関してRPAを導入したそうです。
それが、
- 自己査定の格付業務・・顧客リストに基づき、サブシステムからExcelへの転記を繰り返す
- 投資信託集計報告業務・・サブシステムからファンドデータを抜粋、Excelへ転記、集計、報告を行う
という、非常に事務量が多い反面、業務の中でも、定型的・かつ単純作業そのものという要素が強い、「自動化して生産性を高めたい」部分です。
自己査定という業務は、金融機関自身が、貸出先の業況や返済等を「査定」し、「正常先」「要注意先(+要注意先の中でも特に管理を要する要管理先)」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」と5種類に区分する作業です。
正常先以外は債務者区分に応じた引当金を確保する必要があります。
また、銀行の自己資本比率計算にも関わるため、利益に直接つながる業務ではないですが、重要性が高く、事務負担も強い作業の一つと言えましょう。
自己査定の格付業務において、重要なのは、「債務者区分を分ける」という作業です。
債務者区分を分ける作業に関しては、ソフトウェア会社が提供する銀行用の自己査定支援システムを活用しながら、債務者区分を分ける作業を行うケースが多いかと思われます。この債務者区分については、取引先への融資に対する姿勢の判断、金融庁への報告、ディスクロージャー誌への記載など、ミスが許されない重要な部分ですので、人の目によるチェックが欠かせません。
しかし、このあと、データを活用するためにExcelに転記するなど、「間違いがあってはならないが、作業そのものは単純、かつ一定」となると、RPAの「定型化された作業に強い」という要素が、俄然力を発揮します。
この導入実験では、結果として、「自己査定で1件14分要した作業を3分で完了、年間の作業時間は1,283時間削減見込み」、と相当な事務負担の軽減につながりました。
勤務時間8時間で単純計算すると、およそ160日分。当然、複数の人数で自己査定業務は行うことが想定されますが、それにしても160日分の業務負担(しかも単純作業)がRPAの導入で削減された、というのは、行員の負担軽減・コスト削減に大きくつながるということは、ご想像いただけるかと思います。
また、投資信託の集計作業も、1~2日要する作業が15分で完了、部署内での事務の共有化が図られるなど、業務効率化に大きく寄与しています。
なお、2019年7月発行の、令和元年版の情報通信白書では、「自治体行政スマートプロジェクト」という形で、2019年度からの自治体へのAI、RPAの導入促進が強調されており、こちらも今後記事に取り上げる予定です。
出典
平成30年版情報通信白書 PDF版173ページより
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