新規就農者に1,000万円の一括支援!新規就農・跡継ぎの支援策検討開始、指導する農業法人などへの補助も5年、最大396万に

共同通信・各種地方紙の報道で、「就農者に1千万円の一括支援 初期負担軽く、担い手育成」という記事が出ています。

この制度の元々の方式を踏まえ、この「就農者に1千万円の一括支援」に関してポイント・留意点を解説します。

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新規就農1,000万円の概要を整理

まず、新規就農で1,000万円の制度の概要を箇条書きで見てみます。

  •  農林水産省が2022年度に、将来の農業の担い手となる49歳以下の新規就農者を育成する支援策、農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)を刷新の方向
  • その上で新規就農時の初期負担が大きいため支援が必要との声があり、最大1千万円を一括支援する方向に
  • これまでは、市町村から就農計画の認定を受けると5年をかけて合計690万円(1~3年目年150万円、4,5年目年120万円)の補助
  • 機械やトラックなど初期投資の負担を減らすため、最大1千万円を一括支援
  • 就農者を指導する農業法人などへの助成期間を従来の最長2年から5年に延ばす
  • もともとは最長2年で最大240万→最長5年で最大396万円に

では、農林水産省の行う、現在の農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)の制度を見てみます。

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新規就農制度である農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)のポイント

では、こちらの農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)の目的、要点を箇条書きで整理します。改めて記すと、農業の跡継ぎであっても、条件を満たせば対象になる可能性があります。

  • 次世代を担う農業者となることを志向する者に対し、就農前の研修を後押しする資金(準備型(2年以内))及び就農直後の経営確立を支援する資金(経営開始型(5年以内))を交付
  • 今回は、就農直後の経営確立を支援する資金(経営開始型(5年以内)を5年690万→一括1,000万に拡充予定
  • もともとの制度は、新規就農者に、農業経営を始めてから経営が安定するまで最長5年間のうち、経営開始1~3年目は年間150万円、経営開始4~5年目は年間120万円を定額交付する制度
  • 独立・自営就農時の年齢が、原則49歳以下の認定新規就農者であることが条件
  • 自ら作成した青年等就農計画に即して主体的に農業経営を行っている状態であることとして、以下の要件を満たすこと
    ・農地の所有権又は利用権を交付対象者が有している
    ・主要な機械・施設を交付対象者が所有又は借りている
    ・生産物や生産資材等を交付対象者の名義で出荷取引する
    ・交付対象者の農産物等の売上げや経費の支出などの経営収支を交付対象者の名義の通帳及び帳簿で管理
    ・親元に就農する場合(跡継ぎ)であっても、上記の要件を満たせば、親の経営から独立した部門経営を行う場合や、親の経営に従事してから5年以内に継承する場合は、その時点から対象
    ・親元に就農する場合は、新規参入者と同等の経営リスク(新規作目の導入や経営の多角化等)を負い経営発展に向けた取組を行うと市町村長に認められることが前提
    ・独立・自営就農5年後には農業(自らの生産に係る農産物を使った関連事業 <農家民宿、加工品製造、直接販売、農家レストラン等>も含む。)で生計が成り立つ実現可能な計画であること
    ・市町村が作成する 人・農地プラン (東日本大震災の津波被災市町村が作成する経営再開マスタープランを含む。)に中心となる経営体として位置付けられていること(もしくは位置付けられることが確実であること)もしくは、農地中間管理機構から農地を借り受けていること
    ・生活保護等、生活費を支給する国の他の事業と重複受給していないこと
    ・農の雇用事業による助成金の交付又は経営継承・発展支援事業による補助金の交付を現に受けておらず、かつ過去に受給していないこと
    ・原則として前年の世帯(親子及び配偶者の範囲)所得が600万円以下であること。前年の世帯全体の所得が600万円を超えているにもかかわらず資金交付が必要な場合、生活費確保の観点から支援対象とすべき切実な事情の有無を記入する必要あり

以上の点が求められますが、特例が各種あり、こちらについても解説します。

  • 夫婦ともに就農する場合(家族経営協定、経営資源の共有などにより共同経営者であることが明確である場合)は、夫婦合わせて1.5人分を交付(1.5倍!)
  • 複数の新規就農者が法人を新設して共同経営を行う場合は、新規就農者それぞれに最大150万円を交付

ただし、交付停止・返還義務など大きな注意点があり、その点は留意しておく必要があります。

  • 原則として前年の世帯所得が600万円(次世代資金含む)を超えた場合は交付停止
  • 青年等就農計画等を実行するために必要な作業を怠るなど、適切な就農を行っていないと市町村が判断した場合も交付停止
  • 保証人が必要となるケースがある(そして保証人は、申請が返せない場合返還時の返還義務を負う)
  • 交付期間終了後、交付期間と同期間以上、営農を継続をしなかった場合は返還対象
  • 実施要綱の規定により、当該資金の交付を停止され、一部又は全部を返還することについて異議がないこと、その際には、既に交付を受けた資金の一部又は全部を返還することを(保証人の署名を添えて)誓約する必要がある

以上のように厳しい返還規定があり、交付期間終了後、交付期間と同期間以上、営農を継続をしなかった場合は返還の対象(一部か全部かはケースバイケース)となることから、きちんと農業を続ける固い意志と、着実な農業計画、利益の出る農業経営の実践を行っていく必要があると言えます。