短期サイクルでみる売上管理・月次決算

売り上げ・利益は書類上は黒字なのに、手元の現預金がないため黒字倒産になる事態を回避するには?キーワードは、「先払い・毎月のキャッシュフローの見える化」

 

経営を考える上で忘れてはならないのは、「帳簿上の黒字=手元の現預金が黒字というわけではない」ということです。

 

いかに売り上げが上がっていても、手元の現預金が足りず、支払いや金融機関などへの返済ができなければ、企業としてはアウト、つまり黒字倒産になってしまいます。

 

(黒字倒産を端的にいうと、帳簿上では利益が出ているのに、手元の預金通帳からはお金がなくなり、支払いができない状態)

 

 

新聞や信用調査会社の記事では、4割から5割近くが黒字倒産という事例も書かれており、黒字倒産がいかに多く、そして経営の落とし穴であるかというのがおわかりいただけるかと思います。

 

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なぜ黒字なのに倒産するの?

 

経営をこれから学ぶ方などにとっては、「なぜ黒字なのに倒産ということが起こってしまうの?」

 

という素朴な疑問が出てくるかもしれません。

 

売り上げとして計上できるのは、取引を行ったり、出荷したり、サービスを引き渡したり、請求書を出した時点です。

 

ですが、「売上が上がっている=お金が入ってくる」という状態ではありません。

 

ここから請求書を相手が受け取り、請求書通りに取引先が支払いを行った時点で初めてお金が入ってくるのです。

 

そして、BtoB、つまり法人対法人の取引、BtoC、法人対個人の取引両方において、出した請求書通りのお金が入ってくるケースと、そうでないケースがあるのです。

 

それでも、BtoCは、顧客の先払い、現金商売、代金引換、分割の場合でも信販会社の保証サービスなど、確実に回収を行いやすい点があります。

 

一方BtoBの場合、以前より友好的な取引がある場合はよいですが、新規取引先や、既存取引先でも何らかの事情で請求書通りのお金が入ってこなかったり、支払いサイクルが先方の都合・事情で予定より延びたり、現金の代わりに手形での支払いを提案されたり、取引先が破綻して回収ができず・・・ということも起こりえます。

 

成果物の納品・検収と売り上げの全額入金があって初めて取引は完了する

 

極端な仮定ですが、普段30万、50万の案件を請け負っている会社に、1,000万円の案件の受注があったとします。

 

単純に数字だけ見れば1,000万円の売り上げとなりますが、1,000万円分の価値がある案件は、複雑度も増し、通常の30万、50万の案件とは難易度も大きく異なります。

 

そのため、様々な準備の費用や人材の割り当て、外注先の確保など、先に出ていくキャッシュも大きくなります。

 

ここで、開発が問題なく終了し、成果物を納品、先方が検収し、費用全額の支払いを行うという流れが全てスムーズにいけば問題はありません。

 

しかし、下記の図のように、プロジェクトがスムースに行く場合と行かない場合があります。

案件受注

 

そして問題は、先払いや前金などの契約にしていない限り、業務に着手、完了し検収されるまでの期間がかかることです。さらにその後に顧客先の支払いサイトによる期間が生じること、時には顧客からの納品後の値引き要請や支払いサイト延長要請、手形による支払い、不払い、倒産など、現金での回収を想定していたはずなのに、イレギュラーな事態が起こることもあります。

 

このように、高額案件だからこそ、リスクの部分も注意して受けることが重要になってきます。

 

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黒字倒産リスクの回避のために、どのように対策をすればいいのか?

 

黒字倒産のリスクを回避するには、下記の点に留意するのが重要です。

 

  • 月次決算、できればリアルタイムで売上・費用・現預金を把握する

 

毎月これだけの売上があり、固定費・変動費の支出があるというのを把握し、大きな仕事を受けるだけのリソース・余裕が社内にあるかをしっかり検討しないと、「大きな仕事を取ってきた→でも完了できなかったり、完了・納品したのに全額の売上を回収できなかった・・・」では完全にマイナスで、経営に大きな影響が出るケースもあります。

 

経営者の方はどうしても忙しいため、経理や財務は税理士・経理担当者にお任せとなってしまうのもわかります。ですが、できれば自計化(自社で会計・経理を行い、税理士の先生に確認していただく)を図ること、そしてよりよいのは、CRM(顧客管理システム)と売上・請求管理が連動し、リアルタイムで売上や費用などを見える化できるソフトウェア・クラウドサービスもありますので、このようなソフトウェア・サービスの活用もぜひ検討すると良いでしょう。

 

  • 大型契約こそ、できるだけ「入金をもって発注とする」全額前払いや分割払い、一部着手金を依頼する。また、契約書の内容に注意する。

 

金額が大きい契約になると、営業担当者としてはすぐに飛びつきたくなります。しかし、受注・納品・検収を経て、代金の回収まで行って初めて、会社に現預金が入ってくることを忘れてはいけません。

 

いくら大きい金額の契約を成約しても、予定の金額が支払われなかったり、値切られたり、回収まで期間がかかってしまっては、会社の利益になりません。

 

もちろん簡単にはいかない面もあることは承知の上ですが、それでも大きな契約だからこそ、相手にもメリットのある提案をし、「入金をもって発注とする」形の前払い、着手金など現金受領のサイクルを一部でもいいから早めることで、キャッシュフローが改善され、黒字倒産のリスクを減らすことができます。

 

また、取引で契約書を締結する場合、当然ですが契約書を作成した側にとって有利な内容となっています。そのため、自社の契約書を整備したり、相手方の契約書を受け入れる場合は、不利な点がないか、契約書の内容に交渉の余地はないか、また場合や金額・規模によっては弁護士のリーガルチェックを入れることも考慮した方がよいでしょう。

 

 

 

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黒字倒産防止=手元の現預金確保・先払いなど安定したビジネスを作る

 

以上、黒字倒産を防ぐための考え方について説明しました。

 

改めて復習すると、

 

  • 大きな仕事を受けるときは、リソース・手元資金・支払いサイト・契約書など様々な点に注意する
  • 売上を挙げても現預金がなければ黒字倒産する。キャッシュイズキング。
  • 業務受託など、毎月安定した売上・現金収入が得られ、さらに顧客と関係を深めることができる方法を考え、実行する

 

上記の点に留意して、ぜひ黒字倒産のないよう、手元のキャッシュに配慮した経営を行ってください。

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