新型コロナで個人・事業主がローンの返済が厳しくなった場合の減免制度・「債務整理によるガイドライン特則」、制度利用の現状は?(2021/10/18)

2020年年初に発生し、現在も収まりが付かない状況の新型コロナ禍により、2年近くにわたり、様々な業界へ影響が続く状態です。

新型コロナウイルスの直接的・間接的な影響で、収入などに影響があり、住宅ローンの返済が厳しくなった方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方にとって、「財産も一部残せて、(場合によっては住宅・車も残せる可能性もある)返済負担が軽くなる、残りの債務の返済がなくなる可能性がある」という「自然災害による被災者の債務整理によるガイドライン特則」という制度が2020年12月1日からスタートしました。

(正式名称は、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」

制度が始まりもうすぐ一年になりますが、適用実態はどのようになっているでしょうか。

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  1. 新型コロナウイルス特則、調停の成立数は・・・
  2. 「自然災害による被災者の債務整理によるガイドライン特則」のメリット・注意点は?
  3. 住宅ローン等各種ローンを返すのが厳しい場合の、「コロナ版ローン減免制度」(自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則)の概要
    1. 「コロナ版ローン減免制度」の対象は?
    2. 「コロナ版ローン減免制度」の対象になる債務は?
    3. 「コロナ版ローン減免制度」を使うと、どんないいことがあるの?
  4. ガイドラインを使った結果、これまでの借金はどうなるの?
    1. 収入弁済型(個人再生タイプ)
    2. 清算型(自己破産タイプ)
    3. 事業継続型(民事再生タイプ)
    4. 「コロナ版ローン減免制度」の大まかな流れ
    5. 「コロナ版ローン減免制度」の対象外になるケースは?
      1. 新型コロナウイルス感染症の影響により収入や売上げ等が減少したのが明らかでないケースの場合
      2. 財産状況・負債を債権者に対してきちんと開示しなかった場合
      3. 基準日(令和2年2月1日以前)に、対象債務について期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと
      4. 債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがない
      5. 連帯債務者がおり、連帯債務者と共同で申し込むことができない場合
      6. 関与する法人に、連帯債務などがある
      7. 債務者が事業者である場合は、事業再建の可能性があること
      8. 反社会的勢力であることや免責不許可事由が存在すること
    6. 「コロナ版ローン減免制度」・この場合はどうなの?というケース
      1. 「コロナ版ローン減免制度」と破産手続・民事再生手続は何が違うの?
      2. 新型コロナウイルスの影響はこれからも長期化しそうだけども、今後対象となる債務が拡大されることはあるの?
      3. 新型コロナウイルスの影響って、証明する必要があるの?あるとすればどうやって証明するの?
        1. 個人(給与所得者の場合)
        2. 個人事業主の場合
      4. 文章を見ていると、住宅ローンなど大きな債務がある人向けっぽいけれども、債務整理の対象となる借入が、自動車ローン・住宅リフォームローン・銀行や信販会社のカードローン・消費者金融借入のみの場合でも、特則の利用は可能なの?
      5. もし、申請中に住宅ローンが残っている家などを売却処分したり、申請直前や申請中に借入を起こした場合はどうなりますか?
      6. 個人事業主をしていて、ガイドラインを使いたいのですが、経営者としての責任を問われそうで怖いです
      7. 保証人(連帯保証人)に責任が及ばないというのは本当ですか?
      8. もし、大部分の債権者が調停に同意・同意見込みを示したけれども、1社だけが「うちは絶対同意しない!」という気持ち」と言った場合はどうなりますか?
      9. ガイドラインを使えば、お金は全部返さなくていいの?
      10. ガイドラインによる整理が完了すれば、いわゆる信用情報機関のブラックリストに載らなくてすみますか?
    7. 関連

新型コロナウイルス特則、調停の成立数は・・・

実際に運営機関の実績報告を見ると、新型コロナウイルス特則を用いた調停の成立数は2021年9月末現在、1,391 件の委嘱申立のうち15件とかなり限られています。

また、手続きが開始されたのが887件、特定調停の申立に至ったのが49 件と、まだ進んでいない案件が非常に多いというのが実情です。

制度自体の認知が進んでいないという事に加え、銀行側がリスケジューリングを提案する、見込みが立たない場合は自己破産、個人再生や、業者を用いた任意売却、自宅のリースバックを行う(自宅を売却し、その後家賃を払って住み続ける。買い戻すことも可能だが、相当の費用がかかる)など他の方法を取っていることも想定されます。

では「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」のメリット・注意点をまとめてみましょう。

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「自然災害による被災者の債務整理によるガイドライン特則」のメリット・注意点は?

東日本大震災が発生した時から、天災など影響で苦しい状況にある方に対し、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会という公的団体が、債務整理の支援に関する方向付けを行ってきました。

 

この手法を、近い形で新型コロナウイルスの影響があった個人・個人事業主にも適用できるようにしたのが、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則です。

メリットを端的に言うと、

  • 差押禁止財産に加え、財産の一部を手元に残せる
  • 信用情報 登録機関に登録されないので、その後の借入の可能性を残せる
  • 弁護士、不動産鑑定士など専門家の支援が無償で受けられる
  • 原則として保証人への請求がされない

注意点は、

  • 自己破産と異なり、債務の一部を返していく義務は残る可能性がある
  • 民事再生手続のような、返済金額の大きな圧縮(7割~8割カット)は望みにくい
  • どれぐらい債務が減額されるかは、完全に金融機関との話し合い次第
  • 返済が滞ると、信用情報機関に情報が登録される可能性がある
  • 制度の全体像が、各種資料ではわかりにくい点もある
  • 必ず、弁護士等の登録専門家に手続を依頼する必要がある(無料)
  • 主な金融機関をはじめ、全債権者の合意が必要(後述で、合意しない債権者がいない場合はどうなるかも記載)

など、一般の自己破産や個人再生よりも、ずっと有利な条件で、債務を減免してもらえる可能性があります。

今回、新型コロナウイルスの影響が自然災害と同等・それ以上に経済に甚大な影響を与えていることをふまえ、「新型コロナウイルスの場合も、この制度を適用できるようにしよう」ということで「コロナ版ローン減免制度」(自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則)という制度ができました。

かみくだいて、概要をまとめてみましょう。

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住宅ローン等各種ローンを返すのが厳しい場合の、「コロナ版ローン減免制度」(自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則)の概要

住宅ローン返済・各種ローン返済が難しくなった場合の救済策、「コロナ版ローン減免制度」(自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則)について深掘りしてみましょう。

 

「コロナ版ローン減免制度」の対象は?

新型コロナウィルスの影響で住宅ローン・その他マイカーローン・カードローン・リフォームローン・個人事業の債務の他各種債務の返済が難しくなった「個人」と「個人事業主」が対象です。

 

「コロナ版ローン減免制度」の対象になる債務は?

令和2年2月1日以前に負担していた債務に加え、令和2年10月30日までに新型コロナ対応のために負担した債務も対象になります。

債務には、事業性ローン(ビジネスローン)・住宅ローン・その他のローンを幅広く含みます。

2020年10月31日以降に受けた貸付等による債務は、この制度による減免の対象にはなりません。

なお、金融機関と既に話を行い、返済条件を変更している場合でも、利用OKです。

 

「コロナ版ローン減免制度」を使うと、どんないいことがあるの?

  • 債務整理を開始できると、債権者からの督促や債務の返済義務は一旦止まります。
  • 自己破産のように、手元に現金の99万円+最低限のものしか残せないのではなく、財産の一部を手元に残せます。(具体額については、金融機関との話し合いによります)
  • 信用情報機関に、債務を整理した事実が載らない、いわゆる(本当は正しい言い方ではないですが)ブラックリストに載らずに済むため、自己破産や個人再生を行ったときのように、最低5年~10年以上のあらゆる借入・分割払いなどが難しくなるなどのデメリットがありません。
  • 整理手続には、弁護士や不動産鑑定士など専門家の支援が「必須」ですが、その費用が無償となります。なお、自己破産や個人再生の場合、一般的に少なくとも30万円以上の費用がかかるといわれています。
  • 原則、コロナ版ローン減免制度を用いた場合は、保証人への請求がされません。

上記のメリットがあります。

 

この制度に関しては、必ず弁護士など「登録支援専門家」の委嘱を受けた専門家の支援が必要です。

個人だけではできません。

 

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ガイドラインを使った結果、これまでの借金はどうなるの?

「コロナ版ローン減免制度」のガイドラインを活用して、借金が減らせる可能性があるのはわかった、でも具体的にどれくらい減るのか?

 

これが結構ややこしいです。

住宅金融支援機構の資料に、「自然災害による被災者の債務に関するガイドラインの概要」という記事がありますので、この記事をひもといてみましょう。

上記記事は、新型コロナウイルス発生前の記事ですが、現在の新型コロナウイルスにかかるガイドラインも、東日本大震災等自然災害対応のガイドラインをそのまま活用していますので、今回のケースにも適用できると推定されます。

 

再生方法には、

  • 収入弁済型(債務者の状況により一定額を返済するが、返済額は大きく減らす)
  • 清算型(財産の一部を手元に残し、債権者にローンを返済、不足分は免除)
  • 事業継続型(個人事業主が事業の再建計画に基づき、債権者にローンを返済、残りは免除

の3パターンがあります。

 

それぞれ詳しく見てみましょう。

収入弁済型(個人再生タイプ)

借りている人の収入や資産を考慮し、生活にかかる費用もふまえ、「どれくらい返済ができそうか」という弁済能力により、返済する金額を定め、大きく支払金額を減らしたローンを分割返済します。

期間・免除割合などはケースバイケースですが、返済が滞ると信用情報機関に情報が登録されます。

清算型(自己破産タイプ)

生活に必要な財産の一部を手元に残した上で、残りの部分で債務者にローンを返済、不足分は免除するという方法です。

手元に残せるケースは、状況次第ですが、上記住宅金融支援機構の資料では、手元に残せる財産として500万円を上限に定めています。

あくまで、上限が500万円ということで、実際はそれを下回ることも想定されます。

ただ、今後の返済はなくなり、しかも通常の自己破産や個人再生と異なり、信用情報機関に情報登録がされることがないため、通常の破産手続よりは、社会的なデメリットが少ないと言えます。

事業継続型(民事再生タイプ)

個人事業主で、事業を続ける場合、再建計画を作成し、債権者に減額した額を返済、残りは免除という形になります。

 

どのケースを活用する場合でも、「家・車などの財産を残せるかはケースバイケース」と言えます。

ただ、何もしないで延滞したり、自己破産を選択するよりは、「様々な意味」で、有利な形で債務を軽減することができます。

信用情報機関に情報登録もされず、官報にも登録されないため、下記のようなメリットがあります。

  • 自己破産や個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報が登録され、原則最低5年~10年借入ができなくなるが、ガイドライン活用なら免れる
  • 自己破産の場合、保険外交員・警備員・弁護士など士業等、一部の「破産者になると、その間(破産宣告を受け、免責許可が出るまで)の期間は、その仕事をできなくなるため、実質退職なり休業をせざるを得なくなるが、ガイドライン活用であればそれはない
  • 官報に掲載されないため、信用情報を重く扱う、金融機関など一部職種への転職が極めて厳しくなることがある
  • 自己破産や個人再生だと、最低30万円~それ以上がかかるが、ガイドライン活用の場合は弁護士費用無料、数千円+アルファの実費で整理ができる

 

なお、この「コロナ版ローン減免制度」(自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則)は、あくまで破産を防ぐための、「最終手段」として残されている物です。

 

各種補助金・助成金・給付金・保険金などや保有資産の条件もふまえ、「それでもどうしても無理!あとは自己破産や個人再生しかない」というケースにおいて「でもコロナの影響を受けたから仕方がないでしょう」というのが今回のガイドラインなのです。

 

なお、新型コロナウイルスときちんと因果関係があるということが前提で、関係がない場合は、弁護士に通常通り個人再生・自己破産を相談する必要があります。

 

新型コロナウイルスの影響が明らかにない職種・状況でガイドラインを活用しようとしても、「このケースの場合は厳しいですね・・」となることも考えられます。



「コロナ版ローン減免制度」の大まかな流れ

流れに関しては、「東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関」のページにかかれていますが、最小限の流れを説明します。

  1. 一番大きなローンを借りている金融機関へ、「コロナ版ローン減免制度」(自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則)を利用したい旨を申し出ます。心配な場合は、全国の弁護士会で相談ダイヤルを開設していますので、事前に「コロナ版ローン減免制度」(自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則)を利用したいが、金融機関に先に相談すべきか、弁護士にアドバイスを受けてから相談すべきかなどをきいてみるのも良いでしょう。
  2. 金融機関の同意が得られた後地元の弁護士会等を通して、自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関に対し、「登録支援専門家」による手続支援を依頼します。
  3. 債務整理を開始し、弁護士と申出書や財産目録などを作成・提出。債務整理申出後は、債務の返済や督促は一時停止となります。
  4. 金融機関等と協議し、債務整理の内容を盛り込んだ書類、いわゆる「調停条項案」を作成します。
  5. 「登録支援専門家」経由で、金融機関等へガイドラインに適合する「調停条項案」を提出・説明し、金融機関に1ヶ月以内に同意するかの返答を得ます。
  6. 債務整理の対象にしようとする全ての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てます(申立費用は債務者負担ですが、債権者1社当たり、申し立て手数料と予納郵便切手で1,000円程度です)※東京簡易裁判所 特定調停申し立てQ&Aより
  7. 特定調停手続により、調停条項が成立すると、債務整理が成立します。ただし、あくまで債権者との話し合いにより、返済額・返済条件を変更するのが主ですので、債務が全てなくなるとは限らない(なくならない可能性が高い)ことは、ご注意ください。

 

概要を説明した後は、より詳しい内容を見てみしょう。

 

まず、サイト内にある資料の、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」
を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」を見てみましょう。

 

「コロナ版ローン減免制度」の対象外になるケースは?

上記の資料では、コロナ版ローン減免制度の対象となるケースを具体的に書いています。

これを裏返すと、「この場合は対象外!」というケースが見えてきます。

 

新型コロナウイルス感染症の影響により収入や売上げ等が減少したのが明らかでないケースの場合

まず、新型コロナウィルス感染症の影響があり、収入が減少し、現在または将来において、「このまま返済条件を変更しない状況だと、確実に返済ができない」と確実に見込まれるものであることが必要になります。

財産状況・負債を債権者に対してきちんと開示しなかった場合

負債の申告漏れや、財産隠しなど、明らかにこれは問題でしょう、という場合は対象外です。

基準日(令和2年2月1日以前)に、対象債務について期限の利益喪失事由に該当する行為がなかったこと

新型コロナウイルスの問題が出始める前に、延滞を何ヶ月も起こして、「期限の利益の喪失」、つまり金融機関から「一括で返してください」と言われていた場合は、さすがにだめということですね。

ただ、対象債権者の同意がある場合はOKです。

債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがない

債務整理を行って、新しい返済計画をたてても、破産手続や民事再生よりも多くの額を債権者が回収できる見込みがない場合は、破産や民事再生をすることも視野に入る、という解釈ができます。

ただ、このガイドラインでは「住宅を手放すことなく、住宅ローン以外の債務の免除・減額を申し出ることができる」とあるため、実際に免除・減額のケースがどのようになるかは、申し出てみないとわからない所があります。

 

連帯債務者がおり、連帯債務者と共同で申し込むことができない場合

住宅ローンなどで配偶者や親族が連帯債務者となっている場合は、その連帯債務者と共同で申し込まないといけません。

 

関与する法人に、連帯債務などがある

法人の場合は、経営者保証ガイドラインなど別の形で解決を図る必要があります。

債務者が事業者である場合は、事業再建の可能性があること

特則では、

債務者が事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業に事業価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること。

という文言があります。

つまり、事業を再建・継続する気持ちと、事業に価値があること、そして債権者の支援により再建の可能性があること、という「条件を変更してくれれば今後再起できますよ」という前提がないと、個人事業者としてのガイドライン活用は難しいでしょう。

なお、事業を継続することが難しい場合は、M&Aという手段もあります。

法人だけでなく、個人事業でも価値が付く可能性はありますので、専門のサイトを活用してみるのもありでしょう。

なお、一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関では、ガイドラインの利用実績が書かれています。

その中では、平成28年度4月の運用開始から令和2年9月末までの集計として、

  • 委嘱件数 1,151件
  • 手続き中の件数 88件 (うち特定調停申し立てに至った件数 9件)
  • 特定調停の成立件数 520件

明確には書いてありませんが、手続き中でも、特定調停成立でもない543件、5割近くは調停が成立しなかったことが推測されます。

ガイドライン活用の前提が、「破産の見込み等に該当するレベル」であること、あるいはその他の様々な事情もあり、上記のように適用外となったケースも多いように推測されます。

ガイドラインが適用できない場合は、弁護士に通常通り個人再生・自己破産をすることが必要になります。

 

反社会的勢力であることや免責不許可事由が存在すること

これはまず当てはまるケースは少ないと思われますが、反社会的勢力に属している場合はNGです。

投機(ギャンブル・FXなど)で、一発逆転を狙って増やそうとする行為をしていた場合は、免責不許可事由に該当する可能性があります。

 

「コロナ版ローン減免制度」・この場合はどうなの?というケース

 

では、次に、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則 Q&Aをベースに、一般的にありそうな疑問をピックアップし、解説してみましょう。

 

「コロナ版ローン減免制度」と破産手続・民事再生手続は何が違うの?

Q&Aは少し複雑に書いてありますので、違う点をシンプルに、箇条書きにしてみましょう。

  • コロナ版ローン減免制度を利用した場合、信用情報機関に情報登録をされずにすみます。(いわゆるブラックリストには載りません)
  • 銀行など、対象債権者のどこか1社かから異議が出た場合、調停案に対し対象債権者の同意・同意見込みが得られない等の場合は、破産手続・民事再生手続(個人再生手続)を利用することになります。
  • ガイドラインを利用する(申請する)ためには、一番大きなお金を借りている金融機関に、「新型コロナウイルスの影響でどうしても厳しいので、「『自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン』新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」を使います」と直接申し出る必要があります。

新型コロナウイルスの影響はこれからも長期化しそうだけども、今後対象となる債務が拡大されることはあるの?

あくまで現在は、

「2020 年2月1日以前に負担していた既往債務」と「2020 年2月2日以降、本特則制定日(2020 年 10 月 30 日)までに新型コロナウイルス感染症の影響による収入や売上等の減少に対応することを主な目的として貸付け等を受けたことに起因する債務」に限定

しており、新型コロナウイルスの影響が長期化した場合でも、債務の対象を拡大する予定はないとされています。

新型コロナウイルスの影響って、証明する必要があるの?あるとすればどうやって証明するの?

新型コロナウイルスの影響に関しては、直接的なものであれ、間接的なものであれ、提出する必要があります。

例えば、直接的なものでは

  • 新型コロナウイルスにかかり失業したり給料が下がった
  • 新型コロナウイルスにかかり事業の継続が困難になったり、事業設備が利用できなくなった

などがあげられます。

間接的なものでは、

  • 勤め先が新型コロナウイルス感染症の影響により売上げが減少したことにより、失業、又は給料が下がった
  • 事業者については、緊急事態宣言による外出自粛やその後も続く外出自粛の傾向などにより客足が遠のくなどして自らの売上げが減少した
  • 取引先や顧客が新型コロナウイルス感染症の影響により売上げが減少
    した影響で自らの売上げも減少した

などのケースもあてはまります。

 

ただ、これは口頭だけでなく、文章で説明できるよう、書面をきちんと用意する必要があります。

 

個人(給与所得者の場合)
  1. 申出人の源泉徴収票、課税証明書(最近2年分)
  2. 収入の減少を証する書類(以下、例として)
    1 申出人の給与明細書、給与振込口座の預金通帳写など(最近3か月分、加えて給与減額時および通常時の比較ができる期間分)
    2 その他、減収になったことを確認できる資料(解雇通知書、離職票、失業保険の申請書、勤務先の倒産を確認できる資料等)
  3. 2020 年2月1日時点の全ての借入の返済額が分かる資料(返済予定表等)
個人事業主の場合
  1. 申出人の確定申告書(最近2年分)
  2. 収入の減少を証する書類(以下例として)
    1 売上台帳、現金出納帳、預金通帳写等(新型コロナウイルス感染症の影響による収入の減少を説明できる期間分)
    2 新型コロナウイルス感染症の影響による収入や売上げ等の減少に対応することを主な目的として貸付け等を受けた際に申込書類として金融機関に提出した資料
    3 その他、減収になったことを確認できる資料(新型コロナウイルス感染症に関する持続化給付金に関する交付決定通知書等)
  3. 2020 年2月1日時点の全ての借入の返済額が分かる資料(返済予定表等)

それぞれ、上記の書類は必ず必要になります。

文章を見ていると、住宅ローンなど大きな債務がある人向けっぽいけれども、債務整理の対象となる借入が、自動車ローン・住宅リフォームローン・銀行や信販会社のカードローン・消費者金融借入のみの場合でも、特則の利用は可能なの?

債務整理の対象となる借入が、上記のように住宅ローン以外の場合でも、特則の利用は可能です。

ただし、破産手続における免責不許可事由にあたる事実がある場合は、対象外となることもあります。

 

もし、申請中に住宅ローンが残っている家などを売却処分したり、申請直前や申請中に借入を起こした場合はどうなりますか?

主たる金融機関の考え次第ですが、高い確率で「話が違うだろ!」となり、ガイドラインの適用はできなくなる可能性が出てきます。(よって自己破産や個人再生など、通常の法的手続に移行する可能性)

そのため、ガイドラインを利用する場合は、絶対に、勝手にローンが残っている物を処分したり、新たに借入をしてはいけません。

 

個人事業主をしていて、ガイドラインを使いたいのですが、経営者としての責任を問われそうで怖いです

個人事業主が、このガイドラインを利用した場合でも、新型コロナウイルスというある意味不可抗力が原因で、一概に経営者に責任があるということは言えないとガイドラインにも書いてありますので、経営者責任は求められません。

ですので、その点については安心してください。

変に延滞を起こしたり、無理なところから借りるのではなく、ガイドラインを活用してください。

 

保証人(連帯保証人)に責任が及ばないというのは本当ですか?

ガイドラインのQ&Aでは、「基本的には保証人には及ばないが、必ずしも全てではない」ということが推定されます。

ガイドラインでは、『「保証履行を求めることが相当と認められる場合』を除き、保証履行を求めない』こととされているため、保証履行を求めない場合には、対象債権者と保証人との間で保証契約の解除又は保証債務の免除が行われるものと考えられます。

とあるため、「保証履行を求めることが相当と認められる場合」に当てはまってしまった場合は、保証人(連帯保証人)に及ぶことも考えられます。

 

もし、大部分の債権者が調停に同意・同意見込みを示したけれども、1社だけが「うちは絶対同意しない!」という気持ち」と言った場合はどうなりますか?

今回のガイドラインの場合、原則「全て」の債権者の同意・同意見込みが必要で、万一1社でも異議をとなえた場合は、特則に基づく債務整理手続は終了となります。

ただし、その債権者から借りたお金が少額であり、その債権者を除く調停条項案を作ったとしても、債権者間で、「この会社だけ減免がないのは不公平だ!」となるくらいの大きい債務でない場合は、救済の可能性があります。

 

その債権者を除外して、再度調停条項案を専門家が検討してくれるため、「一社が反対したから、もうガイドラインの利用はだめであとは破産手続・民事再生手続しかない」ということはありません。

ガイドラインを使えば、お金は全部返さなくていいの?

基本的には、民事再生手続で支払う額を超えるお金は支払う必要があると考えておく必要があります。

民事再生手続だと、下記の通りお金を支払う必要があります。

 

負債総額小規模個人再生の最低弁済額
100万円未満全額
100万円以上500万円未満100万円
500万円以上1,500万円未満負債の5分の1
1,500万円以上3,000万円未満300万円
3,000万円以上5,000万円未満負債の10分1

 

このように、個人再生だと、最大で負債の90%がカットされることになります。

 

ただ実際、返済額がどうなるかは、実際に手続をしてみないといくらの額になるか、どれくらい負担の割合が減るかはわからないというのが現状です。

 

一般社団法人 東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関に問い合わせた際も、「金融機関と認定専門家・相談者の話し合いによる合意に基づくため、実際の額については個別事案になる」という回答でした。

 

住宅資金貸付債権以外の債権の弁済期間は原則5年以内、住宅資金に関しては債権者との話し合いで、返済期間を決めます。

 

うちは店舗と住宅が一緒になったところに済んでいるけど、この場合は店舗・住宅を手放さずに済む住宅資金特別条項は使えるの?

以下の4つを全て満たす必要があります。

  1. 債務者が所有する建物であること
  2. 債務者が自分で住んでいる建物(自己の居住の用に供する建物)であること
  3. 建物の床面積の 2分の1 以上が自分たちが住んでいる場所であること
  4. 上記 の要件を充たす建物が複数ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主に住む建物であること

 

ガイドラインによる整理が完了すれば、いわゆる信用情報機関のブラックリストに載らなくてすみますか?

整理完了時は、「新型コロナウイルスによる影響があるから、債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報を、信用情報登録機関に報告、登録は行わない、となります。

しかし、 その後5年まで、もしくはそれ以上の期間で返済する弁済計画を履行できずに、延滞が生じると、「返済が遅れましたマーク」が、信用情報につけられることになります。

その延滞が長引くと、世間でいう「ブラックリスト」レベルの扱いで、様々な借入・クレジットカード作成・分割払いができなくなる可能性があります。

 

以上、ざっとまとめてみました。

なお、条件を変更して返済すること自体も厳しい場合は、自己破産を検討する必要も出てくるでしょう。



以上、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則に関して、Q&Aをふまえながらまとめました。

 

まずは、取引のある金融機関に電話か窓口で相談(可能な場合はメール)し、ガイドラインを利用したい旨を話してみましょう。

 

多くの金融機関では、ガイドラインの活用に関するチラシを用意したりと、対応する用意ができています。

 

忙しくても、まずは電話して、ガイドラインを活用したい旨を伝え、その後来店なり書類送付なりで、手続を進めることをおすすめします。

 

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