九州から本州に攻め上る、コスモス薬品の強みをIRと実際の店舗での購買で考察

昨日の記事で激安を否定した後でこういう記事を書くのも何ですが、近年九州から西日本、中部・東京まで進出しているコスモス薬品について今回は取り上げます。

 

コスモス薬品は、関東では比較的知名度が低いかもしれませんが、「ドンキをこざっぱりさせ、ドラッグストア・日用品に絞り、売場を横に長くしたイメージ」という例え方ができるかと思います。

 

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コスモス薬品の売上高は、5期で約1.5倍

 

経営の伸びに関しては、コスモス薬品のIRをご覧いただければわかると思いますが、このご時世で売上・店舗数・経常利益・当期純利益(当期純利益は一度若干の落ち込みあり)年々増加をしています。

 

売上高は、2015年5月の第33期で408,466百万円、2019年5月の第37期で、611,137百万円と、約1.5倍まで増加しています。

 

さらには、当期純利益に関しては、2015年5月の第33期11,694百万円から、2019年5月の第37期で19,185百万円という伸びを見せています。

 

完全に独立系のドラッグストアで、競合他社の吸収合併なしにここまで成長しているというケースは少ないかと思います。

 

北海道発祥のツルハドラッグが、全国各地の中堅ドラッグストアを買収し、そのままブランドを活用することによりグループ会社を全国に広げているのとは対照的です。

 

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コスモス薬品の今でも現金オンリー・ポイントなし・EDLPの割り切ったオペレーション

コスモス薬品は、

  • 電子マネー決済が普及した今でも、あくまで現金決済オンリー(レジの入出金は機械化)
  • ポイント制度はなしで、チラシで「ポイントよりも安さ」をうたう
  • オープンなど特別な時を除いては、EDLP(エプリデー・ロー・プライス)のスタンスで、365日安いをうたう

など、独自の考え方を保っています。

 

ポイントが好きという方も多いと思いますが、一方で、ポイントは面倒、ポイントカードを何枚も持ち歩きたくないとニーズはあると思いますので、ポイントなしというのも一つの割り切りでしょう。

 

また、電子マネー・クレカ決済をNGにすることで、日銭が即日入る体制のためキャッシュフローの良好化や、クレジットなどの利用手数料をカットするなど、この点もコストダウンに寄与していると言えましょう。

 

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店舗展開を同業者の間近ではあまり行わない

コンビニエンスストアなど一部の業態では、ライバル店のすぐ近くに店舗を出店するというケースが散見されますが、コスモス薬品の場合、同業種のドラッグストア店舗とは、近いということはあっても、間近でという店舗の置き方は見られません。

 

あくまで他業種も含め、競合する店舗とはできるだけ一定の距離は保っている様子が窺えます。

(ただ、市街地など密集地区では、近いことはあります)

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利益率の高い自社商品の積極的な推奨

コスモス薬品はプライベートブランドのON365や、その他コスモス薬品でしか取り扱わない製品なども多く取りそろえています。

 

店頭で迷っていて、どれがいいか・・・と相談すると、自社専売商品があるケースでは、積極的に自社専売商品を勧めてきます。

 

ある市販薬を買う際、手に取って悩んでいると「こちらの(自社専売商品)の方が価格も成分も多いですのでおすすめですよ」と、自社商品を推奨してきます。

 

また、レジでも、メジャーブランドの栄養ドリンクを買おうとすると、「(自社専売の栄養ドリンクの方が)安く成分もよいので、ぜひそれになさいませんか」と言ってくることも多いです。

 

このように、日販品を安価に提供する一方で、他社製品を、利益率が高く、かつ価格も安価で競争力のある商品にスイッチングさせることがとても上手だな、と感じています。

 

また、袋詰めは購入者が行いますが、詰め場へのかごの運びは従業員が行う、乳幼児連れの場合は袋詰め・車への運びも行うなどの配慮もあります。

 

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商圏を小商圏に限ったメガドラッグストアという戦い方

コスモス薬品の店舗は、地方都市でも数店舗存在し、「大規模店舗ほどの大きな品揃えはないけれども、日常に必要な物が安価に手に入る」という特徴があります。

 

コストコ・ドンキホーテなどのメガディスカウントとは違い、あくまで商圏をかなり絞っています。

コスモス薬品の企業戦略

コスモス薬品の企業戦略に目を通すと、

 

コスモス薬品は日本で初めて小商圏をターゲットとしたメガドラッグストアを多店舗展開するビジネスモデルを構築しました。小売業はいろいろな業種が入り乱れて大変激しい競合状況にありますが、足元の小さな商圏(商圏人口1万人)に限定すると競合は限られてきます。

小商圏での競合業態は、食品スーパー、小商圏型ディスカウントストア、コンビニエンスストア、500平米型ドラッグストア。

これらの競合に対抗する当社のメガドラッグストアは医薬品・化粧品のみならず日用雑貨、生鮮三品以外の食品等の日常の暮らしに必要な消耗品を満載した、 非常に便利が良い店舗となっています。現代人にとって最も重要なものは時間であり、時間の節約こそが消費者最大のニーズ。それを満たす新しいビジネスモデルが、『小商圏型メガドラッグストア』なのです。

という形で、時間の節約を強調、規模を商圏よりは大きめにすることで、「ここに行けば生活に必要な物がワンストップで安価に揃う」というイメージ作りに成功しています。

 

ランチェスター戦略を地で行くコスモス薬品

ランチェスター戦略に関しては、ご存じの方も多いかと思いますし、説明の詳細は省きますが、要素の一つが、

  • どんな小さな領域でもNo1をつくる

ということです。

コスモス薬品が、このランチェスター戦略を、実際のビジネスに落とし込んでいるのがうかがえるのが、下記の文です。

 

コスモス薬品が考える小商圏とは、商圏を自ら分割して他社の入り込む余地がない程の小さな商圏を意味します。その小商圏内で圧倒的なシェアを獲得することを目指しています。これからの小売業はこの小商圏でお客様の支持を得てこそ、真の勝者となるのです。

 

つまり、

  • 商圏を自社にとって勝ち筋のある場所に分割、店舗展開をする
  • その商圏内で圧倒的なシェアを得る(No1・勝者になる)

という点で、ともかく商圏トップを目指しているのです。

 

また、規模がそこまで大きくないということは、進出・移転もしやすい。加え、1店舗だけでは売り上げ上は見劣りしても、顧客の来客を高頻度にしたり、日持ちが限られる日販品(豆腐・牛乳など)を安価にすることで、ついで買いを起こし、顧客のLTV(ライフタイムバリュー・顧客生涯価値)を引き上げることができる。

 

小商圏(商圏人口1万人)に限定した出店戦略では個々の店舗の売上は見劣りしますが、近隣のお客様に足繁く、そして末永くご利用いただけることで永続的な繁栄が可能と考えます。

と、創業者の方や幹部の方は、ランチェスター戦略を地で行くような戦略を持っておられます。

 

EDLP実現・タイムセールや日替わり廃止の裏には?

コスモス薬品は、前述の通り九州発祥で、九州と言えば通販事業者の多さの他、「トライアル」「ダイレックス」「ミスターマックス」(他にも、ファミレスのジョイフルも有名ですね)など、ディスカウンターで九州発祥の事業者は多いです。

 

コスモス薬品の企業戦略では、

九州という日本で最もディスカウンターが多く、低価格戦争が一番激しい市場で当社が学びとったことは、 お客様との信頼関係が何よりも重要だという事です。 当社が日替わりや時間帯別の特売やポイントカードを廃止したのは、「おとり販売」はやめて毎日安い価格を継続させてこそ消費者からの「信用」を勝ち得ることができると考えたからです。

ごく短期間に限られた商品のみを安く売る販売方法では、忙しいお客様を満足させることはできません。だから、当社は「あの手この手の販促策」は一切行わず、様々な商品をいつでも安心の低価格で販売する「毎日安い(Everyday Low Price)」戦略を実施しているのです。

これにより、特売のための値札の張替えや無駄な陳列作業がなくなります。また、発注・納品に伴う作業も簡素化でき、物流も平準化することでサプライチェーン全体のオペレーションコストを低く抑えることができるのです。

 

 

としています。

 

無駄な作業をなくすことでコストを低くする、オペレーションをシンプルにする、決済手段を現金オンリーにするなど、様々な意味でコスモス薬品は割り切っているといえましょう。

 

以上、今回は関東ではまだなじみの薄いコスモス薬品について触れてみました。



 

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