昭和・平成を席巻した起業家・藤田田氏の著書「ユダヤの商法」を令和に読む

藤田田氏のユダヤの商法を令和に読む

 

今回もビジネスパーソン・経営者向けの書籍のレビューです。

 

数ヶ月前、新装版として復刊された、日本マクドナルド創業者の藤田田氏の「ユダヤの商法」という書籍。

403 Forbidden

 

KKベストセラーズは、最近アグレッシブで興味深い書籍(特に不動産系)をたくさん出してきています。

 

その中でも、以前から復刊が望まれていた「ユダヤの商法」は、時代を考えると少々違和感を感じる表現もあえてそのままに復刊し、前回紹介したバビロン大富豪の教えと異なったアプローチをとっており、どちらも「その方がよいと」という個人的印象です。

 

さて、「ユダヤの商法」で気になった部分をピックアップしていきます。

 

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ユダヤ商法の基礎になっている法則・『七八対二二の法則』

まず、数字のエピソードからピックアップします。

 

七八対二二、これは何の法則か。

 

この答えの前に、一つ引用します。

 

私が、最初に『七八対二二の法則』を持ち出したのは、ユダヤ商法には法則があるということが言いたかったためと、今ひとつは、この法則だけを取り上げても分かるように、ユダヤ人は数字に強いということを強調したかったからだ。 商売人が数字に強くなければならないのは当然のことだが、中でもユダヤ人の数字に対する強さは特筆すべきものがある。それほどにユダヤ人は、ふだんから生活の中へ数字を持ち込んで数字を生活の一部としているからだ。

 

この「七八対二二の法則」を、「正方形とその正方形に内接する円の関係」、「空気中の酸素・窒素の成分」、「人間・体の組成」について、それぞれ「七八対二二」、もしくはそれに近い形である都市、これが「七五対二五」、「六〇対四十」にはけしてなり得ない、とし、「七八対二二の法則」を「不変真理の法則」と述べています。

 

これがビジネスにどう関わりがあるかという部分で、

 

世の中には『金を貸したい人』が多いか、『金を借りたい人』が多いか、といえば、『貸したい人』の方が断然多い。一般には『借りたい人』の方が多いと思われているようであるが、事実は逆なのである。

サラリーマンでも、儲かる、となれば『貸す』という人が圧倒的に多いはずだ。マンション投資などのインチキ金融にひっかかる人が多いのも、『借りたい人』より『貸したい人』の方が多い何よりの証拠である。つまり、ユダヤ人的に言うならば『貸したい人』七八に対して『借りたい人』二二の割合でこの世は成り立っているのである。このように『金を貸したい人』と『借りたい人』の間にも、この『七八対二二』の法則は存在する

と、ビジネスその他にも、『七八対二二』の法則が適用できることを述べています。

 

そして、人口に対する資産分布についても、

 一般大衆にくらべて、金持ちは数こそ少ないが、その名の通り、金持ちが持っている金の方が圧倒的に多い。つまり、一般大衆が持っている金を二二とすれば、わずか二〇万人足らずの金持ちが持っている金は七八になる。つまり七八を相手に商売をした方が儲かる

としているのです。

 

リチャード・コッチ氏の著書で「人生を変える80対20の法則」という著名な書籍がありますが、これをより厳密に突き詰めると、『七八対二二』になるのかもしれません。

 

ただ、この時読んでいて「?」と思ったのが、マクドナルドは明らかに「資産家でない方」、78%をターゲットにしている。

 

一時は65円のハンバーガーを発売するなど、デフレの寵児とも呼ばれた。

 

ビジネスでは資産家を相手にすべきとしている一方、薄く広く儲けるマクドナルドをなぜ日本に誘致したのか?

 

ここの疑問を置きつつ、次に進みます。

 

詳しいエピソードは本書にありますが、藤田氏は、22%の富裕層を相手にした宝石など「ちょっとぜいたくな品」を販売し、あるデパートでは、「昭和45年当時」の価格で「1億2千万円、(現在の価値にしたらいくらでしょうか)」のダイヤモンドを売り上げるなど、大成功を収めます。

 

そして、

私が、最初に『七八対二二の法則』を持ち出したのは、ユダヤ商法には法則があるということが言いたかったためと、今ひとつは、この法則だけを取り上げても分かるように、ユダヤ人は数字に強いということを強調したかったからだ。 商売人が数字に強くなければならないのは当然のことだが、中でもユダヤ人の数字に対する強さは特筆すべきものがある。それほどにユダヤ人は、ふだんから生活の中へ数字を持ち込んで数字を生活の一部としているからだ。

 

と、あらゆる物を具体的な数値化する、生活の中へ数値を持ち込むことの大切さを強調しています。

 

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数字に強くなることが、儲けの基本

 

数字に馴れ、数字に強くなることが、ユダヤ商法の基礎であり、儲けの基本である。もしも、金儲けをしたい、という気持があるならふだんの生活の中へ数字を持ち込んで、数字に馴れ親しむことが大切である。

 

ユダヤ人は、必ず 鞄の中に対数計算尺を持っている。彼らは数字に対しては絶対の自信を持っているのだ。 ユダヤ商法には法則があり、数字に強くなることがユダヤ商法の第一歩である。 「原則(法則)をはずれたら、金儲けはできない。

 

と、ともかく数字の大切さを強調しています。

 

あわせて日本の特性として、「熱い」など数値化せず、現況を感覚的なもので言語化することを旨としています。

 

この、「数値化することを好まない日本の感覚」というのいうのは、現代でも相当残っていると言えましょう。

 

ただ、ビジネス・商売の領域と、公的の領域では、数値を持ち込むべきか否かの部分は異なり、数値目標の設定基準をどこに置くか、数字を持ち込むかどうかを取捨選択しなければいけない分野があるように感じるのも率直なところです。

 

あまりにも単純化した話ですが、「学校の数値目標で、いじめをゼロにする」となると、どのような事象であっても、「いじめではない」と報告することで数値上は0になります。

 

逆にこの場合は、生徒間の問題行動をきちんと表面化し、解決したことの方をポジティブに捉えるべきなのに、評価上は学校にとってマイナスになるため、隠蔽が行われるおそれもあるわけです。

 

「数値で評価すべき部分」と「数値評価を行う上で、基準を慎重に設定したり、評価基準としない部分」を仕分けることも、大切な要素と思えます。

 

とはいえ、数値をきちんと把握する、数に強くなることが重要であり、そのことを否定するわけではないことも申し添えます。

 

そして、「数字に馴れ、数字に強くなることが、ユダヤ商法の基礎であり、儲けの基本である。」ということも、改めて強調します。

 

この後、

  • 数字に強くなるという原則を絶対に忘れない
  • ユダヤ人のビジネスにおける地位の大きさ
  • お金の素性に綺麗、汚いはない(水商売などのお金を「きたない金」、コツコツ働いて不当に安く支払われた労賃は「きれいな金」などとしない)

など、藤田氏ならではの説が展開されます。

 

最後のお金の素性については、本当に日本人からするといろいろな意見があると思いますし、コツコツ地道に働いたお金、そしてそのようにして貯めることを尊び、逆にギャンブルなどの一攫千金を、「悪銭身につかず」などという風潮もあります。

 

これはある意味、価値観の問題であります。「ただ、藤田氏は、ユダヤの商法に忠実に従ったから結果として成功した」ということも一つの事実として踏まえる必要もあります。

(心情的には、日本人的考えの方に走ってしまうのですが・・・)

 

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22%の富裕層を相手にビジネスをしていた藤田田氏が、なぜ78%を相手にするマクドナルドというハンバーガービジネスを手がけたか

前項で、藤田田氏は、22%の層を相手にビジネスを行うことで、成功したエピソードを記しました。

 

なのに、なぜハンバーガーという、78%相手のビジネスを手がけたか。

 

「ユダヤ商法に商品はふたつしかない。それは女と口である」 私は二〇年近い貿易商生活の中で、ユダヤ人から何度、この言葉を聞かされたか分からない。ユダヤ人にいわせると、これは『ユダヤ商法四〇〇〇年の公理』なのだそうだ。しかも『公理であるから証明は不要』なのだ

 

この言い回しは、現代においては、なかなか表に出しにくい言い回しでしょう。

 

しかし、「口」、つまり、食べ物を扱うのは、人間は普通1日3食食べ、それを毎日続けることから、「絶対に需要がなくならないビジネス」であります。

 

ここの、「高級品」の藤田商店から「ハンバーガーの日本マクドナルド」を第二の商品として扱ったエピソードは本書に譲りますが、読むと、「なるほどそうか」と思わされる考え方です。

 

さらにこの後、

  • 英語は金儲けに必須であり、あわせて文化的背景を理解してこそビジネスは成り立つ
  • ユダヤ人は重要なことは、どんな場所でもメモを取る(記録する)、そして契約の曖昧さを許さない
  • ユダヤ人にとって契約の遵守は絶対
  • ユダヤ人は銀行預金すら信用せず、「現金主義」「現金取引」一本槍
  • 減らないということは、「損をしない」という思考
  • ビジネスで男性をターゲットにするのは、女性をターゲットにするより一〇倍難しい
  • 商人はソロバンだけはじいていればいいのではなく、ユダヤ人のようにあらゆる分野に精通することが人生の向上と商人としての的確な判断に繋がる

 

など、興味深いエピソードが多々詰め込まれています。

 

なお、マクドナルドのハンバーガーについては、以前より、「ハンバーガーを売ることそのものがビジネスではなく、不動産業・そして現在はフランチャイズ業が利益の源泉である」という意見もあります。

 

日本マクドナルドのIRで、直近の四半期決算を確認すると、直営店910店、フランチャイズ1,990店と、確かにフランチャイズの方が圧倒的に多くなっています。

 

元に戻すと、人間の細胞の概念、「見切り(ロスカット)」の考え方、会社が好調なときほど高く売るチャンスなど、畳みかけるように興味深いエピソードが示されます。

 

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ユダヤ人の「契約」に対する考え

その後非常に興味を持ったのが、ユダヤ人の「契約絶対遵守」の思考です。

 

ユダヤ人は〝契約の民〟といわれている。それだけに、ユダヤ商法の神髄は『契約』にある。ユダヤ人は、いったん契約したことはどんなことがあっても破らない。それだけに契約の相手方にも契約の履行は 厳しく迫る。契約には甘えもあいまいさも許さない

と、自他共に契約に対してとても厳格なのです。

 

ユダヤ人が契約を破らないのは、彼らが神と契約しているからである。神様と交わした約束であるから、破るわけにはいかないのだ。 「人間同士の契約も、神との契約同様、破ってはいけない」  ユダヤ人はそう言う。それだけに、債務不履行という言葉は、ユダヤ商人には存在しないし、相手の債務不履行に対しては、厳しく責任を追及し、容赦なく損害賠償の要求を(中略)

契約を「神との契約」と同一視するくらい、契約を徹底的に重視・遵守し、口約束、署名による契約問わず、決めたことは遵守、相手にも遵守を求め、債務不履行には損害賠償請求、その他厳しい措置が執られます。

 

実際、藤田氏が、明らかに損という状況下でも契約を守ったエピソードとして、ある製品の納期に間に合わない際、

 

それでも、私はあえて飛行機をチャーターした。ユダヤ人が支配しているアメリカンオイルと契約したからには、意地でも納期に間に合わせたかった。一度でも契約を破った相手を、ユダヤ人は絶対に信用しない。製品が遅れたのは私の責任ではないが、ユダヤ人は弁解は絶対に聞かない。彼らは常に「ノー・エクスプラネーション──説明無用」

と、いかなる事情があろうと契約の日時・数量・金額などは絶対厳守、守り切るとし、飛行機のチャーターまで行っているのです。

 

私はパンアメリカン航空のボーイング707をチャーターしたが、パンアメリカン(=通称パンナム)もチャッカリした会社で、一〇日前までに現金でチャーター代を払い込まないと飛行機をまわしてくれないのだ。しかも、羽田空港は過密状態のため、空港に滞在できる時間はわずか五時間だという。五時間経てば、積み荷の有無にかかわらず、羽田を飛び立ってしまうのだ。その時間に、三〇〇万本のナイフとフォークを積み込まなければならない。 チャーター機は八月三一日午後五時に羽田へ着き、午後十時にシカゴへ向けて飛び立つことが決まった。時差の関係で、八月三一日の午後一〇時に出発しても納期には間に合う。 幸いにも、私はこのチャーター機に、注文の品を無事に積み込むことができた

 

「私が飛行機をチャーターしてまで納期を守った」ことは、先方にも伝わった。これが日本であれば、大変な美談で、注文主の方が感激して飛行機代を持とうと言い出しかねないところだが、相手はユダヤ系の会社だ。(中略)

「間に合った。OKだ。飛行機をチャーターしたことは聞いた。グッド」

(中略)

二度にわたる飛行機のチャーターで私は大損をした。しかし、その飛行機代で、私は買えるはずのないユダヤ人の信用を買ったのである。 「あいつは約束を守る日本人だ」 そういう情報は、またたく間に世界各地のユダヤ人に伝わった。『銀座のユダヤ人』という言葉には(中略)約束を守る唯一人の商人」というニュアンスも多分に含まれているのである。 私のユダヤ商法は、ユダヤ人の信用を得るということからスタートした

と、納期が通常では間に合わない、しかも費用面で割に合わなくても、約束の履行には徹底的にコミットする、藤田氏の商人魂がうかがえるとともに、「このようにして藤田氏がユダヤ人の信頼を勝ち取っていったのか」ということがわかります。

 

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契約書を売買するファクター・そして税金に対するユダヤ人の考え方

 

また、契約書を売買するファクター、(日本でも、売掛金を買い取るファクタリングの概念は普及していますが)もユダヤの商法と本書では言われています。

 

ユダヤ商人は儲かるとあれば、自分の会社を商品として売り飛ばすほどであるから、神との約束の『契約書』も平気で売ってしまう。ユダヤ商法では、会社や契約書すらも『商品』なのである。信じがたいことだが、契約書を買い取ることを専門にしているユダヤ人もある。契約書を買い取って、契約を売り手に代わって遂行し、利益を稼ぐという商売である。もちろん、買い取る契約書は、信用できる商人がまとめた、安全なものに限られる。

 

ファクターは商売が早い。パッと斬り込んでくる。こちらも素早くソロバンをはじき、二割のマージンに納得すると権利を売る。ファクターはさっそく、契約書を手にニューヨークの靴商のもとへ飛び、 「ミスター・フジタの一切の権利は、今後は私にある」 と、宣言する。私は、キャッシュで二割のマージンを受け取り、ファクターは高級婦人靴でひと儲けするわけである。

このように、商機とみるや、ぱっと切り込み、ぱっと権利を買い取っていくわけです。

 

日本の昔ながらの商慣習とはかなり異なると言えましょう。

 

余談ですが、現在の日本では、契約書を買い取る、いわゆる「ファクタリング事業」は、既に企業間取引などで利用されています。

個人事業主向けだとこういうのや、




法人だと、売掛金を現金化する事業ですね。



 

また、契約の履行だけでなく、税金に対して、厳格な納税意識と、適切なルール内での節税意識を強く持っているのも特徴です。

 

迫害され続けてきたユダヤ人は、税金を払うという約束で、その国の国籍を与えられていると思っているのだ。税金に対しては厳正である。 そうはいってもむざむざ税金をとられっ放しにされるユダヤ人ではない。税金を払ってもちゃんと釣り合うような商売をする。つまり、利益計算をする時に、税金分をあらかじめ差し引いた利益をはじき、それで商売をするのである。

 

Time is Money、時は金なりを地で行くユダヤ人

クイズ・タイムショックという番組をご存じの方も多いでしょう。

1分間全問正解で100万円(全盛期は、2,000万円という時代もありましたが)というクイズ番組で、初期は、「タイムイズマネー、現代は時間との闘いです」というオープニングから始まっていましたが、ユダヤ人の場合、

 

ユダヤ商法の格言のひとつに『時を盗むな』という言葉がある。この格言は、すぐさま儲けにつながる格言というよりは、ユダヤ商法のエチケットを説いた格言といった方がいい。『時を盗むな』とは、一分一秒といえども他人の時間を盗んではならないことをいましめている言葉

 

「時は金なり」という考え方に徹底している彼らにとって、時間を盗まれることは彼らの商品を盗まれることであり、結局は彼らの金庫の中の金を盗まれることと同じこと

と、まさにタイムイズマネーを地で行く思考をしているのです。

 

  • ユダヤ商法では『不意の客は泥棒と思え』
  • アポなし訪問は、嫌われる
  • 無駄な時節のあいさつなどは不要

とし、

面会のアポイントメントを申し込んで、面会時間を三〇分から一〇分間に短縮された時は、相手の三〇分を費やすには価しない、せいぜい一〇分間に見合う程度の用件を持ち込んだのだな、と自戒すべき

ともしているのです。

 

また、「ディテクテイト」という概念を大切にし、「ディテクテイト」の時間は業務・意思決定に集中、一切の邪魔を許さないとし、

 

ユダヤ人が『ディクテイト』の時間を大切にするのは、彼らが、即刻即決をモットーとし、前日の仕事を持ち越すことを恥辱と思っているからである。 有能なユダヤ人の机の上には『未決』の書類はない。その人間が有能であるかどうかは机の上を見れば分かるといわれているのもそのため

としています。

 

高く売るために消費者を「教育」する

ここも読んでいて「見事」と思うほかなかったのですが、ユダヤの商法の場合、商品を高く売るため、商品の価値を高めてみせるための「教育」が見事です。

 

日本の場合、「いい物を造れば売れる」思考はまだまだありますが、「だからといってアピールするのは恥ずかしい」という思考を持つ人も少なくないかもしれません。

 

本書のエピソードでは、

ユダヤ商人は、ある品物を高く売ることについて、あらゆる資料を用いて、高く売ることがいかに正当であることかを説明しようとする。統計資料、パンフレット──ありとあらゆるものが、高く売るために活用される。私の事務所にも、ユダヤ人が毎日のように送りつけてくるそうした資料が山ほどある。 ユダヤ人はそうやって資料を送っておいてから、 「送ってあげた資料で、消費者を教育しなさい」 という。そして、絶対に、 「まけましょう」とは言わないのである。

彼らは「商品に自信があるからまけないのだ」という。「日本人は商品に自信がないからまけるのだろう」ともいう。ユダヤ商人の「まけるくらいなら売らない」という気持は、自分の取り扱う商品に対する大変な自信に裏打ちされているのである。いい商品だからまけない。まけないから利益が大きい。ユダヤ商法が儲かる秘密もここにある。

と、商品を、割引、負けることをNGとしています。

さらに、大阪の薄利多売、値引き上等の商法に対し、大阪とユダヤの歴史を比較し、現代ではそぐわない文言で大阪商法を否定しています。(そのため、直接の引用はしません)

 

あわせて、「安売り商法は死のレース」と称し、

 

同業者同士で薄利多売競争をして、両方がポシャッてしまうということはよくある。よその店より 少しでも安くして、少しでも多く売ろうという気持は分かるが、少しでも安く売ろうと考える前に、 なぜ、少しでも厚利を得ようと考えないのだろうか。

とも記しています。

 

なぜ復刊元が、当時の表現をあえてそのまま残したがわかる、藤田節の炸裂

そしてこの後の記述は、現代において、賛否両論を呼びそうな記述もありますが、要点化、引用で興味深い部分をピックアップしていきます。

 

ある商品を流行させるには、コツがある。流行には、金持ちの間ではやり出すものと、大衆の中から起こってくる流行の二つがある。

金持ちの間に流行させる商品は、なんといっても高級舶来品が一番である。日本人が舶来品に弱いことは、通訳時代の経験から、いやというほど知っている。金持ちになればなるほど、舶来品コンプレックスは根強い。 品質はむしろ国産品の方がよいと分かっていても、日本人は倍以上も高い金を払って舶来品を買おうとする。つまり、我々が高い正札をぶらさげていても、日本人は喜んで買ってくれる。

外国では一〇〇〇円で買えるものが、日本へ持ち帰れば一〇〇万円の値段をつけても売れることすらある。その品物に稀少価値があればあるほど、利幅は大きい。そういった品物を安く輸入して、高く売りさばくのが、すぐれた輸入商であり、また、反対に、外国へ持ち出せば稀少価値のあるものを高い値段で外国へ売りつけるのが、腕の立つ貿易商

 

そこには一つひとつの品物に、長い歴史の重みが加わっているのだ。 その何百年、あるいは何千年の歴史の重み、人智の結晶が作り出すみごとな製品。 それが高い値をつけても人々に受け入れられる今ひとつの理由である。 輸入商は古い文明と新しい文明の落差に値段をつけ、文明の落差が生むエネルギーを利益にして商売をしているといってもいい。

 

と、当初発刊当時から、「稀少価値」「歴史の重み」「文明の落差を価値に変換する」という概念を重んじているのです。

 

また、

  • ユダヤ人は晩餐を大切にすること
  • 戦争と宗教と仕事に関する話はタブー
  • 価値観の基準はお金
  • 学問や知識がどんなに優れていても、貧乏であれば軽蔑され、下等視される
  • 人間は合理的で快適な生活を送るべきだ、という彼らの人生哲学
  • ユダヤ商法にとっては、合法的であり、かつ、人を泣かせたり、いじめたりするのが目的でなければ、金をあくどく儲けることは、なんら非難されるべき行為ではなく、正当な商行為

 

ここまででも、いろいろな意味で凄いという価値観ですが、

 

「ミスター・フジタ。ヒマのない人間はお金儲けなんかできません。商人は金を作ろうと思ったら、まずヒマを作らなくてはダメです」

 

私に言わせるならば、頭さえ使えば、金の儲かることはゴロゴロころがっている。 儲かるタネはいくらでもある。ザクザクある。 それなのに金儲けのできないヤツは、アホで低能で、救い難いヤツ

 

法律なんてものは、どうせ人間の作るものだ。ユダヤ式に言えば、六〇点すれすれで合格したような不完全な法律ばかりである。そこへ着目しなくちゃならん。 法律の欠陥や法律の隙間には、キャッシュがぎっしり 詰まっているものと思え。

(具体的な例はあえて示しませんが、皆さんにもあれこれ浮かぶと思います)

 

日本人は契約を交わしたあとも、相手を信じようとしないが、ユダヤ人は契約を交わしたら相手を全面的に信頼する。それだけに、契約が破られ、信頼が裏切られた時は、決して、マアマアでは済まされない。

日本でも。契約文化はある程度定着してきましたが、ユダヤ人の世界に比べるとまだまだかと思います。

 

ユダヤ人は、週五日制である。 週五日制で彼らは儲けている。相手が週五日制だから、私の会社も週五日制に踏み切って、すでに長い。 向こうが週五日働くなら、こっちは六日フルに働く、というのは間違っている。 五日制には五日制で対抗すべきである。外国は五日制でもこっちは六日制だ──これでは外国相手に商売なんかできない。五日働いてペイしないような商売なら、さっさとヤメた方が賢明

 

また、イデオロギーなど無用の長物、「買いと売り」、どちらが利幅が大きいか、既成概念、タルムードなど、他にも引用・紹介したい部分は多くありますが、そこはぜひ本書をお読みください。

 

最後に、なぜ、今この書籍が復刊されたかについて、背景が記されております。

 

藤田作品を「なぜ、今、このタイミング」で復刊するのか。その理由とは、多くの日本人にとって日々暮らす社会環境が劇的に変化し、非常に厳しい時代を迎えたからです。そして、この時代を稼いで勝ち抜くための「答え」が藤田田の《商法》の中にいまだ色あせることなく豊かに「ある」からです。現在、中小、大企業を問わず「正社員としての終身雇用」が難しくなっております。特に就職氷河期世代の 40 代以下の若者にとっては、人生設計そのものを一から立て直さねばなりません。利益を生み出す「ビジネス」自体を自分の頭で考え、切り開き、その資金も自分で調達する必要に迫られているのです。ゆえに藤田が著書の中で繰り返し述べる「商売のアイデアを見つける力」、「それをすぐに実行する力」が、今、まさに求められているのです。

20代、 30 代のみなさんにはまだ人生で成功するために準備する「時間」があります。金持ちへの「夢」、ビジネスで世界を変える「希望」があれば、藤田の言葉の中から必ず《成功のヒント》を見つけ出せると思います。みなさん、どうか1回目はサラッと通読し、2回目はじっくりと精読、3回目は自分の言葉に引き直して血肉化し、4回目以降は仕事で悩み迷った時に再び参照してください。

という記述があります。

(また、あとがきに藤田氏ならではのユーモアが込められています。これもぜひ直接本書をお読みください)

 

この書籍は、担当者としても最初読んだときは、「時代がかかっているな」「当時このような発想をできたということはすごい」という感想で、2回、3回と繰り返し目を通すうちに、「契約(ビジネス上の約束)の重要性」「薄利多売に陥らないこと」などに加え、

 

藤田氏・ユダヤ人がここまで合理的な仕方をしている中、「今までの経営の延長線上にある日本式では、もう沈むほかないよね」という気持ちさえ持ちました。

 

そしてベンチャー企業など柔軟な思考ができる企業から変わっていっています。

 

人によって様々な意味で読後感が異なり、持つ印象も異なるでしょうが、今の時代だからこそ「藤田氏の考え」「ユダヤの商法」に触れて、その価値観を尊重するということは大切ではないでしょうか。

 

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