withコロナのヒント 冨山和彦著「コロナショック・サバイバル」

文藝春秋社より出版された、株式会社 経営共創基盤代表取締役の冨山和彦氏による、「コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画」という書籍が興味深い内容でしたので紹介します。

 

タイトルに抵抗感がある向きもあるかもしれません。

 

ただ、全体を通して読むと、今後の将来におけるヒントが詰まっており、ぜひ企業の経営者層、ビジネスパーソンなどポジションを問わず目を通す価値がある良書と感じます。

 

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コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画のサマリーと価値

まず、「コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画」に関して、サマリーを箇条書きで提示します。

  • 日本のGDPの7割を占めるL型(ローカル産業)の壊滅・大企業・金融への波及をいかに防ぐか
  • 企業として、手元キャッシュをいかに確保するかの対処法
  • 今企業・個人が注力すべきポイントは何か
  • 経営リーダーはどうあるべきか
  • 諸外国との今後の関わり

など、withコロナ・afterコロナを見据えた提言が多くなされています。

 

では、本書中で特に気になった点をピックアップしていき、ローカルビジネス・スモールビジネスにも応用できる点が多くありますので、参考になる点をピックアップしていきます。

 

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コロナショックはリーマンショックの比ではない

既にいろいろなところで、コロナショックの影響の大きさが伝えられています。

読売新聞の記事では、

戦後最悪水準の14・7%…就業者2050万人減

 

リーマン・ショック後のピークだった2009年10月(10・0%)や石油危機後に景気が低迷した1982年12月(10・8%)を上回った。比較可能な48年以降では戦後最悪の水準だ。年ベースでは世界大恐慌時の33年に24・9%に達したことがあり、雇用情勢の深刻さは当時以来となる。

 

としており、緊急事態宣言が全国的に解除された5月25日以降も、日本の経済に大きな影を落としています。

 

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一度経済を止めると、恐ろしい状態になることが明らかになった

一連の緊急事態宣言・また多業種に影響を与える「新しい生活様式」のため、様々な産業が打撃を現在進行形で受け続けています。

 

今回、実際に様々な経済活動にストップがかかったため、いろいろな事業の経営悪化・場合によっては民事再生・法人破産などの実例や、サービス業などに従事する人や派遣社員・フリーターの生活破綻など、法人。個人問わず甚大な影響を受けている現状があります。

 

この危機に立ち向かうには、企業は「企業の変革と融資など公的な企業支援」、個人は「新しい業界、ニーズがある業界への移動と給付金等の公的な支援が不可欠」と思います。

 

改めて「コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画」を読むと、

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)よりCX(コーポレートトランスフォーメーション)
  • 「破壊の時代を生きている」という認識の重要性
  • リーマンショック時になかった日本経済の8割を占めるローカル経済圏の被害をどう回復させるか

などが書かれています。

なお、担当者個人としては、大企業・中堅企業のように、いろんな意味でCXに踏み込める体制がある会社と、CXを考えると止まってしまうから、まず身近なところでDX、つまりデジタルへの変化、具体的には紙書類・FAX、ハンコ、契約書などをデジタルに移行することから始め、その後で必要に応じてCXを検討した方がいいケースもあるように思うことは、予め記しておきます。

 

コロナショックが経済圏に与えた打撃

リーマンショックと違い、コロナショックはあらゆるレイヤーに対しダメージを与えています。

 

本書の要点をピックアップしてみましょう。

 

今回の経済収縮の原因と現在の日本と世界の経済構造からみて、危機の深刻化、重篤化は、前回のリーマンショックとは違う形で、より広い産業と地域を、より長期にわたって巻き込んで(中略)

 

 

時間軸的にはL(ローカル)な経済圏の中堅・中小のサービス業が打撃を受け、次にG(グローバル)な経済圏の世界展開している大企業とその関連の中小下請け企業へと経済収縮の大波が襲っている。この段階での衝撃を受け損ねると、次は金融システムが傷んで今度は金融危機のF(ファイナンシャルクライシス)の大波(中略)

 

つまり、リーマンショック時と違い、金融セクターからではなく、いきなり地域・ローカルな経済圏がダメージを受けている状況です。

 

こうしたL型産業群は今やわが国のGDPの約7割を占める基幹産業群である。しかもその多くが中堅、中小企業によって担われており、非正規社員やフリーターの多い産業でもある。今や日本の勤労者の約8割は中小企業の従業員または非正規雇用(裏返して言うといわゆる大企業、大組織の正社員は全体の2割くらいしかいない)が占めており、ローカルなサービス産業の危機は非常に多くの、しかも弱い企業や労働者とその家族を厳しい状況に追い込むメガクライシス(中略)

現在の産業構造で、GDPの7割がローカル産業に頼り、しかも従事する層は非正規社員・フリーターが多い。

 

そうなると、必然的にGDPへの打撃と、ローカル産業で働く層への打撃となり、消費の冷え込みどころか、人を切らざるを得ないなど問題が発生する訳です。

 

まずは人の生命を守るために感染拡大の抑制が優先されるべきことは当然だが、8割の国民の生活と人生に直結するローカル経済圏がここまで大きく傷むことは、リーマンショックの時にはなかった。そして、今回のコロナショックでシステムとしてのローカル経済圏が壊れてしまう、具体的には無秩序に大量の倒産や廃業が起き、大量の失業者が生まれ放置され、産業構造自体が壊れてしまった場合、その打撃は大きく、深く、再生・回復に長期間を要することになるだろう

ここは本書全体の提言も含め、是非書籍でもご覧いただきたいのですが、

「いっぺん壊れたら当分戻らないよ」

ということなのです。

 

当サイトでは、

中小最大200万、個人事業・フリーランス最大100万の持続化給付金の申請始まるもトラブル・課題も発生。コールセンターにも聞いてみた

10万円の特別定額給付金オンライン申請における手続き手順・注意点まとめ(パソコン版)

持続化給付金の不正受給には罰則(別のコロナ関連融資では逮捕事例も!)と受給額の約1.2倍返し!不正受給の内部通報も受付

新型コロナウイルス経営者向け相談窓口ー中小企業庁・日本政策金融公庫・商工会・商工中金・信用保証協会・よろず支援の窓口まとめ

など、各種支援策をまとめてきたわけですが、これも「まずは企業・個人が生き残ろう」というところが強くあります。

 

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社会が不安定なときに、積極的に消費できるか?

今回、5月の1人10万の特別定額給付金についても、バラマキという意見など、賛否両論あります。

 

また、国民が今後「またもらえるかも」という受け身の体勢になってしまうのは問題です。

 

それでも、国が「お金を給付するから使って下さい」というアナウンスをしたのは、消費活動を再活性化する呼びかけとしては有効なものだったと感じます。

スーパーの贈答用ぶどう祭りが大盛況、そして並んでいる人はほとんどお年寄り。なぜ?

また、本書の要点を引用すると、

将来に大きな不安を持った時、ましてや自分の生命や生活がリアルにおびやかされている時に、人はわざわざ高価な耐久消費財は買わない。もともと耐久消費財の需要のほとんどは買い替え需要である。二年や三年、今使っているもので我慢すればすむ。高いものから順に、すなわち自動車や住宅関連、次に電機製品、さらには衣料品という順番で猛烈な買い控えが起きる

 

外出できないからではなく、将来へのシリアスな不安があるから買わないのだから。

 

この将来へのシリアスな不安をいかに取り除いていくかが、今後消費を再活性するためにも大切なことかと思います。

 

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ローカルもダメージを受けたが、グローバルのダメージも致命的である

ローカル産業だけでなく、これまで花形であった航空産業・インバウンド型のホテル、IRなどの統合型リゾート型施設も相当なダメージを受けています。

 

マリーナ・ベイ・サンズなどIR型施設を運営しているラスベガス・サンズ社は、ブルームバーグのニュースによると、日本のIRなどの事業からの撤退を決めました。

撤退の原因には、法整備の問題もありましたが、

IR整備法の一部条件に経営幹部が不満を示していた。

特に大きな障害となったのは、ライセンスの有効期間が10年と短く、その期間内ですら日本の中央官庁や地方自治体が参入企業の利益を損なうような形で条件を変える可能性があることだった。ラスベガス・サンズがマカオとシンガポールに有するカジノリゾートのライセンスはそれぞれ20年、30年有効だ。

 

複数の関係者が匿名を条件に語ったところによれば、リゾート建設に5年を要する可能性を考えると、その規模の投資に対する十分なリターンを確保するには10年間のライセンス期間は不十分だった。日本の地価や人件費は高く、銀行は建設費の半分超の融資に消極的だったという。

 

という意見に、今回のコロナショックが決め手となってしまったように思われます。

 

コロナショック・サバイバルでも、

L型経済圏の日常消費型のビジネスはある程度回復することが見込まれるものの、耐久消費財や国際線エアラインのようなG型経済圏のビジネスが戻るには、世界レベルでパンデミックに終息感が出てこないと厳しい。それとインバウンド向けのホテルや観光業など外需依存型のL型ビジネスも同様に苦戦が続く

 

製造業やエアラインは元々、固定費の高いビジネスである。長期的な売上減少が続くと、資金繰り融資で何とか破綻は回避できても財務体質がどんどん悪化していく。要は企業としてのサステナビリティに黄色信号が灯り(中略)

 

としています。

 

以上を踏まえ、

 

これから本格化するGの世界の第二波をどう受け止めるか、が勝負だと思っている。これを受け損ねると、次に世界経済は第三波、Fの危機となり、本当に回復が難しくなる。世界の産学官金が力を合わせて、何としてもGの第二波で経済危機を収束させることが肝要

と強く訴えておられます。

実際、航空産業でも、タイ航空、ヴァージンアトランティック航空他、複数の航空会社が苦境に陥っています。

 

また、空港からのレンタカーで有名なハーツも、ブルームバーグで報じられた通り連邦破産法11条、いわゆるチャプター11(日本で言う民事再生法に近い、経営債権型の手続きで、会社の消滅を前提とする破産ではない)を申請しています。

ちょうどこの記事を書いている5月26日、AFPによると、中南米最大の航空会社、LATAM航空が米で破綻申請と、次々と「え?あれだけの大手が」という事例が出始めています。

L型だけでなく、G型の産業にも大きな打撃を与えているのです。

 

ここで、日本の過去30年の経験が活きる、と示しているのが本書です。

 

詳細は本書に譲りますが、歴史に学ぶ点・リーダーの修羅場体験の重要性他多くの参考になる事項があります。

 

ぜひ目を通してみてください。

 

 

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