2019年は約4社に1社が選択!年々増加する合同会社のメリット・デメリット

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2019年新設の会社は、およそ4社に1社が、株式会社ではなく合同会社を選んだ

2020年6月18日、東京商工リサーチが発表した、2019年「合同会社」の新設法人調査という記事があります。

 

東京商工リサーチによると、

2019年(1-12月)に全国で設立された法人(以下、新設法人)は13万1,292社(前年比1.7%増)で、2年ぶりに前年を上回った。法人格では、トップが「株式会社」の8万8,724社(同0.9%増)、次いで、「合同会社」が3万424社(同5.5%増)だった。初めて合同会社が3万社台に乗せ、2019年の新設法人はおよそ4社に1社(構成比23.1%)が「合同会社」を選択した。

ということで、約4社に1社が合同会社を設立し、以前に比べ会社設立において合同会社を選ぶ人の割合は増加しています。

 

 「合同会社」は、2006年5月施行の会社法で「有限会社」の廃止で新たに作られた。設立手続きが株式会社など他の法人格に比べて簡単で、費用も安く、設立までの期間も短くて済む。
また、株主総会や決算公告の必要がなく、経営の意思決定も迅速にできることが「合同会社」の特徴になっている。
このため、太陽光発電所や投資不動産ごとに「合同会社」を設立するケースも目立つ。会社の経営と所有が一体化しており、アップルの日本法人「Apple Japan」、「アマゾンジャパン」など、GAFAなど大手外資系企業も「合同会社」となっている。

合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company 有限責任会社)に類似していると言われており、上記の記事の通り、アップル日本法人やAmazon Japan、他にもシリアルで有名な日本ケロッグ合同会社、ネットワークシステムのシスコシステムズ合同会社、ウォルマートの傘下に入った合同会社西友など、外資や外資に買収された会社など、大手でも合同会社という形態を選ぶ企業も増えてきています。

 

合同会社と聞くと、株式会社に比べマイナーな存在な印象が強いですが、近年の設立件数増を通し、合同会社の制度の認知も高まってきたように思います。

 

また、合同会社が増えている側面の一つとして、個人企業の法人成り、企業間取引で法人でないと発注しにくい、代表者の節税、2023年から導入されるインボイス制度への対応など様々なニーズがあるようです。

 

インボイス制度については、正確には「適格請求書等保存方式」と呼ばれています。

ここでは詳細を省きますが、法人・個人の免税事業者でも、事実上消費税を支払うか、消費税分の値引きをするかの必要が出てくるので、「だったらもう法人化してしまおう」というニーズで、個人事業を法人成りする動きは出てきて、「とりあえず安く・早く作れる合同会社を・・」という考えは出てくることが想定できます。

 

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合同会社のメリット・デメリットをおさらい

 

記事の続きを引用すると、

 

 2019年の新設法人数で、「合同会社」が初めて3万社を超えた。早く、簡単に、安く法人化ができる「合同会社」は、節税も可能で活用が増えている。
政府は、欧米並みの開業率10%を目指し、近年は創業支援など起業家への対策を講じている。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「持続化給付金」は、今年設立の企業も給付対象にするなど、新設法人への配慮もうかがえる。
「合同会社」の利点は、設立後の経営の自由度の高さにある。株主と経営が分離した企業が多い株式会社は、取締役の選任や重要事項を株主総会に諮ることが必要だ。また、株式配当などに一定のルールが定められている。一方、「合同会社」は株主総会が必要なく、定款自治が可能で、経営の自由度が高い。また、決算公告も必要がなく、利益分配も柔軟性が高く、大企業も外資系を中心に増えている。
個人企業で実績を重ね、合同会社で自由度の高い経営で成長し、新規上場を目指す企業も出現するだろう。

 

このように、合同会社は、上記の点も含め、

  • 株式会社と比べ知名度・信用に劣る
  • 経営者=社員(株主)なので、外部から出資を募る際は株式会社に改組する必要がある
  • 株式会社のように公証人役場での定款認証を受けないため、定款が適切でないケースもありうる
  • 法務局に登記される肩書きが、株式会社のように「代表取締役」「取締役」ではなく、「代表社員」「業務執行社員」となる。(なので、代表取締役・取締役という肩書きを合同会社の役員が使うのは不適切。ただし、社長・代表・CEOなどの肩書きを名刺に刷る分には、定款で定めるなどしておけば一応問題はない。ただ、正確には代表社員・業務執行社員が好ましいし、CEOなど大きな肩書きを最初からつけると、「小規模な合同会社なのに、CEOなんて肩書きをつけて大丈夫?と思われる可能性もある」)

という側面がある一方、

  • の決算公告は不要
  • 役員の任期を定める必要がなく、株式会社であれば2年~10年に一回必要な役員の重任の手続きが不要(もちろん、役員変更時は、法務局への届出が必要)
  • 株式会社と異なり、公証人役場での定款認証が不要のため、会社設立が1週間前後早くできる
  • 株式会社より設立にかかる実費が14万2千円程度安い。(公証人役場での定款認証 約52,000円、法務局に納付する登録免許税 株式会社は15万円~、合同会社は6万円~で、資本金により異なる)
  • 株主総会が不要

など、柔軟かつローコストな組織設計ができます。

 

また、最後の一文のように、個人経営→合同会社→株式会社という形で、成長や外部資本の必要性に応じ形を変えていくケースというのも想定できますし、決算公告が不要ということで、決算公告にかかる官報への掲載コストなどが不要です。

 

また、先日持続化給付金を管轄する一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が、決算公告を官報やWebで行っていなかったことが問題となりましたが、株式会社や一般社団法人の官報掲載忘れというのは意外とあることで、場合によっては過料(実際のところ、どこまでチェックしきれるかは疑問ですが)もあり、法律上は決算公告の義務があります。

 

一方、合同会社は決算公告が不要で、役員の重任手続きなども不要です。

 

自分一人で経営する場合や、法人成りからのステップアップ、外部からの資本調達を行わないなど、制度がフィットする人であれば、合同会社からスタートするというのもありでしょう。

 

また、大半の人には関係ない事項ですが、株式会社の場合、取締役の欠格事由というのが存在し、

  • 会社法・破産法、その他会社関係に関する法律の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わるまで、またはその執行を受けることがなくなった日(執行猶予満了日)から2年を経過しない者
  • 上記以外の罪で禁固刑以上の刑に処せられ、または刑を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中は除く)

の場合は、株式会社の代表取締役・取締役になることはできません。(逆に言うと、合同会社の場合、上記の制限はありません)

また、法人や、成年被後見人・被保佐人など事理弁識能力を欠く常況にある人も、取締役に就任できません。(株式会社・合同会社は問わず)

 

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合同会社のデメリット・株式会社のメリットも

ここまで、メリットの大きい部分を主体に合同会社の事を書きました。

 

しかし、合同会社のマイナス点もあります。

 

それは、「株式会社に比べ信頼性が低いと言われている」という、「(会社の財務状況や代表者の信用力にもよるが)若干融資が受けにくいと言われている」という点です。

 

株式会社と異なり、合同会社は決算を公にする必要がない代わりに、第三者から見ると、経営内容がわかりにくい点があります。もちろん、資本金や事業内容、その他外から見える業況や評判で推察したり、企業調査会社に依頼するなどもできますが、やはり決算内容がオープンにされている株式会社の方が、信用面では強いといえましょう。

 

融資に関しては、あくまで「合同会社の認知度が低い、株式会社に比べ設立手順が簡易な分、信用力が低い」と一部で言われている状態なので、実態はつかみにくい点がありますが、地方や担当者によっては、今でも合同会社に対する認識があまりないケースも想定し得ます。

 

どちらも、「一般的には」という一般論ですが、信頼性の点においては、「自身が経営者で、同じレベル・同じ印象の会社で株式会社と合同会社のどちらに依頼するか」という観点で考えると、正直株式会社が勝つのではないでしょうか。

その点、合同会社は、株式会社と比較するとハンデがあるという認識は持っておいた方が望ましいでしょう。(ただ、起業初期の段階では、クライアントの依頼で「法人じゃないと取引口座開けないから、会社立ち上げて」といわれて、取り急ぎ合同会社を設立する、というのも一つのやり方です。)

 

また、株式会社のメリットは、

  • 信用力
  • 外部からの出資の受けやすさ
  • 経営=資本でないこと
  • 相手に違和感を与えないこと

と言えます。

 

特に、最後の「違和感を与えない」というのは意外と大切で、取引先から見たら、「なぜ合同会社を?」という違和感を持つ人も少なくありません。

 

そのため、起業初期・急ぎなど特別な事情がない限りは、株式会社を選択する方が、無難と言えましょう。

 

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