土日は子供を寝かしつけるために、車で外出していました。
通りを見ても、ショッピングモールなどの大きなスペースがある空間には相変わらず賑わいがある一方、小規模店舗(特に飲食等)は、テイクアウトの看板を出していたり、以前より明らかに駐車量が減少していることが見て取れました。
大手・中堅・個人店問わず飲食店という業態が相当厳しい事態になっていることは想像が付きますが、その中でも、今回の新型コロナウイルスの影響の大きさを実感させるのが、ジョイフル200店閉鎖へ 新型コロナ、直営の3割という記事。
ジョイフルは九州を基盤とし(5割近くの店舗が九州)、他にも中四国なども活発に運営されているファミリーレストランです。特に九州では、ファミリーレストランとして堅固な基盤を築いており、既存直営店を3割削減するというニュースに関しては、非常に大きなインパクトがあると言えます。
特にジョイフルの場合は、ドリンクバーなどの利用もしながらの滞在型利用も多かったと思われるため、3月~5月にかけての外出自粛の影響も大きかったと推測されます。
同じく日本経済新聞の記事 九州の外食、コロナで構造改革 ジョイフルやロイヤルHD では、記事全文が公開されているので、要点をピックアップすると、
- ジョイフルは直営店の約3割を閉鎖する予定
- 対象店舗は今後精査するが社員の雇用は維持
- 主力の「ジョイフル」は既存店売り上げが1月と2月に前年同月を上回っていたが、3月16%減、4月55%減、5月53%減と急速に落ち込む
- ジョイフルの国吉康信専務は”「自然災害を含め、こうした事態が二度と起きないとはいえない」と説明。「経営のリスク耐性を高めるべきだと判断した」”と発言
- 「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルHDは20年1~6月期の連結業績で売上高が前年同期比43%減の390億円、営業損益で138億円の赤字見込
- 閉鎖対象は同社が運営する飲食店の約1割
- ”家族を対象にした店舗の売り上げの回復が遅い”
- ”「従来は土日に親子で訪れる客が多かったが、いまは子供連れでの外食を自粛する家庭が多いのではないか。回復は早くても8月以降だろう」”と予測
など、ファミリーレストランと言う業態全体に逆風が吹いていることを感じさせます。
また、居酒屋などの夜業態のビジネスも打撃を受けており、「鳥貴族「コロナで売り上げ96%減」の衝撃…!本当に耐えられるのか」のように、売上が数十パーセント減でも相当な打撃なのに、96%減というのは、相当なダメージですし、当該記事の中でも、
「もう二度と、元通りの売り上げには戻ることはないだろう。コロナ前比較で売り上げは60~70%で推移することを覚悟している。来年春か初夏までは自粛~開放~自粛~開放を2、3度繰り返すのではないか」
「景気は当然悪くなる。当初の開放は自粛ストレスにより一定の消費はあるが、どんどん財布の紐は固くなる。そのため、店舗ビジネスだけではリスクが高すぎることを痛感した。今後は店舗を活用しながらも店舗売上以外での売り上げをつくる道を模索しなければならない」
と、従来型の店舗ビジネスからの脱却、転換を模索していることが強く表れています。
確かに消費者側の立場にしても、「テイクアウトはいいけど、ファミレスなど店舗内での食事はちょっとね・・・」というのが正直なところでしょう。
やはり、消費行動というのは社会の空気の影響を受けます。
今の状態で、ファミレスなり、いいお店なり、居酒屋なり、そういうところへ行けるか?というと、やはりまだそういう気分ではない、という向きも多いでしょう。
同業種のファミリーレストランでも、店舗の窓やのぼりに、テイクアウトOKを大きく表示、テイクアウト客を取り込むことに強く意識を向けているようです。
ただ、ファミリーレストランは「場を提供する」という側面が強かったので、「わざわざテイクアウトしても・・」という向きもあるでしょう。
テイクアウト主体になると、追加オーダーやちょい飲みがなくなる事が大きなマイナス
ファミレスや飲み屋などで、話が盛り上がり、追加オーダーや酒類、飲料の注文が増えるケースは多いでしょう。
しかし、テイクアウトだと、「このメニューとこのメニュー!」と、決め打ちして顧客は購入しますので、店舗営業だとよくある追加注文は期待できません。
また、飲み物類は自分でスーパー・コンビニ等で買うケースが多く想定されるため、利益率の高いドリンク類の販売も、期待できません。
ファミレスやカフェなどの常連客には、高齢者も多かったが・・・
ファミリーレストラン・カフェなどの常連客には、時間に余裕のある高齢者も少なくありませんでした。
しかし、報道番組やワイドショーなどで、新型コロナウイルスの恐ろしさをこれでもかと繰り返されると、外出は最小限、外での飲食は避ける、会食はできるだけ行わないという考えを持つ高齢者が増えるのは自然なことでしょう。
また、特に地方においては、高齢者・若年層を問わず、「地域で罹患した第一号」となることを、多くの人が恐れています。
それ故に、生活に必要な店舗以外では、会合・病院・飲食店などから軒並み足が遠のきます。
この習慣が一度定着すると、当面この状況が元に戻るのは難しいでしょう。
ジョイフルが直営店3割削減という決断を下したのも、納得できます。
ファミレスビジネスから、「ファミリーレストランの味をご家庭で」へのビジネス転換
同じ九州を基盤とする、ディスカウントドラッグストア・コスモスでは、2018年から、ジョイフルのハンバーグを冷凍食品として扱い始めています。ハンバーグなど現在は一部のメニューに限られますが、「ファミリーレストランのメニューを好きなときに自宅で食べられる」というのは、意外なアドバンテージとなるでしょうし、今後はコロナ対策も含め、より取り扱い製品を拡充していくことも想定されます。
今後、他のファミリーレストラン(あるいは高級ホテル・シティホテル)も、「レストランのメニューをご家庭で」という路線をこれまで以上に強化していくと思われます。
帝国ホテル・ホテルニューオータニ・ホテルオークラの御三家・一部有名ホテルチェーンは、既にホテルブランドを冠したスーパー・百貨店で買えるメニューを拡充していますが、他のホテルについても、ホテルブランドを活用したフードメニューの拡充・オンラインショッピングの強化などに関して、積極的に取り組んでいくことが想定されます。
コロナ渦を受けない、ANTI COVID19 ビジネスへのダイレクトなシフト
(2020年6月)現在も続くコロナショックで、多くのビジネスが、新型コロナウイルスという重大な課題に直面しています。
その中で今後必要なのは、「新型コロナなど、新型感染症の影響を受けないビジネスへのシフト」となってくるでしょう。
業態により、具体的にビジネスの形がどう変化していくかは、これからの模様を注意深く見守る必要がありますが、少なくともこれまでのように「三密」状態を前提としたビジネスはなくなるでしょう。
三密状態というのは、大型ライブにせよ、古典芸能にせよ、立ち飲み屋にせよ、ゴールデン街や地下ライブハウスなど、「人が密集して、活気がある」というところに良さがありました。
しかし、当面の間、このような「空間・時間を同じ場所で共有」することはできなくなります。
人を集めることで生まれていたビジネスを、「人を集まらないようにすること前提」の、「ANTI COVID19ビジネス」に転換していかなければなりません。
その手法としては、17LiveやYoutube、その他のメディア活用のオンライン化・ソーシャルディスタンスを保ったイベントなど様々な手法があるでしょう。また、VR(仮想現実)の装置も安価になり、あたかもその場にいるような感覚(ただし、現実の体験とはやはり差異がある)を味わえるようにはなるかもしれません。
ただ少なくとも、これまでできていたことは、不可能になるか、相当厳しくなります。
今後、社会全体がどのように動くかは不確定要素だらけですが、間違いなく言えるのは、
- オンライン化が進む
- オンライン化に適応しなければならない
というところでしょう。
あらゆるビジネスがオンライン前提で進む、これを所与として、ビジネスを考えて行く時代と言えましょう。