生産現場・ものづくりの技術も、容易にIT技術で代替される分野は多い
ITと異なる生産現場・ものづくりの技術の問題。
つい最近、興味深いツイートがありました。
中小製造業が次々に廃業に追い込まれている理由について、ひたすらに話します。
※超絶マニアック注意
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 202
日本の製造業は、自動車の産業を中心に90年代に急成長しました。
それを支えたのは熟練した技能者による高度な製造技術です。当時、日本のものづくり技術は諸外国よりも遥かに優れていました。それは、高度で、精神性の高い技術活動であるとの認識すら生まれていました。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
しかし、状況は一変。現状では多くの職人の労働価値が低下が進んでいます。
その理由は、生産のデジタル化。熟練技術を持たなくとも生産ができるようになってきたからです。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
たとえば、機械部品の多くは、まず金属の塊を「削る」ことによって作られています。
その「削る」作業は「工作機械」というマシンが行います。その工作機械の中でも「NC工作機械」という機械が主流です。NCというのはNumerical Controlの略で、これは「数値制御ができる」ことを示します。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
現場の作業としては何をやるか。
それは、プログラミングによって工作機械に指令を与えることです。他にも、あらゆる機械周辺の調整作業も必要です。この部分において、熟練技能者は大活躍です。
長年の経験や知識が存分に発揮される領域であり、ここが特に日本の製造業の強みの根でもありました。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
しかし、機械そのものがIT技術の発展の影響を大いに受けており、デジタル的な発展を遂げまくっています。
その結果、先の調整作業などがどんどん不要になり、長年の経験や知識が機械に置き換わるようになっていってます。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
たとえば、今では3DCAD/CAMのデータを機械に流し込めば、その通りの部品が完成。
不随する細かな調整も機械が行うようになり、これまでのような職人技術が無くともある程度の生産活動ができるようになってきています。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
生産活動がデジタル化したことにより、結果的にアジアの新興国の生産レベル(特に中国)が大きく向上しました。
ある程度の品質の部品が、アジア新興国において低価格生産できるようになりました。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
こうなれば、市場原理により、同じ部品であればアジア新興国の価格に引き下げられますね。
日本で自動車部品を作っていた部品製造業者は、この影響を受けて、価格を引き下げざるを得なくなります。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
自動車には約2万点の部品があると言われています。
日本は自動車産業を中心に急成長したため、中小の部品製造業もまた多く存在しています。
それらが、このデジタル化の波に飲まれ、多くの中小製造業が廃業・破綻に追い込まれていってます。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
一方で、機械がデジタル的に未だこなせない領域も存在します。
たとえば、金属を磨く「研磨」という領域などです。こういった領域においては、未だ職人芸こそが最強であり、逆に職人芸の市場価値が高騰しているケースもあるようです。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
このような職人技術を担う世代は既に60代以降が中心となっており、極端に高齢化が進んでいます。
これが製造業の「技術継承問題」といわれるものです。
おそらく、高度な職人芸で成り立っている中小製造業も、この技術継承問題により、時の流れとともに多くが廃業になることは想像に容易い状況です。
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
まとめると、「生産のデジタル化」と「技術継承問題」。大きくこの2つによって、多くの日本の中小製造業は廃業に追い込まれています。
【完】
— 板橋 洋輔 (いたちょ) (@1tatyo) January 26, 2020
このように、
- どうしてもデジタル化できない分野を覗いて、過去の技術・職人芸がテクノロジーによって、いとも簡単に実現されてしまい、しかも均一のクオリティで作れる
- デジタル化が極めて難しい分野は、技術の継承が一朝一夕でできないため、職人の高齢化に伴い引き継がれなくなってしまうおそれ
など、ものづくりの分野でも、日本の存在感は厳しくなっているといえます。
ここまでの
- 世代間の働き方に関する意識の異なり
- ものづくり神話の危機(もしくは崩壊)
を踏まえ、現在の日本の存在感の低下を考えると、過去の成功体験は一旦横において、過去の遺産を活用できる部分とゼロベースから考えなおす部分を仕分けし、日本の産業自体を再構築する必要が出てくると感じます。
また、他地域・海外に出ている企業も、地方でも増えていますが、より積極的に(ただ、1月下旬現在では、感染症が流行していますので、そこが一段落してから)、他地域・海外を見ていく・新たしい方式を取り入れるなど、旧来の積み上げではない、根本的なアップデートが必要となる産業も多いのではないかと感じます。