6/1からの食品衛生法改正で保健所の営業許可・届出が必要になる業種は?HACCPの義務化も!

2021年6月1日に、食品衛生法が改正されました。飲食物を製造・販売する事業者(特に小規模事業者)にとって、手続が増える可能性があります。

従来は営業許可・営業届出が必要なかった事業者も、11月末までに保健所への営業届出が必要になるケースがでてきます。

さらに、飲食店・テイクアウト店舗等原則ほとんどの食品事業者に、HACCPに沿った衛生管理を行うことが、2021年6月1日に完全義務化されました。

今回は、その対象業や届出期限、具体的になにをすればいいのか、HACCPとは何かなどをまとめていきます。

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食品衛生法改正で、営業届出が必要になる業種は?

まず、2021年6月1日の食品衛生法改正で営業届出が必要になる業種は、主に下記の業種です。

  • 販売業(弁当・野菜果物・米穀類販売業など)
  • 製造・加工業(農産保存食料品・調味料など)
  • その他(器具・容器・包装の製造・加工業、ただし合成樹脂が使用された器具または容器包装の製造・過去に限る)

上記の業種は、2021年11月30日までに保健所へ営業届出を行う必要があります。

また、6月1日以降に上記業種の新規営業を始めるには、事前に保健所への営業届出が必要になります。

逆に、届出が不要な業種は以下の通りとなります。

  • 食品又は添加物の輸入をする営業
  • 食品又は添加物の貯蔵のみをし、又は運搬のみをする営業(食品の冷凍又は冷蔵業を除く。)
  • 容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品又は添加物のうち、冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化により食品衛生上の危害の発生のおそれがないものの販売をする営業
  • 器具又は容器包装(合成樹脂以外の原材料が使用された器具又は容器包装に限る。)の製造をする営業
  • 器具又は容器包装の輸入をし、又は販売をする営業

上記の当てはまらないケースを踏まえると、基本的に製造・加工を行う事業者は、原則許可・届出対象と考えておいた方がよいです。

そもそも許可と届出の違いは何か、という点を考えた上で、より具体的に区分けをしたわかりやすいケースとして、東京都の届出対象例の表を参考として、一覧にします。

食品衛生法による許可・届出の違い

6月1日から、多くの食品関連業が「許可」もしくは「届出」が必要になります。そもそも、許可と届出の違いはどういう点でしょうか。

  • 許可手数料が必要
    更新手続が必要
    変更や廃業の届出が必要
    営業施設の基準を満たすことが必要
    食品衛生責任者の設置が必要
    HACCPに基づく衛生管理が必要
  • 届出→変更・廃業の届出が必要
    食品衛生責任者の設置が必要
    HACCPに基づく衛生管理が必要

上記の通り、許可の方が手数料が必要・更新手続が必要、営業施設の基準を満たすことが必要など、ハードルが高いです。

2021年6月1日以降、食品衛生法における「許可」が必要なケース

許可の場合は、許可手続の際に手数料がかかり、審査のハードルも上がります。具体的に同基準が変わるかは、福島県の解説ページにわかりやすく書いてあります。

この福島県のページより、ポイントを抜粋します。

  • 営業許可の対象となる業種が変更(現行34業種→32業種へ再編
  • これまで許可不要だった業態の一部に、営業許可の取得が義務付け
    令和6年5月31日までに、営業許可を取得(経過措置期間:3年)
    ・漬物の製造(漬物製造業)
    ・そうざい半製品の製造(そうざい製造業)
    ・あじの開きや明太子などの水産製品の製造(水産製品製造業)
    ・常温保存可能な容器包装に密封された食品の製造(密封包装食品製造業)
    ・液卵の製造(液卵製造業)
    ・既製品(菓子など)の小分け包装(食品の小分け業) など
  • 一部の許可業種は、一つの許可業種で取り扱える食品の範囲が拡大
    ・菓子製造業を取得している施設が調理パンを製造する場合、そうざい製造業や飲食店営業の許可は不要
    ・清涼飲料水製造業を取得している施設が生乳を使用しない乳飲料を製造する場合、乳製品製造業の許可は不要

なお、許可業種から届出業種へ移行するものについては、営業届出の手続きは不要となります。

具体的な、営業許可が必要になる業種は?

許可が必要になる業種は、下記の業種が対象として例示されています。

1 飲食店営業
2 調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業
(屋内に存在し、自動洗浄等の機能を有する機種については許可ではなく届出の対象
3 食肉販売業
4 魚介類販売業
5 魚介類競り売り営業
6 集乳業
7 乳処理業
8 特別牛乳搾取処理業
9 食肉処理業
10 食品の放射線照射業

11 菓子製造業
12 アイスクリーム類製造業
13 乳製品製造業
14 清涼飲料水製造業
15 食肉製品製造業
16 水産製品製造業
17 氷雪製造業
18 液卵製造業
19 食用油脂製造業
20 みそ又はしょうゆ製造業
21 酒類製造業

22 豆腐製造業
23 納豆製造業
24 麺類製造業
25 そうざい製造業
26 複合型そうざい製造業
27 冷凍食品製造業
28 複合型冷凍食品製造業
29 漬物製造業
30 密封包装食品製造業
31 食品の小分け業
32 添加物製造業

と、かなり幅広い業種が食品衛生法に基づく要許可業種になります。

2021年6月1日以降、食品衛生法における「届出」が必要なケース

食品衛生法の要許可業種と、届出が不要な業種以外に当てはまらない業種は、届出が必要になります。

また、現行の許可業種のうち、リスクが低いと考えられる一部の許可業種は届出の対象に変更になります。(前出・福島県HPより)

例:乳類販売業、氷雪販売業、食肉販売業(容器包装に入った食肉販売のみ)、魚介類販売業(容器包装に入った魚介類販売のみ)

例示されているものを挙げると、

製造・加工業の例

• 農産保存食料品製造業
• 菓子種製造業
• 粉末食品製造業
• いわゆる健康食品の製造業
• 精米・精麦業
• 合成樹脂製の器具/容器包装製造業

調理業の例

• 集団給食(委託の場合、飲食店営業の許可になる場合あり)
• 調理機能を有する自動販売機(自動洗浄など高度な機能を有し、屋内に設置されたもの)
水の量り売りを行う自動販売機(最近スーパーやドラッグストアで多いですよね)

販売業の例

・乳類販売業
• 食肉販売業(包装食品のみの取扱い)
• 魚介類販売業(包装食品のみの取扱い)
• 野菜果物販売業
• 弁当などの食品販売業
行商

弁当などの食品販売業だけでなく、今は見ることもレアな、行商も対象とは・・・。

2021年6月1日以降も、食品衛生法における「許可」「届出」が不要なケース

不要になるケースは下記の通りです。

1 食品又は添加物の輸入業
2 食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業(ただし、冷凍又は冷蔵倉庫業は届出が必要な業種)
3 常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない
包装食品又は添加物の販売業(カップ麺や包装されたスナック菓子等)
4 合成樹脂以外の器具・容器包装の製造業
5 器具・容器包装の輸入又は販売業
このほか、学校・病院等の営業以外の給食施設のうち、1 回の提供食数が20食程度未満の施設や、
農家・漁業者が行う採取の一部と見なせる行為(出荷前の調製等)についても、営業届出は不要

以上のように、それぞれが非常にややこしい定義ですが、それぞれ具体的な事例の確認には、都道府県(特別区の場合は市)の保健所に相談するのが確実です。

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食品衛生法改正の営業届出の方法は?

現在は紙の届出・インターネットでの届出の手法がありますが、自治体により対応している方法が異なります。インターネットでの電子申請に対応していない自治体もあります。また、インターネットでの受付を選考して始める自治体もあります。

インターネットを用いた電子申請での届出には当サイトではおなじみのG-bizプライムIDを利用します。GbizIDプライムの作成もしくは食品衛生等申請システムのIDの作成が必要になります。

今後、様々な電子手続で、GbizプライムIDを利用することが増えますので、できれば最初のうちにGbizプライムIDを作っておくと良いでしょう。(なお、作成には2~3週間がかかりますので、急ぎの場合は食品衛生等申請システムのIDを作って今回は対応、今後のためにGbizプライムIDも申請しておくという形にすると良いでしょう)

この後、具体的な届出方法と、HACCPとは何か、HACCPに基づく衛生管理の導入方法について解説していきます。

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食品衛生法に基づく営業許可の手順

一般的なケースとして、東京都の事例を元に解説します。

  1. 事前相談
    施設基準に合致しているかなどを事前に確認するため、施設の工事着工前に図面等を持参の上、必ず保健所へ事前相談
    施設ごとに食品衛生責任者もしくは食品衛生管理者を置く義務
    貯水槽使用水(タンク水)や井戸水等を使用する場合、水質検査が必要
  2. 営業許可申請(書類の提出)を施設完成予定日の10日くらい前に行う。提出書類は下記の通り。
    1 営業許可申請書
    営業設備の大要・配置図
    3 許可申請手数料(福島県の場合、2021年6月1日以降より、飲食店営業 18,000円、複合型そうざい製造業 35,000円など。都道府県により違い。また、2021年6月1日以前の許可申請手数料が掲載してある自治体、6月1日以降も変更のアナウンスがない都道府県などあり、詳しくは保健所に確認を)
    4 登記事項証明書(法人の場合のみ)
    5 水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合のみ
    許可後も、年1回以上水質検査を行い、成績書を保管
    食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)
  3. 施設検査の打合せ
  4. 施設の確認検査
    営業者が立ち会う。施設基準に適合しない場合は許可にならない。不適事項については改善し、改めて検査日を決めて再検査を受ける。
  5. 営業許可書の交付
    営業許可書交付予定日に、「営業許可書交付予定日のお知らせ」及び認印を持参して、保健所で営業許可書の交付を受ける
    施設基準適合確認後、許可書を作成するが、交付までには数日かかる。開店日等についてはあらかじめ打ち合わせを
  6. 営業開始
    営業開始後は、施設や設備が基準どおりに維持管理されているか常に点検するとともに、食品の取扱い等にも十分留意して、より安全で衛生的な食品を提供するよう心がける
    施設等に変更を生じたり、廃業したりした際には、保健所まで届出
    食品衛生責任者の名札(10cm以上(幅)×20cm以上(高さ))を施設内に掲示

また、別の店で営業する・居抜き営業を行う場合も新規で許可が必要です。

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HACCPに沿った衛生管理

6月1日からの食品衛生法改正では、HACCPに沿った衛生管理も、大半の事業者に義務化されます。

ただし、厳格にHACCPの基準を適用するとは限らず、あくまでHACCPをベースとし、簡略化された衛生管理を行う(業種事に手引きが出ている)ケースも多いです。

HACCPとはそもそも何?

シンプルに言うと、

  • 食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握
  • 原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、危険を防ぐための重要な工程を管理して安全性を確保

という考え方です。

Hazard Analysis and Critical Control Point(危険分析と重要な管理点のポイント)の頭文字をとって、HACCP(ハサップ)という名称となっています。

HACCPは国際的な基準です。

例えば、厚生労働省が示している検査だと、一例としてこういうポイントを記録して下さい、とされています。

  1. 原材料(受入検査・記録)
  2. 調合(調合比率の確認・記録)
  3. 充填(温度・充填量の確認、記録)
  4. 密封(密封性の確認・記録)
  5. 熱処理(殺菌温度・時間を連続的に監視)
    重要管理点(CCP、食品の安全衛生上特に注意すべきポイント)
  6. 冷却(水温・水質の確認・記録)
  7. 包装(衝撃、温度の確認・記録)
  8. 出荷

以上のポイントをそれぞれ記録、特に重要管理点においては、厳密な管理が必要になります。

小規模な事業者にとっては、正直ただでさえ作業で大変なのに、工程まで細かく記録するのはしんどい・・・、というのも正直なところかと思います。

HACCPの適用対象となる事業者・適用される内容は?

HACCPの適用対象や内容は、事業規模により下記の通り違いがあります。

  • 大規模事業者等
    HACCPの衛生管理手法を厳格に運用(厚労省
  • 小規模な事業者
    HACCPの衛生管理手法をベースに、簡略化された各団体の手引き書を元に、少し簡易になった衛生管理を行う
    (ベースとしては、きちんと記録を付けて、万一のことが起こらないように、また何かあったときに追跡できるように工程を残しておきましょうよ、という考え)

小規模事業者には、前述の届出に加え、多くの業種が2021年6月からHACCPの対象になります。

厚生労働省が具体的に例示している対象事業者は、

  • 食品を作る、もしくは加工する事業者
    →その店舗や製造所併設の店舗で全部または大部分を販売
  • 飲食店営業または喫茶店営業を行う営業者、そうざい製造業、パン製造業(消費期限が概ね5日程度のもの)、学校・病院等の営業以外の集団給食施設(例えば寮?)、調理機能を有する自動販売機など
  • 容器包装に入れられ、または容器包装で包まれた食品のみを貯蔵・運搬・または販売する業者
  • 食品を分けて容器に入れ、または容器包装で包み小売り販売する事業者(八百屋・米屋・コーヒーの量り売りなど)
  • 食品を製造、加工、貯蔵、販売、処理等する営業を行うもののうち、食品等の取扱に従事する物の数が50人未満である事業場(事務職員など直接食品を取り扱わない者はカウント外)

・・・・と、非常にかたい言葉で定義が書かれていますが、ざっくりいうと「これまでHACCP管理を免れていた事業所も、業界団体が定める少しシンプルにした管理基準で、HACCPの考え方を取り入れた食品管理を行ってくださいね」ということになります。

ちなみに、対象外の業種は下記の通り。

  • 農業及び水産業における食品の採取業
  • 公衆衛生に与える影響が少ない下記の営業(ただし、一般的な衛生管理は必要)
    食品または添加物の輸入業
  • 食品または添加物の貯蔵または運搬のみをする営業(冷凍・冷蔵倉庫業は除く)
  • 常温で保存しても腐敗等品質劣化による危害の発生のおそれがない包装食品の販売業
  • 器具・容器包装の輸入または販売業
  • 1回の提供食数が20食未満の集団給食施設

このように、適応除外となる業種は極めて少ないため、大半の業種がHACCP対応が求められることとなりそうです。

おそらく、該当業種には業界団体より「HACCPベースの管理手法に基づいてきちんと記録・管理してください」というお知らせが来ていると思いますので、その通知をベースに対応するか、通知がないけれども気になる場合は保健所等に確認するとよいかと思います。

HACCPの詳細について書かれた厚生労働省の文書があり、ここから対象の事業者に影響があるポイントをまとめます。

HACCP管理に基づき、小規模事業者に求められるもの

厚生労働省も、小規模事業者に対し、HACCP対応を厳密に行うというのは、相当大変な事だとわかっているようです。そのため、基本的なポイントを守っていれば「ヨシ!(公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守している)」という扱いとなります。

  1.  手引書の解説を読み、自分の業種・業態では、何が危害要因となるかを理解
  2. 手引書のひな形を利用して、衛生管理計画と(必要に応じて)手順書を準備
  3. 内容を従業員に周知
  4. 手引書の記録様式を利用して、衛生管理の実施状況を記録
  5. 手引書で推奨された期間、記録を保存
  6. 記録等を定期的に振り返り、必要に応じて衛生管理計画や手順書の内容を見
    直す

ベースには、食品等にかかる事故をなくしたり、万一の際に「どこのポイントに問題があったか」を見直せるようにするという考えがあります。

 

具体的な記録例として厚生労働省が明示しているものを見てみましょう。(出典:厚生労働省:HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化)

HACCP 衛生管理 事例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてみてみると、毎日各工程を記録するので、大変そうという印象はあります。

HACCP導入の制度化による留意点

HACCPの対象になる(なる可能性がある)事業者の方にとって気になるのが、保健所の管理や罰則、制度運用ではないかと思います。

こちらも手引きから要点を抜き出すと、

  • HACCPに沿った衛生管理の制度化は、衛生管理の手法(ソフト)に関するもので、施設や設備(ハード)の新設や変更は必要ない
  • 衛生管理の実施状況については、これまでと同様に、営業許可の更新時や保健所による定期的な立入等の機会に、食品衛生監視員が確認を行う
  • 新制度のため、当面の間は、導入の支援・助言が中心。(さすがにいきなり厳しくすると影響があるため)
  • 分からない点は「食品衛生監視員に相談しながら進めてください。」としている
  • 第三者認証の取得は義務ではない
  • 罰則の適用については、これまでの制度から変更なし
  • 通常は、以下の流れ
    衛生管理の実施状況に不備がある場合、まずは口頭や書面での改善指導
    →改善が図られない場合、営業の禁停止等の行政処分が下されることがある
    → 行政処分に従わず営業したときは、懲役又は罰金に処される可能性
  • 令和3年6月1日から完全施行
  • 営業者はHACCPに沿った衛生管理等を実施
  • 食品衛生監視員は許可の更新時や定期的な立入時等に実施状況を確認する。
    小規模営業者等には手引書に沿って助言・指導を行う

以上のような流れになります。

このように、HACCPの適用を全食品製造・飲食関係事業者に厳格に求めるわけでなく、小規模事業者は、HACCPをベースにした、少しシンプルにした管理を行ってね、というところでしょう。(ただ、ただでさえ人手が少ない小規模事業者にとってはしんどいというのが本音かもしれませんが・・・)

最後で述べたとおり、小規模事業者がHACCPを遵守していなかったからいきなり罰則というのはないですが、指導等はあるため注意が必要です。

 

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