最近読んだ書籍の中で興味深かったのが、「STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか」です。
これは、いわゆるベンチャー・スタートアップのために、既に実績を収めた会社の経営者・ファウンダーからインタビューを行い、起業に関して、
- アイデアの発見
- チームビルディング
- プロダクトを作り、ユーザー検証
- ユーザー獲得
- 資金調達
- 起業すること
などが、様々な起業家のインタービューを元に、「体系化して」まとめられています。
Twitterでも言及しましたが、電子書籍として閲覧するよりも、個人的には、リアル書籍を手元に置いて読む形がより良いかと思い、
基本、よく起業家に対するインタビューはWeb上にありますが、様々な起業家からのインタービューをたたき台として、「共通の要因や、起業という全体像からまとめて整理してみよう」という観点の書籍は見当たらず、その点「STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか」は有用な書籍と感じます。
全体の量も多く、断片的に情報を切り出すだけではもったいないと感じますが、昨晩子供の世話をしながら、一日で220ページほど読み進めた段階で、興味深い部分をピックアップします。
また、アクセスなどの反響に応じて今後追記なども検討します。
起業アイデアを見つけ、テストに移すプロセス
アイデアの見つけ方は
・事例起点(過去)
・課題起点(現在)
・構造変化基点(未来)
の3パターンあり、特にwithコロナの状況で社会状況が変わりつつある現在では、未来起点に注目が行くように感じますが、
ビジネスの基本的な戦い方は、競合に情報戦で勝ち、誰もがチャレンジしたことがない方法で稼ぐ
という最新情報、また、
事業領域の歴史を調べる
などの手法も。
課題起点は、ストレートに自分、他者の困りごとを解決という起点。
また構造変化起点では、市場構造に変化を与える要因として、PESTLEフレームワークという概念(政治・経済・社会・技術・法規制・環境)を挙げています。(これも本書をご参考に)
共通項として、
自らが戦う事業領域において、誰よりも詳しくなるまで情報収集をしていた
として、どのように情報を整理するべきかといういう点が体系化されています。
また、市場選択の重要性という観点で、
(ココン株式会社 倉富佑也氏) 『経営上の意志決定がリアルに数字として出てくるという経験を積んでわかったのですが、希望的な観測や「おそらく売れるだろう」という自分に対する過信が入ると事業判断を間違えてしまうのです。それからはいっそう、本当にお客様がいるのか、事業として成り立つのかを、個人的な私感ではなくユーザー視点で真剣に考えるようにしました。
という点も、なるほどと感じました。
いまだにFAXを使っている業界に、チャンスがある
本書P96~P97には、コーチ・ユナイテッド株式会社の有安伸宏氏の興味深い発言があります。
ビジネスアイデアの見つけ方として、
「一見遠回りに見えますが、プロダクトマーケットフィットがどこにあるかを探すよりも、当たり前に思われている事を疑って、不便なことをうまく解決できる方法はないかを探る方がいいと思いますね。これは、特定のユーザーセグメントや領域、業界を絞って何が起こっているかをひたすら見るアプローチです。例えば、いまだにFAXを使っているような業界を見るとワクワクしますね。『デジタル化を阻むハードルはなんだろう』『どこから改善すると、山が動くのかな』と。」
この、不便・非効率が当たり前になっている業種というのは、今でも相当多いと推測します。
例えば、ビジネス対象としてふさわしいかは別として、知人から聞いた話では、教育機関は非効率な面が多々あると。
小中学校であれば、システムや業務フローが学校ごとに異なったり、報告システムを自治体ごとに作っているため、システムの使い勝手に課題があるなど。
様々な業界で、「これでここまで来たから、今更変えるのは面倒くさい」という心理はあるでしょうし、人間というのは、十数年・下手すると数十年続けた経験をリプレースし、新しいことに慣れていくのは、当事者に適応能力や意志がないと大変でしょう。
ただ、そういう不便・非効率の解消と、現場のユーザビリティを両立させた仕組みであれば、大きく受け入れられるとも思います。
人が様々なロングテールの知識・経験を持つところに着目
コーチ・ユナイテッド株式会社の有安伸宏氏のインタビューで、もう一つ興味深いエピソードは、
『知識や経験もロングテールだし、人の頭の中にはニッチなノウハウが集積しているはずだ』と気づいたんです。
とし、これをビジネスに応用、ドラムやスペイン語などニッチだけれど、学びたい人がいる分野、
このような「ロングテール」の分野にノウハウを流通させることができればすごいことになるのでは、考えたのだ
という点です。
ここの着眼点だけでもすごいですが、さらに、この発想に至る前に、
このアイディアは唐突に浮かんできたわけではない。当時、有安は数十ものビジネスアイディアを考え、家中に構想を書いた紙を貼り巡らせていた。その中の一つが「学びのプラットフォーム」だったのだ。
「当時は家の壁中にアイディアを書いた紙を100枚くらい貼っていたんですよ。不思議と、手で書いて壁に貼って至った方がアイディアを思いつきやすかった。
と、
事業アイディアを考えることに、まさに全身全霊をかけ、(中略)有安氏自身が商売抜きでもっとも創ってみたいと思えたこと
を、
- 自身でテストマーケティングとして簡易なページを立ち上げる
- 顧客獲得コストをかけていないにもかかわらず、初月に10人の申し込み
- ”クイックな検証の結果、仮説が立証されたと判断”
- ”月商100万円を達成したタイミングで会社を設立”
- 既存スクールビジネスの関係者に、スクールビジネスは箱がないとダメという指摘を受けたが、”「箱よりも教わる人の方が重要だ」”と考えた
と、仮説と検証を、スピード感をもって実行したことが強く窺えます。
(この後も、追記します)