齋藤孝氏・安住紳一郎氏の共著・「話すチカラ」は、経営者層から新入社員まで、それぞれの立場で学びになる点がある

昨日より、齋藤孝氏・安住紳一郎アナウンサーの共著である「話すチカラ」という書籍を読んでおります。

本書は、齋藤先生が教鞭を執り、安住紳一郎氏の母校である明治大学での講演など、学生・新社会人層に向けた内容でありますが、様々な場面で話すことも多い、経営者・事業主・管理職などにとっても学びがある内容でしたので、ここで紹介したいと思います。

 

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仕事の形態が多様化しても、「直接話すこと・伝えること」はビジネスに欠かせない

現在はビジネスにおいて様々なコミュニケーション手段が存在します。

対面だけでなく、電話、チャット、ビジネスチャット、ビデオ通話など手法は様々ですが、「自分の考えていることを相手に的確に伝える」ことは、どのコミュニケーション手段においても重要と言えましょう。

 

また、場面場面でも伝えるべき適切な伝え方が存在します。

 

例えば、ビジネスの場では結論ファーストがふさわしいケースが多くても、家庭内で「前置きはいいから結論は?」では、家庭内がギクシャクします。

 

ビジネスとプライベートの使い分けで、「なるほど」と感じたことの一つが、本書22ページ内の「高い声の方が聞いてもらいやすい」というエピソードです。

 

具体的なエピソードは本書に譲りますが、確かにいわれてみれば、という事例が示されています。

 

また、これは話すことだけでなく、書くことをしている人にも強く当てはまることなのですが、語尾に「ね」をつけすぎない、「~思います」という語尾に要注意(自分の心の動きより、事実を伝えよう)、「させていただきます」という言葉(当方もよく使ってしまいますが・・・)はまどろっこしさ、覚悟の欠如を与えるなど、多くの人が踏んでいそうな言葉の地雷に対し、警鐘を鳴らしています。

 

また、一つ安住紳一郎氏の細やかな着眼点が、京急の電車のアナウンスと他社の電車のアナウンス。

 

多くの方は、京急で羽田や横浜方面に行くときに、京急独特の「ドアを閉めます」というアナウンスを聞いたことがあり、それにさほど違和感を感じないでしょう。

 

しかし安住氏の場合、京急と他社のアナウンスの違いを言及、そこから責任の所在・語尾の曖昧さなど、一見共通項のないテーマから、話を広げて展開していくなど、広げ方が見事なのです。

一方で、齋藤先生も、

「話は常に断言すべきではない」

一つの話術として、ケースバイケースで断言・曖昧の使い分けを行う必要があるという点にも触れています。

 

他にも多くある具体的事例については、ぜひ本書をお読みいただきたいです。

 

様々な事例がありますが、本書から一貫して伝わるのは、「話の聞き手に対する気配り、思いやり」です。

 

例えば、現在のコンプライアンスに厳しい世の中では、人の外見・容姿などを褒めることも、時にハラスメントにつながることがあります。

 

そこで、目に入った物、気になったことを褒めるなど、本人ではなくモノ(あるいは周囲)を褒めることで、先方を間接的に褒める。

 

このような、時代に合わせたコミュニケーションについても、大学での教鞭を執る齋藤先生、アナウンサーとして第一線で活躍する安住氏が現場で体感したことも、この「話すチカラ」には反映されているのです。

 

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話すためには引き出しが必要

話すこと(アウトプット)のためには、インプットも書かせません。

 

ここも具体論は本書に譲るとして、

  • 大量のインプットが大切であること
  • インプットが目的となってはいけないこと
  • 話題になっているニュースについて行けてない人はインプットの幅が足りない
  • 情報はしゃべってアウトプット、もしくはSNSで発信する
  • 沼にハマる

など、インプットとその活用法に関するヒントがちりばめられています。

また、安住紳一郎氏独自の、「いいハナシ」のつかみ方、齋藤先生の情報の集め方など、二人はこのようにして一次情報を取得しているのか、というエピソードも興味深い内容です。

 

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ネットに本音はあふれているが、ラジオは「人に届く本音・言葉を選んだ、そして身元を明かした生の本音」がある

このタイトルの前半部を聞いて、神田伯山先生(襲名前は神田松之丞氏)を思い出す方は、「問わず語りの神田伯山」のリスナーかと思いますが、それはさておき。

 

当初では、安住紳一郎氏が長年パーソナリティーを務める、安住紳一郎の日曜天国のエピソードについても触れられています。

 

大量に届くお便りは、ネットの匿名の意見と異なり、「身元を明かした上の、コアな内容」として、信用に足る話ばかりとのこと。ラジオに送られるメール・ハガキも実は安住氏にとって、市井の人からの一次情報なのでしょう。

 

ラジオが安住氏にとってはどのようなものであるのか、なぜラジオを続けているのか、これは本書に譲ります。

 

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「国語」

本書では、国語について触れています。

これも、個別のテクニック論は本書に譲るとして、

「いい文章を読む」

このシンプルな手法は、改めて言葉に関わる人がすべきことではないでしょうか。

 

具体的ないい文章は本書に紹介されていますが、1つだけ紹介すると「学問のすゝめ」の最初の20ページ、これは書店・図書館やKindleの青空文庫などですぐに読めますので、ぜひ目を通してみるとよいでしょう。

 

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上機嫌でいるためには?

人間、どんな人でも機嫌のいいときと普通の時、そうでないときがあります。

「話すチカラ」では、過去の失敗のリカバリーや批判に対する対処法、一部の声の大きい人に心を乱されないようにする方法、味方の作り方、特定の説に固執する人からの意見・・・、様々なことがあり、それぞれ齋藤孝氏・安住紳一郎氏流の対処法が記されています。

そして、

「まずは与えられた持ち場で全力を出す」

これは全てのビジネスパーソンにおける、共通の重要事項と強く感じます。

 

以上、書籍全体を通して見てきましたが、「話すチカラ」は、とても読みやすく構成されており、

  • 各項目最初の1行目にアンダーラインを引きたくなる一文がある
  • その1行目は2行目、3行目と、読み続けさせたくなる作りとなっている
  • 要点が極めて的確にまとまっている

と、ダイヤモンド社の担当者の方が、多くの人に敷居を低くし伝えられるよう、非常に工夫をこらされた構成になっています。

 

学生だけでなく、ビジネスパーソンにとっても、世代を問わず有用な書籍です。「話すチカラ」、ぜひご一読ください。