今回も、
成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝後書き・孫正義氏と柳井正氏の興味深い対談
に続き、対談の内容をメインにピックアップしています。
当書籍の対談は、前掲の通り、2007年の成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝に収録された対談です。
「目指すは1兆」、が2兆になっていた
2007年の「成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝」の対談の中で、柳井氏は、
ユニクロは二〇一〇年に売り上げを一兆円にすると言いました。そう 言った以上は達成しなく てはならない。ですが、一兆円は終着点ではありませ ん。あくまで過程です。一 兆円を超えても成長し続ける会社にすることが目的で、一兆円を達成したら、そこで終わりという意味ではない。 会社は無限の成長をしない限り存在意義はない。
レイ・A・クロック; ロバート・アンダーソン. 成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝 (Kindle の位置No.3750-3753). 株式会社プレジデント社. Kindle 版.
と、2007年に、「2010年に売り上げ一兆円を突破する」とし、12年後は、全世界、グループ全体で2兆円の売り上げも突破、国内のユニクロ+GUの事業、海外のユニクロ事業ともに1兆円を突破しています。
(ユニクロIR)
孫正義氏は以前、「豆腐屋のように売り上げを一兆・二兆と数える」旨の表現をされていましたが、ユニクロも、国内・海外事業で、それぞれ一兆越え、全世界売り上げや買収したブランドもあわせると、二兆の売り上げを見事に超えるゾーンにまで達したわけです。
しかも、コモディティである衣料品、(SPAのため、仕入れよりは利益が大きいが)粗利が限られる小売りという分野で。
また、一兆を目指すという発言のあとで、一兆はあくまで通過点に過ぎないと述べて、「無限の成長を図らないと、存在意義はない」とまで断言しています。
会社は無限の成長をしない限り存在意義はない。私はそう考えています。そうでないといつのまにか組織が老化し、腐敗してしまう。レイ・クロックはこの本の中で「未熟でいるうちは成長できる。 成熟した途端、 腐敗が始まる」と言っています。
人間でも会社でも同じで、「ここでいいか」とか「こんなもんか」で妥協をしては、成長は止まり、成熟となり、腐敗が始まる。
A rolling stone gathers no moss(転がる石には苔も生えず)という言葉がありますが、転がる石であり続けることで成長する、転がるのをやめると苔が生え、風化してしまうという考え方もできるかもしれません。
また、リーダーシップ、経営に対する危機感についても、
リーダーシップとは決してあきらめないことでしょう。困難に突き当たっても経営者はあきらめてはいけない。あきらめることイコール会社が潰れることです。真剣に企業経営している人は「ひょっとしたらオレの会社は駄目になるかもしれない」という危機感を持ちつつやっています。
と柳井氏は語っています。
ユニクロでさえこのような危機感を常に持っているわけですから、どのような会社でも危機感を持つということは必須といえるのかもしれません。
経営者・個人がお金のないとき、どうするか?
経営者も個人も、必ずしも潤沢な資産がある状況からスタートできるわけではありません。
そんなとき、
経営者なら誰もが「金がない」という現実と直面したことがある。どれほど優良企業といわれているところでも、経営者はそうした体験をしているはずです。それが当たり前。
どうやって、金のない時期を乗り越えていくか。それはこつこつ金を貯めて、自分の信用力を高めるしかない。一攫千金を狙って訳のわからない投資をするなんてことは馬鹿げたことです。我々のような小売業では日々の小さな単位の金が貴重です。そうした金を少しずつ積み重ねていくしかない。
こつこつ貯める、地道に仕事をこなす、信用力を高める。
「勝てば官軍」ではありませんが、圧倒的な実績を出し続けている二人だから、強い説得力を持つのでしょう。
他にもこの対談では、
- どんな小さなゴミでも片付ける(細部こそ大事)
- 会社のセクションは商売のための一組織。社業に尽くすという一点の為に自らの仕事の意味を理解することが重要
- 本質を見抜く・経営力をつけるには、経営者の意識を持ち仕事をし、経営者の視点で自分なりの判断を行う
- 頭がいいと自分の視点が全てと思いがちだが、実際には他人の意見に対する理解力、寛容性や他者への共感が必要
- 自己満足の為に著名人と付き合うのではなく、藤田田氏が言うように、金を実際に使う庶民と会え
- 原理原則で考え、実行せよ
- 商品はお客様が来たら売るのが基本、売らずに倉庫に置いておけというのは、商売を知らない学者の意見
- 売る側が「これはいい物です」と確信して言える商品は売れる
- 店の立地・店舗開発は重要で、レイ・クロック氏もできるだけ立地を自分の目で見た、ユニクロも、立地取得で大和ハウス工業と共に試行錯誤し、仕事を通して信頼を蓄積した
- 競争相手に勝とうとするなら、同じ土俵に上がってはだめ、自分だけのポジションをつくる
- 当時よく競合として語られたGAP,ZARAはモードであり、ユニクロとは違う
- 儲けた後の行動は他人が見ている
- 若くして成功した経営者は贅沢をするより、まず何のために起業したかをもう一度思い返して欲しい。30から死ぬまで遊んで暮らすことはできず、いつか駄目になる
まだまだ、要点が尽きない対談ではありますが、世界が12年で劇的に変化した今、二人の対談、そしてマクドナルドを世界最大のハンバーガービジネスチェーンに拡大したレイ・クロック氏のエピソードは、けして色あせるものではなく、先日のユダヤの商法、バビロン大富豪の教え、まだ紹介はしていませんが、道は開ける、人を動かすのように、長きにわたり、読み継がれていくのではないかと感じます。