会社のあり方を規定する会社法が2006年に施行され、14年が経ちました。
現在の会社法における仕組みでは、「株式会社」と「合同会社」、「合資会社」、「合名会社」が存在します。実質的に認知され、設立時に利用されるのは「株式会社」「合同会社」の2種類でしょう。
「株式会社」「合同会社」の違いについては、様々なサイトで説明されているので、詳細は省きますが、ざっくり言うと、
株式会社:信用度と知名度高い・議決権が持ち株数で決まる・設立費用が20~30万程度かかる
合同会社:信用度、知名度劣る、出資にかかわらず一社員議決権・10万プラスαの費用で株式会社より早く、安価に節約できる
その中で、以前から仕事をしている人であれば知っている「有限会社」という存在があります。
会社法施行前は、有限会社が資本金300万円から、株式会社は資本金1,000万円以上からでないと、設立する事ができませんでした。
シンプルに、株式会社>有限会社という構図が存在したのです。
現在でも世間でもふわりと、「株式会社>合同会社・有限会社」というイメージを持つ人もおられると思います。
有限会社は、現在の仕組みでは、有限会社は「特例有限会社」「みなし株式会社」として扱われます。(特例有限会社が一般的な呼称です)
当ブログの担当者もですが、「なぜ今でも有限会社を名乗り続ける会社が意外と多いのだろう?」という疑問があり、調べてみました。
なぜ歴史のあるスモールビジネスは、今でも「有限会社」を名乗り続けるのか?
ふと町を車で走ると、年期の入った「有限会社○○」という看板を掲げた会社は多く見られます。
有限会社を株式会社に変更するのは、司法書士に依頼すればいい手続で、さほど複雑ではありません。
ですが、有限会社のままにしておくことのメリットも複数存在します。
- 有限会社という肩書きが、「業歴の長さ(最低15年)・資本金を300万以上確保している」という信頼感を与える
現在の株式会社は、資本金1円から設立できるため、資本金10万、50万、100万などの資本金でも設立できます。
資本金の額は、法務局の登記情報サービスや民間の登記情報取得代行サービスで取得できるものの、時間や数百円の費用はかかります。
ですので、新しく取引を開始する相手側は、株式会社で業歴の浅い会社の場合、信用調査や登記簿謄本の取得による資本金や役員の確認を通し、「この会社、取引して大丈夫か?」ということを確認する必要があります。
これが「有限会社」であれば、少なくとも15年生き残ってきて、かつ300万円以上の資本金を持つ会社であるため、わかる人には「安定感がある」とみてもらえる可能性があります。
- 役員の任期満了後における変更登記の義務がない
株式会社の場合、役員の任期満了後(2年~10年)、必ず変更登記をする義務がありますが、有限会社・合同会社の場合、役員自体の変更がない限りは、変更登記を行う必要がありません。(住所・氏名変更時は、株式会社・有限会社・合同会社を問わず、変更登記を2週間以内に行う義務があるので注意!後述しますが過料という罰金が課されるケースもあります)
役員の変更登記は、複雑なものではないですが、時間や費用などのコストがかかります。
また変更登記をうっかり忘れてしまうと、登記懈怠(とうきけたい・本来登記すべき手続をしていない)ことで、過料(行政罰・罰金)で、100万円以下(実際は、数万~十数万というケースがネットでは散見されます・・)の罰金となるとともに、
「代表取締役のところに裁判所からお手紙が来る」
「○○法違反事件というタイトル」
「過料の費用は会社ではなく個人が支払う」
など、実際に過料の制裁を受けると、代表取締役としてはショックになるはずです・・・。
(ただ、行政罰であり、代表取締役に対し前科が付くことはありません)
- 印鑑・名刺・封筒・看板などを作り替える必要がある
これはわかりやすいことですが、有限会社○○→株式会社○○へと、印鑑・名刺・封筒・看板などを作り替える必要があり、意外とコストがかかります。
- 決算公告の必要がない
実は有限会社の隠れた大きなメリットが「決算公告の義務がないこと」です。
決算公告は、官報への掲載で毎年数万円がかかります。Web掲載の方法もありますが、5年間分の貸借対照表及び損益計算書全体を公開する必要があります。
合同会社も同様に決算公告の義務はないですが、有限会社の場合、みなし株式会社のメリットを受けながら、決算公告の手間を省くことができ、また官報等に情報を掲載しないで済むというのは大きいでしょう。
このように、様々な事情で有限会社のままにしている会社が多く、加えて信頼度が時間の経過と共に高くなっているという側面はあります。
まとめると、
- 有限会社は最低15年以上の業歴があり、それだけで信頼感がある
- 決算公告・任期を経過した役員変更登記などの手間がない
- 手続が面倒だし、既存取引先と信頼関係を築いているので、変える必要性がない
などの事情で、現在も有限会社のままにしている会社は多いと言えます。
なお、自社で役員の変更登記など、簡易な変更登記を行う場合は、AI-CON登記のように、書類を作成してくれるサービスがあるので、こういうサービスを活用してみるのもありでしょう。