国内の企業は株式会社の形式が一般的な中、あえてGoogle、Amazon、Appleなどの大手外資系企業日本法人が合同会社を選ぶ理由は?
近年、、「合同会社(日本型LLC・Limited Liability Company=有限責任会社)」という形態を持った法人が増えてきました。
経営に携わる方であればご存じの通り、合同会社は安くスピーディに設立できる反面、知名度の点や事業拡張の点で、株式会社より不利な点があるのも事実です。
特に、上場したり、VC(ベンチャーキャピタル)などから出資を受ける際は、合同会社の場合は社員(株式会社でいう株主)=経営陣という制度設計となっており、上場・外部の経営陣以外からの出資を受ける場合は、株式会社でなければいけません。
そのため、会社を拡張しようという場合は、株式会社一択と言えましょう。
しかし、著名な外資系企業において、合同会社という形態が利用されるケースも出てくるようになりました。
合同会社は、設立コストが安く、早く作れるが、それ以外のメリットはあるのか?
改めて復習すると、日本で一般的な会社の形態は、「株式会社」です。
また、「有限会社」についても、株式会社の資本金制限がなくなり、資本金が問われなくなっている現在、「長年地道に営業を続けている堅実な企業」として、むしろプラスに思われるケースもあります。
(ちなみに、有限会社は現在設立できず、実務上は、みなし株式会社として扱われます)
その点、合同会社については、2006年5月の新会社法施行から十数年以上経つにもかかわらず、一般の人には認知がさほどされていない傾向があります。
その中で、外資系企業に、なぜ株式会社ではなく合同会社を選ぶ会社が増えてきているのでしょうか。
GAFA(除Facebook)を初めとする複数の大手外資企業が、なぜ株式会社→合同会社を選ぶのか?
外資系企業の中でも最大手の、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)の中で、Google、Amazon、Appleについては合同会社の形態を取っています。
(なお、Facebook Japanについては、株式会社の形態をとっており、決算公告を官報に記載しています。)
他の有名企業では、シリアルで有名な日本ケロッグ合同会社、Akamaiテクノロジーズ合同会社、シスコステムズ合同会社なども、合同会社の形態です。
一方、伝統的な有力外資のMicrosoft、IBMや急成長中のNetflixは株式会社の形態となっています。
このように、全ての外資が合同会社になっているわけではなく、株式会社として存在する外資系企業も多くあります。
ただ、GAFAと呼ばれる四大企業のうち、Googleの日本法人、Amazonの日本法人、Appleの日本法人それぞれが、もともと株式会社であった状態を、あえて合同会社に改組しているのです。
なぜ、Google、Amazon、Appleは株式会社を合同会社に変更したのか?
詳しく書くと複雑になりますので、シンプルにすると、
- 損益の分配が株式会社のように持株に応じ決まるわけではない(例えば、業務に強く貢献した人に特別に利益を配分できる)
- 法人名が既に認知されているため、株式会社や合同会社などの形態のイメージを気にする必要がない
- 出資者と経営者が同一(株式会社の場合、出資者と経営者が同一である必要はない)のため、株主総会や取締役会が不要
- 設立費用が株式会社に比べ安く、役員の2~10年ごとの重任時の登記も不要
- 官報(国の発行する日刊紙)やweb、新聞広告などでの決算公告が不要なので、決算を公にせずにすむ
主には上記の5点の要素で、複数の外資系企業が合同会社(LLC・Limited Liability Company)という形態を選んでいると推測できます。
(もちろん、さらに高度な経営上、その他の理由も考えられますが・・・)
特に、株主総会や取締役会が不要というのは、スピーディーな動きが必要な企業にとっては、重大な意志決定も迅速にできるため、大きなメリットと言えるでしょう。
合同会社・株式会社などの法人形態のトピックについては、他の記事でも、別の角度から触れていければと思います。