地方でのキャッシュレス決済普及状態と、遅れの原因、これからの動きは?

地方でのキャッシュレス普及が遅れている理由と、今後のキャッシュレス決済に関する考察

 

キャッシュレス決済について、都市部と地方では、普及の度合いがかなり異なることは、都市部在住の人が地方出張したときや、地方の人が都市に出張したときなどに体感として感じることが多いのではないかと思います。

 

実際、地方に行くと、タクシーでもSuicaなどのキャッシュレス決済に対応していないこともあります。

 

地域によっては、これからタクシーやバスに、FelicaやQR決済などのキャッシュレス決済を導入することがニュースになることさえもあります。

 

現金決済オンリーの店というのも、今年のQR決済の普及ラッシュで今は少し減ってきた傾向がありますが、まだ地方では数多く存在します。

 

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日本銀行決済情報局のキャッシュレス決済普及資料から考える、地域のキャッシュレスに関する普及のグラデーション

 

下記の日本銀行決済情報局のキャッシュレス決済に関する資料は、キャッシュレス決済の地域ごとの濃淡、普及度合いを明確に示しています。

https://www.boj.or.jp/research/brp/psr/data/psrb180928a.pdf

なお、上記資料は2018年9月に発行されたもので、今年の傾向を踏まえると、キャッシュレス決済の普及度は全体的に上昇していると推測しますが、地域の傾向を知る上では、参考になるかと思います。

 

上記資料の16ページの「キャッシュレス決済の地域別利用比率」を見ると、

関東・近畿の多くの都府県が8割を超える普及率、また中部・北海道も8割近くの普及率を示す一方、中国・東北が7割弱、四国・九州・沖縄は6割と、非常にはっきりしたデータが出ています。

 

都市と地方に住んだことのある著者の実感としては、やはり公共交通機関の利用頻度とキャッシュレス決済の利用頻度は、かなりの相関関係があるのではないかと推察しています。

 

いわゆる交通系ICカードの代表である「Suica」は、2001年からスタートしました。

 

SuicaはJR東日本管内で対応改札があれば、タッチで乗車できるという利便性がありました。

 

筆者は学生時代は都内在住でしたので、「料金を調べずに済み、切符を買わず、タッチで電車に乗れる」というのは、当時、非常に画期的でした。

 

2007年からは、PASMOという、私鉄・バスにも乗れるICカードも出現し、より交通系電子マネーの存在感が強まりました。

 

そして、SuicaとPASMOが相互利用できるようになり、SuicaかPASMOのカードが一枚あれば、首都圏の大抵の場所にはカードだけで行けてしまうのです。

 

駅の構内のキオスクやコンビニなどで、カードをかざすだけで決済ができるという利便性を体感すると、財布を取り出し、現金を出して・・・というプロセスがまどろっこしくなります。

 

筆者も都内へ出張すると、少額の買い物は大抵スマートフォンのモバイルSuicaで決済を済ますことができ、ちょっとした散歩ならば電子マネー対応の携帯なり、Apple Watchがあれば、財布なしでも大抵のことを済ますことができます。

 

また、Suica、PASMO、関西ならICOCA、東海ならTOICAなど交通系電子マネーは、定期券とも紐付くようになっています。また、Suica・PASMO・楽天Edyなどの電子マネーと連動した社員証、学生証が普及したことも大きいでしょう。

 

このように、電子マネー普及当初の時点で、「交通」「社員証・学生証」というインフラや常に持ち歩くもの・使うものにSuica、PASMO、楽天Edyなどの非接触電子マネーがぴたりとはまり、決済手段のスタンダードとして定着したことが、人々のキャッシュレス決済に対する敷居を大きく下げたと推察します。

 

一方、車社会の地域に住むと、SuicaやPASMOを、交通手段として利用することは少なくなります。

 

公共交通機関がある地域でも、2010年代になってから改札が電子マネー利用可能になる(地域によっては2010年代後半になって有人改札が電子マネー対応自動改札になった地域もありました)など、かなり都市と地方で自動改札化のタイムラグがありました。

 

ただ、地場有力スーパーがEdyなどの電子マネー決済を2000年代後半頃から導入し始めました。また、大手スーパーも独自の非接触決済手段を導入するなど、地方でも、「スーパーなどでの日常的な買い物手段」としては、比較的利用者になじんでいたともいえましょう。

 

一方、個人店では、クレジットカードなどと同様、端末費用や決済費用をネックと考えるところも多く、実際問題、小さなお店では数%の手数料でも大きな負担ですので、このような手数料、端末普及の問題も、都市部と地方のキャッシュレス決済普及の違いを分けたのではないかと感じます。

 

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公共交通機関が発達しているほど、キャッシュレス決済が普及している傾向?

 

「公共交通機関を日常的に利用する地域か」ということが、「キャッシュレス決済の普及」とある程度連動しており、東名阪及び地方の中核都市と、それ以外の地域で、キャッシュレスに対する温度差があることも、日本銀行の統計から推察されるのではないかと考えます。

 

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利用者・事業者双方に負担の少ないキャッシュレス決済手段と、官民の導入支援が、今後のキャッシュレス決済普及において重要になるのでは?

 

今後、都市・地方を問わず、安価に導入できるキャッシュレス決済サービスが普及することにより、地域を問わず、キャッシュレス決済は広がっていくでしょう。

 

ただ、QR決済の場合、多くはスマートフォンを利用します。そのため、地域・年齢層によっては、カード型の非接触決済手段か、現金決済という形が続いていくことも考えられます。

 

今後の流れとしては、国などの方針もあり、キャッシュレス決済の普及が進んでいくでしょうが、利用者側、特に地方在住で、全て現金決済でも問題ない、スマホを所持していないとか、あれこれ決済手段を使い分けるのが面倒、LinepayやPaypay、Origamiの登録が面倒、登録やQRマネー利用時に必要とされる事がある個人認証に抵抗がある、という人もいるかと思いますので、今後どのような形でキャッシュレス決済が全国に普及していくかは、見守っていきたいところです。