「ニアショア開発群雄割拠 北海道・東北編」として、ニアショア・ニアショア開発に関して北海道・東北各県(北海道・青森県・秋田県・岩手県・宮城県・山形県・福島県)の傾向をまとめました。
北海道のニアショア開発
北海道のニアショア開発の傾向
北海道地域は、2016年に「札幌商工会議所ニアショア推進協会」を設立、札幌商工会議所が「北海道IT産業 ニアショア開発プロジェクト」を2019年より本格的に開始するなど、札幌を中心にニアショア開発受託を地域・自治体・商工会議所全体として推進する姿勢を強めています。
また、札幌テクノパークなどのIT企業集積拠点も備えています。
ニアショア企業の扱うジャンルは幅広く、SAP、開発保守・運用やSI、システム保守、データセンターなど多岐にわたる他、博報堂が24時間対応のデザインスタジオを設立、NTTデータなど都内の大手SIが拠点を構えるなど、都内企業のニアショア開発・制作拠点としても存在感を示しています。
北海道の広大な土地や、札幌という中核都市の存在により、スペースと人材確保の双方のニーズに応えているのが北海道のニアショア開発の傾向といえましょう。
東北地方のニアショア開発
青森県のニアショア開発の傾向
青森県は、東京の開発企業がニアショア開発拠点を青森市などに置くほか、「あおもりIT活用サポートセンター」という形で青森県内全体で開発受託に取り組んでいます。
加えて、「青森県情報サービス産業協会」という団体は、青森県内のIT企業を集結し、商工会議所に事務所を設置、県内各事業者が連携して、ニアショアや大規模開発などの一括した作業に対応するという仕組みを整えています。
また、県庁所在地の青森市だけでなく、八戸市にも北インター工業団地を中心とし、多くのシステム開発受託会社が存在します。さらに、八戸IT・テレマーケティング未来創造協議会など、ITのニアショアだけでなく、コールセンター、BPOのニアショア拠点も複数存在します。
青森県全体を通して、ニアショアには力を入れており、扱う分野もシステム開発、BPO、BPR、ネットワーク保守、アプリ開発など複数にわたります。
秋田県のニアショア開発の傾向
秋田県も県庁所在地の秋田市を中心に、システムなどのニアショア開発、データセンター、サーバーの保守を行う事業者などが存在します。他地域にも、コールセンター・BPO拠点などが存在します。
また、秋田県でも「秋田ICT基本計画2019」を定め、県全体のICTの推進、IT人材の育成や、通信網の整備など、県など自治体単位でのバックアップの方針も定めています。
岩手県のニアショア開発の傾向
岩手県も、都内のニアショア事業者が進出する中、地場の法人も、企業規模の追求よりも着実に事業を行う会社が多いです。自社開発、ニアショア受託、AWSによるサービス・システム開発受託、ネットワークの保守・運用など地元に求められるサービスも含め、幅広く、かつバランス良く手がけている会社が多い傾向です。
また、県・市町村の動きとしては、ニアショアに直接関わる部分ではないですが、産業振興財団を通じたICTの活用の呼びかけや、IoT、AI、ロボットの活用に対するものづくりの支援や、ITと農業分野のマッチング、新卒・中堅人材の確保などの動きを行っています。
宮城県のニアショア開発の傾向
宮城県は、中核都市の仙台市の存在もあり、大手・中堅事業者含め、ニアショア受託、ソフトウェア開発の企業が多い印象です。
また、受託開発環境についても、事業者が比較的多いことから、対応の幅が広いです。ITインフラ開発、アプリ開発、MES(製造実行システム)、ラボ型開発、システム開発後の保守・運用、IT導入のコンサルティングなど、様々な分野を網羅しています。
地元宮城(及び仙台)に対しても、ニアショアとして全国に対しても、双方に対応できる企業数・人材リソースが多いように見受けられます。
また、都内から東北新幹線を利用したアクセスが容易なこともあり、都内に拠点を置いている企業も多いです。
自治体サイドでは、復興特区としてIT産業(ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、コールセンター、データセンター、BPOオフィス、設計開発、デジタルコンテンツ作成など)に対し、国税・地方税の特例を設けています。
あわせて、AI、IoT事業の創出や、IT企業の立地に対する施策などの支援も行っています。
山形県のニアショア開発の傾向
山形県でニアショア開発を行う企業は、比較的目立ちにくいです。一方、医療介護ソフトウェア・サービス事業、専門家向けソフトウェアのソフトウェア販売や技術者派遣、企業へのIT導入、POSパッケージ、テレビ・ラジオの放送局向けソフトウェアなど、自社開発のソフトウェア・サービスや地元に向けたITサービスが多いように見受けられます。
また、FA、組み込みなど製造業が多い山形県ならではの分野に取り組む企業も多いです。もともとNECのパソコン製造事業が山形県米沢市に30年以上前から存在し、現在もNEC及び、事業出資を行うLenovoの製造拠点として大きな存在感を示しています。
また自治体としても、IT産業全般の振興の他、有機ELなど、ITとものづくりを関連させた分野などの分野に注力している様子がうかがえます。
福島県のニアショア開発の傾向
福島県も、ニアショア開発の受託に関しては、目立つ動きは少ないです。一方で、自社開発や都内の企業のニアショア拠点、会津若松市のアクセンチュア・イノベーションセンターなど、実験的な試みを行う会社などが目立つ傾向です。
また、製造業向けの業務・組み込み系開発や、ロボット開発などのもの作り関連、東日本大震災復興支援などを手がけるIT企業も目立ちます。
以上、北海道、東北のニアショア事業者の傾向をまとめました。
北海道・東北ともニアショア・ニアショア開発だけでなく、独自のソフトウェア開発や、特に東北地方に多い製造業との連携などが目立つ傾向です。