このサイトでよく出てくる「ニアショア」というキーワードについて、対話式で説明してみました
地方経営ノートの中の人さん、このサイト、ニアショアというキーワードがよく出てくるけど、そもそも「ニアショア」ってなに?
Twitterから来られる人も増えましたので、このサイトでよく出てくる「ニアショア」というキーワードについて、改めて噛み砕いて説明しますね。結論からいうと、「日本国内の地方にある会社に業務を委託する」ということです。
なぜニアショアという名前なの?
もともと以前から、「オフショア」といって、賃金が安く安価で業務を受けてくれる海外の国に、開発やコールセンターなど様々な業務を外部委託するケースはよくあったんですよ。
でも、近年、オフショアについてコスト削減などのメリットはある一方、課題もいくつか見えてきたんですよ。
課題?例えばどんな?
ひとつは、コミュニケーションコストの問題ですかね・・・。
わかりにくい横文字・・・。もっと具体的にいうと?
業務を海外に発注するわけですよね。国内なら、阿吽の呼吸というか、なんとなく「これはわかるでしょ」っていうことでも通用しないケースもある。もちろん、海外の人材も優秀なんですよ。でも日本で委託する側が想定するレベルと、受託する側が想定するレベルが違うことがある。
だから、しっかり様子を見ないと「これじゃない・・・」という結果になることもありうる。
あとは、今はコンプライアンスがより厳格になっているから、その点も理解してもらわないといけない。
また、言語の問題があるから相手方の開発者と直接コミュニケーションを取ることが難しいケースもある。
あとは地域によるけど、時間帯や従業員の宗教や文化に対する理解、他にも挙げられるけど、いろいろな配慮が必要なわけです。
いわれてみれば、日本と海外では仕事の成果物に限らず、様々な考え方の違いがありますね・・・
また、当然ながら言語も違いますよね。
だから、海外に委託する「オフショア」の場合は、日本の委託先企業と、海外の受託先企業をつなぐ、「ブリッジ人材(人と人との架け橋的存在)」が重要になってくる。
ブリッジ人材は、その国の言語と日本語双方に通じるのは大前提。
日本の商慣習にも通じ、クライアントと受託側のコミュニケーションも助け、その国の慣習や人材の傾向を熟知、場合によっては働く人材のケアまで、いろいろな役割が想定されるため、大変重要な存在で、仕事も大変だと思いますし、それだけのスキルがある人を見つけられるか、またブリッジ人材自身が定着してくれるかという問題も考えられます。特に最近は、国を超えた人材の流動化が進んでいますからね・・。
あと、最近ではアジア各国の経済成長が著しいって新聞で書いてありますよね。
そう!だから飛び抜けて優秀な人材は大手に行ったり、国によっては、物価や給与水準も上がったりで、必ずしも、海外でオフショアを行うことが、コスト面で有利にならなくなるケースも想定される。中国を始め、アジア諸国では経済成長が進んでいるため、いい人材を確保するにはお金がかかるわけです。
だから、ベトナム・ミャンマー・バングラデシュなどこれから発展する国をオフショアの外注拠点としたり、そもそもオフショアからニアショアに方針転換して、日本語が通じ、企業自体のランニングコストが安価な、地方の会社に業務を委託したり、ニアショア拠点を作ろうという動きも増えているんですよ。
こちらでも、オフショア・ニアショアの比較について書いてて、正直自分でもニアショアびいきだな、読み返して感じたんですが。
なるほど~。最近はリモートワークもできるようなシステムもいろいろ整っているし、日本国内であればさっき出てきた「ブリッジ人材」を通してではなく、直接のコミュニケーションもできますし、日本人にありがちな、「なんとなくこれ・・」も結構察してくれますから、意思疎通もしやすいですよね。
そうなんですよね。それから、ニアショアにしても、オフショアにしても、いろんな業種の外部委託があるんですよ。さきほど話したシステム開発・コールセンター以外にも、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング、バックアップ拠点の開設)、物流、Webサイト制作、Webライティング・・まだまだ挙げるときりがないんですけどね。
もちろん、企業のニーズに応じて、ニアショア・オフショアは使い分けるのが前提なんですけど、ニアショアが選択肢としてより認知されるようになると、国内の中でお金が回るし、地方にも雇用が作られるので、国内経済全体としても、国内での税収増、消費拡大、地方活性化などいろいろなメリットがあるんですよ。
だから、この「地方経営ノート」では、「首都圏・主要都市の企業のコスト・負担の削減」と地方都市・地方の活性化につながる「ニアショア」を、一つの意義がある手法として推しているんですよ。
なるほど・・。
もう一つ書くと、これは中の人の実感なんですが、都市と地方ってあらゆるコストが違うんですよ。
日用品や家電製品などは都会が安いですし、車が必要な地域も多いので、その取得コストはかかります。事業を行うための土地が安価に取得できたり、事業自体のランニングコストが安い、家賃も安かったり、人材についても転勤や家族(子育て・介護・出身地)の事情などで、優秀な人材が意外と埋もれていたりする。都市部と違い、仕事場が限られるので、あまり転職も多くない。もちろん、人材の成長や育成、外部との交流という面など課題もあるんですけどね・・。
ついでにいうと、子育てもしやすいですし、保育園・幼稚園・こども園などにも入りやすいケースが多いですよ。
あっ、子供が帰ってきた・・・、ちょっとまってくださいね。
おまたせしました。
また、ニアショアの話の続きをすすめていきますね。
はい、例えばニアショアって言ってもいろいろと種類があると思うんですけど。
そうですね。では、このサイトでもよく触れてきた、ラボ型ニアショア開発から説明しましょうか。
上のリンクページでいろいろ書いていて、こちらでは少しかみくだいて話しますけど、最近SaaS(サース)っていうWebサービス多いですよね。
たしかに!セールスフォースに、freee、Google DocsなどのGSuite、SmartHR、チャットワーク・・いっぱいありますよね。
そうです。以前だと、「こんなシステムを作ってください」とかっちり要件定義を行って、そのとおりにつくるというパターンが多かったですし、今でも伝統的な企業ではそういうケースはあります。
でも、SaaSだと、一回作って完了ではなくて、日々改良している感じですよね。スマートフォンのアプリなんかもそうですけど。
いわれてみれば、SaaSって、日に日にいろんな機能が追加されていますよね。
そうそう。だから開発内部ではいろいろなパーツの開発、改良が行われているわけだけれど、全部自社で開発すると、人などのリソースに対して大きな負担が掛かる可能性がある。
だから、重要な部分は自社内で内製化するとしても、他の周辺的な、でも欠かせない部分なんかは、その中の一部分を切り出して「ラボ型開発」(ラボ契約)って形で、ニアショア先の人材と、長期的に共同で開発していくというやり方も、少し前から増えているんですよ。
ラボ型開発・ラボ契約・・・。ややこしいですね・・・。
確かにちょっとややこしいです。ラボ型開発とニアショア開発をかけ合わせて、ラボ型ニアショアで開発課題を解決という記事も書いたりしていますが、こちらもややこしい記事なので、すぱっと書くと、「外部の適した開発会社・人材と長期にわたって開発・改良に取り組んでいく感じですかね。
うーん、わかったような・・・。
まあ、これについては厳密に書くと長くなりますので、ラボ型ニアショア開発、ラボ契約の話はここまでにして、最後にニアショアのメリットをもう一回復習してみましょうか。
ニアショアのメリットまとめ
では、ニアショアのメリットを改めてまとめてみましょう。
- コミュニケーションコストが少ない(話が通じやすい)
- 海外のように、経済成長によるコスト増の懸念が少ない(これはある意味、悲しいことでもあるんですが)
- ニアショアで外部委託を行う場合、自社だけで全てを行うより、コスト削減ができる可能性が高い
- 自治体でもニアショアに対し理解が深まり、誘致や支援策などの施策が始まっている
- 国内でお金・労働力の流通が行われるため、国内経済の活性化・地方活性化につながる
あとは補足すると、自社でニアショアを行う場合は、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)や、新規開発拠点を強化することにより、万一の災害時などのバックアップにもなり、BCP(事業継続計画)にも寄与する(ここでBCP・事業継続計画についても触れています)というところでしょうか。
だいぶ複雑ですけど、委託する企業も、受託する側も、回り回って国や地域にもメリットがある、ということはわかりました。
ですね。結構長くなりましたが、システム開発だけでなく、様々な事業でニアショアの活用が進んでくれればと思います。また、全国のニアショアの事例(開発関係多め)もいろいろとまとめておりますが、またニアショアの事例や、これはどうか?っていうツッコミなどありましたら、地方経営ノートの中の人のtwitterまでお知らせいただけると幸いです。
また、ニアショアを含めた外部発注の場合、発注ナビのように比較できるサイトを活用すると便利です。(いきなりニアショア先を探す、と言っても、どこが最適かはわかりませんものね・・・)
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