「ラボ型ニアショア開発」とは?これから常駐ソフト開発ができなくなる?

「ラボ型ニアショア開発」というオフショア開発と異なる切り口と常駐開発ビジネスが困難になってきた背景

ラボ型ニアショア開発が近年着目を集めています。

以前より、海外に開発や業務を委託する「オフショア開発」という概念はよく知られています。ただ、オフショア開発には、言語や商習慣、先方の提示するスキルと実際の成果物のズレなど課題が多く存在するのも事実です。そのため、最近国内の地方に業務の一部をまるごと委託する「ラボ型ニアショア開発」が着目されています。ニアショア開発については、島根県、四国、九州、北海道エリアで盛んになってきており、Ruby on RailsやPHPによるアプリケーション開発特化型、保守特化型、データセンタ管理特化型など地方によって特色があります。

また、首都圏においてはソフトウェアエンジニアが大手ベンダに常駐して開発を行う形態が広く取り入れられていますが、派遣法の改正や同一労働同一賃金により、常駐型がどんどん難しくなるものと予想されます。実態として法制度とソフトウェア開発の常駐という仕事がうまくフィットしていないという事実もあると思っていますが、きちんとコンプライアンスを維持するために、ラボ型ニアショア開発という手段を真剣に取り入れていく必要があるものと考えています。

別記事で、ニアショア開発とオフショア開発の違いについて言及していますので、ニアショア開発とオフショア開発の違いについてはそちらをご覧いただければと思います。

 

この記事では、リンク先のニアショア開発とオフショア開発の概要・比較を踏まえ、システム開発の外部委託において自社の開発リソースをより重要な部分に集中する方法を、「ラボ型開発」とまじえて説明します。

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ニアショア開発の成果をより確実にする「ラボ型開発」とは?

ラボ型開発とは、ニアショア開発などで、半年から一年等、場合によっては数年の中長期にわたる契約を結び、ニアショア先に自社専属の人員を確保してもらうというやり方です。

従来の受託開発ですと、委託側が要件定義、依頼したい業務などを明確に定義し、受託先へ依頼する必要があります。

この手法ですと、要件定義などの手間・コストがかかり、また状況の変化に応じて依頼内容も変化させていかなければなりません。

一方ラボ型開発の場合、依頼する側が必要とするスキルを持ったエンジニアを、契約期間の間、依頼する側専属のチームとして確保できるのです。

また、開発実務においても、依頼側と受託側が共に話し合い、自社開発チームの一員のようにビジネスに携わるため、仕様の緊急変更や機能追加が柔軟にできるなどのメリットがあります。

ラボ型開発とニアショア開発の相乗効果

それでは、ラボ型開発の特徴・メリットをニアショア開発と絡め、さらに深掘りしてみましょう。

ラボ型開発の最大のメリットは、エンジニアが足りない現状において「エンジニアを柔軟に確保でき、仕様変更などの柔軟な対応ができる」ということです。

ニアショア開発、オフショア開発双方において、ラボ型開発は普及していますが、特にニアショア開発の場合は、同じ国内でビジネスをしている関係上、下記のようなメリットがあります。

  • ラボ型ニアショア開発の場合、日本人ならではの「阿吽の呼吸」が通じやすい

依頼者側の大まかなイメージであっても、受託者側の方で、「例えばこういうことでしょうか?」「こうするとより良くなると思いますが、いかがでしょうか?」など、相手の細かなニュアンスをくみ取った提言をしてくれるケースが多い

  • ラボ型ニアショア開発であれば、日本のリーガルリスク・商慣行を熟知しているため、オフショア開発のように教育コストがかからない

日本国内でビジネスをしている以上、日本の法規約、商慣行をベースにサービスを開発しなければならない。ニアショア開発の場合、受託側は責任者だけでなく、メンバー全員が既に様々な国内での開発業務経験を蓄積している。そのため、「これは法律的に大丈夫か」「これは許認可など必要か」「利用規約・プライバシーポリシーなど、国内では大丈夫か、また国外展開の場合、どの点に配慮すべきか」などのリーガルリスク、様々な日本の慣行に対する認知・知見を有している。そのため、オフショア開発のように、「日本では・・」と認識のすりあわせや日本の商慣行の伝達をしなくてすむ。

  • 開発にかかる人件費を変動費化し、かつノウハウの蓄積もできる

エンジニアの直接雇用は固定費となるため、給与・税金・社会保険等大きな負担になるが、ラボ型開発の場合、変動費となり、同時に長期契約に寄る双方のノウハウ蓄積などのメリットも享受できる。

  • 委託者側が現場を見に行き、担当者とのダイレクトなコミュニケーションが取りやすい。

オフショア開発の場合、ベトナム・カンボジアなど、開発拠点と直接コミュニケーションを取りたい場合、数日を確保する必要があり、海外へ渡航する時間・費用のコストは大きいです。

一方、ラボ型ニアショア開発の場合は、場所によっては日帰りも可能です。委託先とコミュニケーションを取りたい場合は宿泊し、開発現場を見るだけなく、委託した地域に身を置くことにより、都市部との喧噪とはまた違った経験ができ、委託側にとってもリフレッシュできます。

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ニアショア開発とラボ型開発のメリットまとめ

このように、ラボ型ニアショア開発は、コスト削減・開発人件費の変動費化・オフショア開発と違いコミュニケーションコストが低く日本品質を保てる・東南アジアを中心とする海外の経済力の向上による影響を受けにくいなど、比較的低コストで、安定かつ柔軟な開発環境が確保できます。

ご存じの通り、国内、特に都市部でのエンジニア確保は大きく難航しています。また、採用をしても、教育コストや、想定していたレベルと違うというケースも想定できます。

この人材難を打開する一つの策が、ラボ型ニアショア開発の活用です。

また。発注先に迷う場合は、発注ナビなど外部事業者の一括見積もりシステムも活用してみるとよいかと思います。




経営者・CTOや業務開発責任者にとっても、人材採用がより柔軟に実施でき、固定費が増大しない、かつ国内に専属のチームが持てるため、双方にノウハウが蓄積していくという点で、ニアショア開発とラボ型開発を掛け合わせ活用していくことは、とても有用といえましょう。

 

 

 

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